「日本の将来が不安だから外貨で資産をもっておきたい」日本で外貨を持つ方法とリスクを解説

「日本円だけでなく、外貨を持ったほうが良いですよ」

資産形成している人であれば、どこかで耳にする言葉ではないでしょうか。事実、資産形成において日本円だけでなく、海外の通貨を持つことは分散効果もあり良いのですが、その理由をしっかり理解している人は少ないようにも思います。

また、「そうか、外貨を持とう!」と闇雲に始めてもやり方によってはただ損をすることになりかねません。今回は、通貨分散の意味と方法をいっしょに考えていきたいと思います。

なお、今回引用した金融機関の金利や各種手数料、さらに為替相場水準はいずれも2021年10月時点のものです。取引をする際には、必ず最新の情報を取引金融機関に確認をお願いいたします。


外貨を持ったほうが良い理由として上げられるのは、日本円のインフレです。インフレは物価が上がることと説明されることが多いですが、モノに対して通貨の価値が下がることを意味します。例えば、100円で買えたお菓子が、120円ださないと買えなくなれば円の価値が下がったとも言えるのです。

また、為替により外貨に対して日本円の価値が下がることでもインフレを起こします。例えば、1USドル100円〜120円のレンジから円安が進み、一気に150円になったとします。海外への輸出企業は、為替差益で有利になりますが、海外の肉や小麦などの食料品の輸入価格は、高くなります。

さらに、石油も日本は輸入に頼っているため円安により高くなります。電気自動車が増えてきたとはいえ、まだガソリンやディーゼル車が多い日本ではトラックなどの輸送費に影響がでてきます。今まで運搬コスト500円で運べていたものが、1,5倍の750円にあがったとすると様々な物の値段に飛び火して値上がりを起こします。このような時に、円でなくドルを持っていると有利というわけです。

将来、円高になるか円安になるかは誰にもわかりませんが、日本の人口が少なくなっていくことや、国際競争力が年々低くなっていることから、資産を日本円だけでなく外貨でも持つことはインフレ・円安対策になると考えられます。

外貨を持つ方法

外貨をもつ方法は色々とあります。ひとつひとつメリットとリスクを考えていきましょう。

外貨預金で持つ

外貨を持った方が良いと聞いて「外貨預金はどうだろう」と興味を持った方もいるかも知れません。銀行の窓口でも販売しており外貨を直接持てるのですが、ここには色々な罠が潜んでいるので注意が必要です。

外貨預金をみると、例えばトルコリラは2021年10月現在高金利で18%前後となっています。日本の銀行の普通預金の金利は0.001%〜や良いところでも0.2%程度の金利と鳴っています。0.1%と考えても180倍も金利が高いのであれば、外貨で預けておきたいと思うかもしれません。ただし、大きなリスクが潜んでいます。

1、為替リスク
為替によって持っている通貨の価値が下がると、金利による利息では取り返せないほど資産が減る可能性があります。

先程のトルコリラなどは、2018年初頭には、1トルコリラ30円ほどだったものが、2021年10月現在では12円を割り込んでいます。つまり半分以下に価値が下落しているのです。金利が高い通貨はそれだけ通貨の信用が少なく、価格そのものの変動リスクが高いので注意が必要です。
外貨を最初に持つべきはUSドル、ユーロなど信頼の高いものを選ぶと良いでしょう。

2、預金保護の対象外
万が一銀行が破綻した場合に、日本の銀行預金の場合は1,000万円と利息が保障されます。しかし外貨預金は金融機関が破綻した場合に預金も利息も戻ってきません。

3、為替手数料がかかる
外貨を日本で使う場合は、最終的には日本円に戻すことになります。つまり、外貨を持つためには、購入の手数料と売却の手数料、合計2回の手数料を払う必要が出てきます。大手銀行の場合は、ネット経由で1USドル購入にあたり25銭〜50銭、窓口だと1USドルあたり1円〜3円の手数料が発生します。

例えば、1USドルにつき2円の手数料がかかる場合、100USドルを購入時に200円の手数料を払い、USドルを円に戻すのに200円がかかります。買いと売り、往復で400円の手数料を払うことになり、お金を移動するだけで高いコストがかかってしまうのです。外貨を保つ場合は、この手数料はできるだけ低く抑えることが肝要です。

