読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、43歳、地方公務員の方。土地を購入して新築を建てたいそうですが、貯金が少なく、カーローンが200万円あることを心配しています。どれくらいのローンが組めるのでしょうか? また、借りられる金額と、無理なく支払える金額はどのくらい差があるのでしょうか? FPの渡邊裕介氏がお答えします。
43歳・独身・地方公務員です。
土地を購入して新築を建てたいのですが、貯金が少ないことと、住宅ローン期間や保険を考えると、いくらまでなら住宅ローンを借りられて、ローン期間はどの程度がいいかわかりません。
また、現在、2018年末に借り入れたカーローンを返済しています。借入額は330万円で、残債は202万8,505円です。金利1.9%、毎月分2万2,650円、ボーナス払い10万6,999円、返済終了日は2025年12月25日予定です。
そのうえで、ローンの借り方はどのように考えればよいでしょうか。
【相談者プロフィール】
・43歳、公務員、独身
・住居の形態:賃貸(鹿児島県)
・毎月の世帯の手取り金額:24万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:114万円
【支出の内訳】
・住居費:5万9,000円
・食費:4万円
・水道光熱費:1万2,000円
・保険料:2万円
・通信費:1万2,000円
・車両費:1万2,000円
・お小遣い:3万7,000円
・その他:カーローン毎月2万2,650円、ボーナス払い10万6,999円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:1万円
・ボーナスからの貯蓄:なし
・現在の貯金総額(投資分は含まない):10万円
・現在の投資総額:600万円
・現在の負債総額:202万8,000円(カーローン)
渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。
今回は、カーローンを抱えている方の住宅購入のご相談です。住宅を購入する際、多くの方が住宅ローンを組みます。その時にカーローンを組んでいると、借入れできる金額に影響を及ぼします。しかし、自動車を購入する際に一括で購入するより、ローンを組む方も多いのではないでしょうか。
カーローンを抱えている場合の住宅購入の注意点について見ていきましょう。
金融機関が貸付の際に見る「返済比率」とは
まず、金融機関が住宅ローンを貸すにあたり、審査項目のひとつに返済比率(返済負担率)というものがあります。これは、借りる人の年収に対して、年間での住宅ローン返済額の割合のことです。返済比率が基準を超えた場合、返済負担が重くなり、返済が滞るリスクが高まるため、融資を受けることが出来ません。そして、カーローンなど住宅ローン以外の借入れがある場合は、この返済比率に影響を受けます。銀行は、その他借入れも含めて返済比率が適正かどうかで審査を行うのです。これが、カーローンや奨学金など返済中の方が住宅ローンを借りにくくなる要因です。
借り入れ可能な金額はいくら?
では、これらを踏まえてご相談者が借りられるであろう金額についてみていきましょう。
金融機関から「借りられる金額」についてですが、目安となる返済比率は、金融機関によっても異なりますが、一般的には30~35%程度 となっています。
ご相談者の手取りの収入から逆算して年収を500万円と仮定します。
500万円×35%÷12ヶ月=14万5,833円
月々約14万5,000円が借入れできる住宅ローン返済額の目安になります。その他ローンがある場合は、ここからローンの返済額を差し引きます。ご相談者は、カーローンで年間48万5,798円、月々にすると約4万500円の返済をしているので、先ほどの返済額の目安から差し引くと、
14万5,000円/月−4万500円/月=10万4,500円/月
よって、月々10万4,500円が毎月返済額の上限となります。
「フラット35」とそれ以外で比較すると
金融機関が審査する際に用いられる金利のことを審査金利 と呼びます。これは、店頭に表示された金利ではなく、金融機関によって異なりますが、通常3~4%に設定されています。なお、「フラット35」については、審査金利は実行金利(借り手が実際に負担する実質的な金利)がそのまま適用されるので、大きい金額の借入れを希望する場合は、フラット35の方が審査が通りやすくなっています。
審査金利を4%(フラット35は実行金利)、借入期間25年で計算すると以下のようになります。
【フラット35以外】
借入額2,000万円、金利4%、借入期間25年:月々10万5,567円
【フラット35】
借入額2,600万円、金利1.5%、借入期間25年:月々10万3,983円
借入れ可能な予想額は約2,000~約2,600万円となります。金融機関によって異なり、他の要件もあるため、必ずしもこの結果になるわけではありませんが、ひとつの目安となります。
老後資金準備を考えると、今より家賃を上げるのは厳しい
ここまでは、金融機関から借りられる金額について試算しました。次に、ムリなく返済することが出来る借入額について考えてみましょう。
ご相談者の経済的な目標には、住宅購入以外に老後の生活費準備があります。住宅ローンの返済をしながら、老後資金準備をしていく必要があります。
総務省統計局が調査した「家計調査報告」の2020年(令和2年)平均結果の概要によると、65歳以上の単身世帯における平均的な支出額は、13万8,542円です。ご相談者の現在の生活費は、ボーナスも含めて計算すると、月平均28万7,000円を何かしらに使っていることになります(貯蓄が月1万円、ボーナスから0円ですので、それ以外は全て何かしらで使っていると判断し、カーローン以外の生活費を合算すると月々19万2,000円×12ヶ月=230万4,000円。ボーナス年間114万円。これらを足して12ヶ月で割りました)。
お仕事をされている時よりも、リタイア後の方が生活費は抑えられるかと思われますが、そこまで大きく生活感を変えることは出来ないので、仮にリタイア後の生活費の目標を20万円とします。
平均年収500万円の方が65歳以降受け取れる公的年金の額は現行の制度で試算すると、約14万円/月程度です。リタイア後の生活費目標との差額が月々6万円程度となるので、仮に90歳まで生きると仮定すると、
6万円×12ヶ月×25年間=1,800万円
65歳のリタイアまで1,800万円程度準備する必要があります。現在43歳ですので、約20年間で1,200万円程の準備と考えると、年間60万円は最低でも貯蓄する必要があります。ご相談者の場合、今よりも月々4万円の貯蓄を増やす必要があります。
今の住居費が5万9,000円/月ですので、住宅ローンを組んで今よりも住居費を下げるのは現実的ではありません。
住宅購入の前に支出の改善は必須
すなわち、そもそも住宅購入の前に生活費の改善をしないといけないと考えられます。月々の生活費の内容はそこまで大きく改善の余地がないので、ボーナスの使い道を整理しましょう。仮にボーナスから約50万円の支出削減が出来たとしても、住宅ローンの返済を5万9,000円程度に抑える必要があります。
借入額1,600万円 変動金利0.5% 返済期間25年 月々返済5万6,747円
ですので、中古マンション程度の購入に留まるかと思われます。
まずは、カーローンの返済計画を立て、今の生活費と老後の生活費を整理した上で、シミュレーションを作成しましょう。安易に金融機関で借りられる額をベースに住宅購入をすると、思わぬ生活改善が必要となり、思っていた生活が実現出来なくなってしまう恐れがありますので、要注意です。