トヨタ、GR010をテストするセバスチャン・オジエは“様子見”の方針。2022年ル・マンでの3台目投入は「現時点では無し」

 WEC世界耐久選手権に参戦するトヨタGAZOO Racingのチームディレクター、ロブ・ロイペンは、11月7日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われるテストでル・マン・ハイパーカー(LMH)『GR010ハイブリッド』をドライブするセバスチャン・オジエについて、大きな期待はしていないと述べている。

 7度のWRC世界ラリー選手権王者は第6戦翌日にWECが設けるルーキーテストの場において、GR010ハイブリッドを走らせる。WRCにTGRから参戦するオジエは、サーキットレースへ転向するという野心を表明してはいるが、トヨタはLMHにおけるオジエのポテンシャルを見極めるため“様子見”のアプローチを採っている。

「まずは彼に機会を与えて、その場を設けることだ」とロイペンはSportscar365に対し語っている。

「WRCにおける彼のスキルについては、話す必要がない。彼には、彼自身の興味というものがある。彼はこのテストをしたいと思っていて、とてもやる気にあふれている。彼はケルン(TGRヨーロッパ)のシミュレーターで2日間を過ごした」

「彼はここ(バーレーン)で実車を体験するわけだが、そのクルマはWRCカーとは大きくことなるはずだと私は彼に言った。それは間違いないと思う」

「そのあと、どうなるか。彼は来年もWRCのいくつかのラリーに出場する。彼は我々(WECチーム)の2022年のドライバーラインアップには含まれていないと思う」

ドイツ・ケルンのTGRヨーロッパ内にあるシミュレーター

 37歳のフランス人・オジエのWECへの野心について尋ねられたロイペンは、耐久レースでの経験を積むことはクルマに関係なく重要だ、と述べている。

「WRCの場合と同様に、耐久レースでの経験が非常に重要であることを我々は知っている」とロイペン。「我々が“真剣なル・マンの出場者”でいたいのであれば、それはイエスだ」。

「彼がここでどんな経験をすることができるのか、見てみよう。チームにとって、彼をドライブさせることはとても素晴らしいことだと私は思う」

「それは、フェルナンド(・アロンソ)を乗せた2017年にも少し似た感覚だ。ビッグネームであり、とてもナイスガイだ。彼がここにいるのは、みんなにとってとても良いことだ」

■3台目投入よりも“やるべきこと”がある

 TGRヨーロッパのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンが完全には否定しなかった、2022年のル・マン24時間レースでトヨタがオジエのために3台目のLMHを投入するという見通しについて、ロイペンは実現性が低いと見ている。

 3台目投入の可能性について尋ねられたロイペンは、「私はそうは思わない」と語っている。

「これ(ルーキーテスト参加)がベストだと思う。やるべきことは、まだたくさんある。我々は(LMH、LMDhのライバルが増える)2023年に向け、充分に準備をする必要がある」

「来年は我々にとって重要な年になるだろう。燃料系やその他、クルマにはまだいくつかの問題がある」

「我々はまずBoP(性能調整)に慣れる必要があり、チームにはまだ学ぶべきことがたくさんある。我々にとっては2022年もこの道のりを継続し、その後2023年に何が起こるかを楽しみにしたい」

 バセロンは次のように付け加えている。

「毎年、我々は3台目のクルマについては考えなければならない。だが、現時点でそれは(2022年の)計画に含まれていない」

「このテスト機会をセブに与えられることをとても嬉しく思う。また、会社(トヨタ)のこれらふたつの活動を結びつけることができてハッピーだ」

「これはドライバーのマネジメントだ。(3台目の投入は)ひとりのドライバーや、他の誰かを喜ばせるだけのものではない。我々のプロセスを経るのであれば、どんなことも可能となる」

 2022年のドライバーラインアップについて、バセロンは12月か1月に発表をすると語っている。

WEC最終戦翌日のテストでセバスチャン・オジエが走らせることになるトヨタGR010ハイブリッド

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