櫻坂46、完全羽化へ――全国ツアーが描いた「アーティスト性」と未来への足跡

櫻坂46(以下櫻坂)は、改名後初の全国ツアー「1st TOUR 2021」を9月11日~昨日10月31日に渡って開催した。ツアーファイナルは、さいたまスーパーアリーナでの3DAYS公演。ファイナルは単独の有観客ライヴとしては最大規模、多くの「Buddies」(櫻坂ファンの総称)の前に立ち、彼女たちが見せた姿には遂に芽吹き始めた櫻坂の「アーティスト性」が滲み出た夜となったのと同時に、「今」だからこそ胸を打つエポックなシーンを目撃することができた。

華やぎ始めた楽曲たち

最初に触れたいことは、端的に楽曲が充実してきたという事実だ。これまで彼女たちは『Nobody’s fault』、『BAN』、『流れ弾』と3枚のシングルパッケージのリリースを経て、21曲の楽曲をドロップしてきた。『BAN』までの各楽曲でセンターを務めてきた森田ひかる、藤吉夏鈴、山﨑天に加え、『流れ弾』では田村保乃、渡邉理佐、そして現在のBACKSメンバーによる編成となった“ソニア”では、小池美波が新たにセンターとして抜擢。やはり中心に立つメンバーが変われば、自ずと楽曲の色も変化するものなのだろう。『流れ弾』のリリースを経て、彼女たちのセットリストは格段にその色彩を鮮やかなものとしていた。

まず、ブロックごとの緩急の幅が美しい。冒頭を飾った最新曲“Dead end”は、森田をセンターとして、ホーンセクションと共にアッパーにライヴの始まりを告げる。藤吉がセンターに立つ“偶然の答え”からは、グッと郷愁がステージに香り立つタームを展開。

そして、“思ったよりも寂しくない”では、炎が灯されたセンターステージにメンバーは移動。若干16歳・山﨑の圧倒的な存在感と共に、会場全体にポジティヴなエネルギーを「涙を流しながら笑う」とも言えようか――兎にも角にも、白眉のパフォーマンスで満たしていた。

そのテンションを最新曲“ソニア”も含めて保ち、1stシングル『Nobody’s fault』からの楽曲群から“BAN”に至るまでの流れはまさに圧巻。ステージに立つメンバーからも、改名後初のツアーの充足感から生まれた自信が漲っていた

“流れ弾”と田村保乃という新たなピース

とはいえ、ここまではある種予想の範疇。しかし、今の彼女たちにはまだ弾が込められていた。最新リードトラック“流れ弾”は間違いなく、新たな表情を櫻坂に生んでいる。映画『ブラック・スワン』を想起するような漆黒の衣装に身を包み、激情と狂気を孕んだようなパフォーマンス……普段は天真爛漫な田村が新たにセンターに立つことで、楽曲に込められた現代社会の不可思議さへの叫びを、より際立たせていた。

間違いなく今までのセンター像とは違う、新たなピースを彼女たちが得たことは確か。強い叫びと、<語り合おう 見つめ合おう 愛がなくちゃ世界は終わる>というリリックの両立を果たす、“流れ弾”という楽曲の二面性を描いた彼女のパフォーマンスには今後も期待だ。

白を様々な色に染め上げ、さらに多くの側面をみせるようになった櫻坂。個人的には、映像でのブリッジなども含めて、楽曲の世界観を生かすために丁寧に作り込まれていたライヴ全体の雰囲気を、中盤のMCパートが少々長く分断した感覚があったため(メンバーの体力面を考慮していることは十分理解しているが)、まだまだ上を目指せるライヴであるとは感じた。

しかし、それを上回って、雁字搦めの現状を叫びながらも、最終的にはポジティヴな方向へ導く「生きるため」の楽曲の数々ーー決して容易ではないメッセージの表現を、パフォーマンスを通して描いていた彼女たちの「アーティスト性」が煌めいていた。

