タイトル獲得の裏でタイヤの劣化と戦ったトヨタ勢「剣の刃を渡る」状況にあった/WEC第5戦

 TOYOTA GAZOO Racingは10月30日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで開催されたWEC世界耐久選手権第5戦バーレーン6時間レースで勝利を納め、2021年シーズンのチームタイトルを獲得したが、決勝レースではタイヤのデグラデーションに苦しめられていた、と同チームのパスカル・バセロンは語った。

 2台のGR010ハイブリッドを走らせるトヨタは先週土曜日に行われた灼熱の中東ラウンドで今季3回目のワン・ツー・フィニッシュを達成し、最終戦を前にハイパーカークラスの初代チームチャンピオンを確定させた

 土曜の決勝日、日中の気温は30度を超えピーク時には34度に達したことで、WECのなかでもとくにタイヤに厳しいレースとなった。この過酷なコンディションはパドックのいたるところに影響を与えることとなる。

 盤石なレース運びで勝利を収めたトヨタも例外ではなく、TGRのテクニカル・ディレクターを務めるバセロンは「平均的なレースペースはタイヤのデグラデーションに支配された」と説明した。

「それはナイフのエッジに立つようなものだった。我々が走らせた2台のクルマの間には、明らかにタイヤのデグラデーション(劣化具合)に差があった」

「8号車(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組:2位)はレース中に2回、大きなデグラデーションを起こし、7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組:優勝)に引き離されてしまった」

「私たちは、何が原因で大きなデグラデーションが発生したのか、その原因を完全に理解する必要がある」

「アルピーヌと比較した場合、彼らはスタートの段階では非常に近い場所にいた。基本的に、タイヤの状態が良くなければペースを維持できない状態で、なぜ私たちが彼らよりもうまくタイヤをマネジメントできたのか、それは完全には明らかになっていない」

「彼らと我々ではタイヤ戦略が異なっていたので、おそらくそれが私たちのクルマのタイヤライフを延ばすのに役立ったのだろう」

 バセロンは、トヨタがどのコンパウドを使用したかについては語らなかったが、レースでは高温ドライ路面用の“ソフト・ホットウェザー”と“ミディアム・ホットウェザー”の両方を使用しなかったと述べた。

優勝した7号車トヨタGR010ハイブリッドのホセ-マリア・ロペス、小林可夢偉、マイク・コンウェイ

■ドライバーの交代頻度の違いは勝敗に直結していない

 また、7号車をドライブしたコンウェイは、ロペスと可夢偉とともに、タイヤマネジメントの面で「未知のことが多い」レースだったと語った。

「プラクティスでは、(ダブルスティントで)これほどタイヤを使っていなかった」とコンウェイ。

「一方、決勝レースでは最初からタイヤを管理する必要があった」

「2回目のスティントでは、かなりうまくいったと思う。それによって(7号車やアルピーヌに対する)アドバンテージを得ることができたと考えている」

「1日をとおして、クルーやチームメイトがしっかりと素晴らしい仕事をこなしてくれた。チームタイトルを獲得し、ドライバー選手権でもリードを拡げることができてよかったよ」

「とはいえ、僕たちは来週末(11月4~6日)にもう一度優勝するために、まだまだ努力をしなければならない」

 WEC史上初の2週連続開催の初戦となった第5戦バーレーンでは、優勝した7号車トヨタは3名のドライバーがダブルスティントを担いながらレースを完走したのに対し、2位となった8号車はスティントごとに、リフレッシュした3名のドライバーが交代でステアリングを握った。

 バセロンはこの戦略の違いについて、ドライバーの担当パート決定は各車に任せていると説明した。

「それはドライバーと彼らの担当エンジニアの間で決められたことだ。チームの決定ではない」

「しかし、これが(勝敗を分ける)要因だったとは思わない。本当のところの要因はクルマのセットアップと、タイヤのデグラデーションにあったと考えている」

8号車トヨタGR010ハイブリッドはPPスタートからレース序盤をリードしたものの、2番手に後退したのち、徐々に7号車との差が開いていった

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