衆院選長崎1区 初村さん 厚い壁破れず

敗戦の弁を述べる初村さん=10月31日午後8時21分、長崎市元船町の選挙事務所

 安倍晋三元首相の政策秘書として培った経験と人脈をアピールし、国政に初めて挑んだ自民新人の初村滝一郎さん(42)。最後まで懸命に国民民主前職の背中を追い掛けたが、厚い壁を打ち破れず、議席を確保することはかなわなかった。
 4期務めた冨岡勉さんの不出馬に伴う公募で名乗りを上げたのは7月。地盤も支援組織もない中、長崎市選出の県議や市議らが支持拡大に奔走。党営選挙を展開し、4カ月で「戦える態勢」を整えた。
 「聞く力とは何か。皆さんの声を聞くだけなら誰でもできる。声を国政に反映できるのは(3人の候補のうち)自分だけだ」。街頭演説では「即戦力」をこう強調し、人口減少対策として産学官連携による産業創出などを訴えた。
 安倍氏や菅義偉前首相ら大物が連日のように駆け付け、「新人としては破格の応援」(陣営関係者)を得た。ただ「どれだけ支持につながったか分からない」という声は少なくない。苦戦が報じられ、終盤は「新しい長崎の政治を生み出したい。絶対に負けられないんです」と目頭を押さえながら声を振り絞った。だが知名度不足を挽回できず、浸透しきれなかった。
 午後8時すぎ、長崎市元船町の事務所はテレビの速報に静まり返った。初村さんは疲れ切った表情、かすれた声で「私の力不足。皆さまには感謝しかありません」と話し、ねぎらいの拍手を受けながら深々と頭を下げた。

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