変革へのカウントダウン

アンコールでは今の彼女たちのストーリーを語るうえで、欠かせないシーンがいくつもあった。まず触れなくてはいけないことは、メンバーの一時活動休止や卒業発表に関して。ツアーに先だって、1期生の中心としてグループを支えてきた小林由依が一時活動休止を発表。そして先日、こちらも1期生、欅坂46時代には副キャプテンも務めた守屋茜と、現・櫻エイトでもある渡辺梨加が卒業を発表していた。

その後MCでは、守屋茜、渡辺梨加、両人から直接卒業に関しての言葉があったが、敢えて今は触れることはしない。この日発表された12月開催の『1st YEAR ANNIVERSARY LIVE』にも二人は出演することが決定しているとのこと。今はまだ彼女たちのストーリーを見守り続けよう。

最後、キャプテンの菅井は改名発表後、有観客ではなくオンラインのライヴが続いたこと、そしてツアーの開催自体に関して改めてBuddiesやスタッフに感謝を述べたあと、笑顔でこのような言葉を残した。
「これからの櫻坂に、凄く可能性を感じることができました」

彼女がこの言葉残すことができただけでも、このツアーの意味はあったのだろう。欅坂時代からキャプテンを務め、本当の意味でグループのすべてを見届けてきた彼女が今の櫻坂の未来に光を抱くことができているのは、間違いなく、彼女たち自身の成長が生んだ言葉だったに違いない。「お会いできなかった間ずっと、皆さんのことを思いながら歌ってきました」ーーそう言って最後に全員で披露されたのは“櫻坂の詩”。<ふと思い出すように 僕らはこの坂に集まって 君のこと語り合えば また会える気がしてくるよ>ーー花は枯れようとも、また違う命を宿して咲き誇る。再会と別れを経て、彼女たちが咲かせる花の色を見届けたい、そう思わせる夜だった。
(撮影:上山陽介)(テキスト:黒澤圭介)

櫻坂46 1st TOUR 2021 FINAL at さいたまスーパーアリーナ セットリスト

Overture

1. Dead end

2. Plastic regret

3. 半信半疑

4. Microscope

5. 君と僕と洗濯物

6. 偶然の答え

7. ブルームーンキス

8. 最終の地下鉄に乗って

9. 思ったよりも寂しくない

10. それが愛なのね

11. ソニア

12. Nobody's fault

13. なぜ 恋をして来なかったんだろう?

14. Buddies

15. BAN

16. 流れ弾

EN1. 無言の宇宙

EN2. 櫻坂の詩

櫻坂46 最新公演情報

櫻坂46 「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」

【出演】
櫻坂46
※出演者は予告なく変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。

【日程・会場】
12月9日(木)開場 17:30 /開演 18:30
12月10日(金)開場 17:30 /開演 18:30
日本武道館

【料金】
全席指定:9,800円(税込)

詳細な情報については櫻坂46公式サイトよりご確認ください

櫻坂46 最新リリース情報

櫻坂46 3rdシングル『流れ弾』
発売日:2021年10月13日(水)
商品形態:
【Blu-ray付き】
初回仕様限定盤TYPE-A / CD+BD / SRCL-11920〜11921 / ¥1,727+tax
初回仕様限定盤TYPE-B / CD+BD / SRCL-11922〜11923 / ¥1,727+tax
初回仕様限定盤TYPE-C / CD+BD / SRCL-11924〜11925 / ¥1,727+tax
初回仕様限定盤TYPE-D / CD+BD / SRCL-11926〜11927 / ¥1,727+tax
通常盤 CD only / SRCL-11928 / ¥1,000+tax

初回仕様限定盤・封入特典
応募特典シリアルナンバー封入
メンバー生写真(各TYPE別25種より1枚ランダム封入)
櫻坂46 OFFICIAL WEBSITE: https://sakurazaka46.com/
櫻坂46 OFFICIAL Twitter: @sakurazaka46

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