【為替手数料を安くする方法】
USドルを持つ場合、為替手数料が安いのがネット系の銀行です。中でも住信SBIネット銀行は、1USドル購入時の為替手数料は4銭しかかかかりません。銀行によって手数料に差がありますので、比較検討すると良いでしょう。

引用した金融機関の金利や各種手数料、さらに為替相場水準はいずれも2021年10月時点のものです。取引をする際には、必ず最新の情報をご確認ください。

FXで持つ

銀行の外貨預金以外にも外貨を安く手にする方法があります。それがFXです。FXと聞くと、途端に「怪しい」「リスキー」と感じる人もいると思いますが、これから紹介するのはリスクが比較的少ないやり方です。

FX(外国為替証拠金取引)は、外国為替の差金決済により利ざやを狙う投資法ですが、通常は2倍から25倍のレバレッジをかけて取引します。このレバレッジが上がれば上がるほどリスクも大きくなります。逆に、このレバレッジをかけず1倍にしたまま外貨を持った場合のリスクは預金と変わりません。

手数料は安いことが多く、例えば、FXでは1USドル購入の為替手数料が0.3銭などもあります。先程同様に1万USドルを取得するための手数料を考えると30円ということになります。
ただし、FXで外貨を持った場合にもリスクがあります。外貨預金と同様、金融機関が破綻した場合も保護されないという点と、現金として引き出す際に時間がかかることがあるという点です。

ただし少額であれば、外貨を簡易で手数料を抑えて持つ上では、FXも一つの手段として知っておいて損はないでしょう。

外貨建MMFで持つ

USドルなどの主要外貨であれば、外貨建てMMF(投資信託)で持つこともできます。手数料は金融機関によって異なりますが、USドル建てMMFなどは25銭~50銭などが多く比較的抑えられています。元本保障に近い商品のためリスクは小さいですが、単純に外貨を持つことと比べ、MMFの運用成績が良く好利回りが出る場合があります。

また、利益にかかる税金が他の投資信託などの損益通算が可能になり、為替差益は申告分離課税(20.315%)になります。一方、外貨普通預金の場合は雑所得になるため、売却して得た利益は雑所得になり、確定申告による総合分離課税の対象となります。詳しくは、税理士に相談いただければと思います。

主要なUSドル建てMMFの手数料だけをみれば、先程の住信SBIネット銀行の為替手数料の方が安いのですが、外貨建てMMFで持つメリットは資産保護にあります。投資信託の為、元本は保証されませんが万が一金融機関が破綻しても資産保全されます。

引用した金融機関の金利や各種手数料、さらに為替相場水準はいずれも2021年10月時点のものです。取引をする際には、必ず最新の情報をご確認ください。

外貨建て株式やETFで持つ

外国株式を外貨建てで取得することでも外貨を持てます。米国株式や米国ETFなどをUSドル建てで買う、といった方法です。

手数料の安いネット系の証券会社でも、円で米国の株やETFを買う時に1米ドルあたり25銭程の手数料がかかるところが多いです。先程の住信SBIネット銀行であれば、1ドルあたり0.4円の手数料で購入できるので、米国株やETFを用意周到に買うのであれば、まず住信SBIネット銀行で円をドルに変えてから、SBI証券に移して購入すると為替手数料をおさえられます。

リスクを理解して長期目線で考えよう

為替の振れ幅はけして緩やかとは言えません。ここ10年でみても、1USドルは70円台から120円を超える場面もありました。ここ5年ほどは110円をはさんだレンジ相場になっていますが、1年で10%20%動くことは容易に考えられます。

外貨を持つということは、こういった為替の影響を強く受けるということです。ただ現金として外貨を持つだけではなく、運用を組み込む、すなわち株式の成長で為替変動の影響を吸収できる場合があります。

円高時に外貨建ての運用資産をもてば円安時には、運用益に加えて為替の利益も享受することも可能です。当然、円安時に仕込んで、株価も下がり円高に振れればダブルパンチを受けることになりますので、自分のリスク許容度を考えて資産を配分するとい良いでしょう。

外貨を初めて持つならば、まず検討するのはUSドルが良いと思いますが、ご紹介した通り様々な取得方法があります。為替手数料を抑えることや、為替リスクがあることを理解した上で、長期目線で円だけでない通貨分散を考えてみてはいかがでしょうか。

引用した金融機関の金利や各種手数料、さらに為替相場水準はいずれも2021年10月時点のものです。取引をする際には、必ず最新の情報をご確認ください。

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