「婚活もままならない」37歳。貯蓄マイナス30万から1年で貯蓄体質になるには?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、37歳、会社員の男性。現在、貯金120万円に対して150万円の借金があるという相談者。このままでは婚活や、その先の結婚や子どもを持つことも難しいのではと落ち込んでいます。現状を脱却し貯蓄体質になるための戦略は? FPの氏家祥美氏がお答えします。


一人暮らしを始めて家計簿をつけてみて、赤字すれすれということがわかりました。

結婚をまだあきらめたくなく、婚活もしていますが、この年収、この貯蓄額では結婚式を挙げること、結婚指輪を買ってあげること、子どもを持つこと、ゆくゆくは住宅を……ということも難しいのかなと考えてしまい暗い気持ちになっています。

コロナ禍のあおりで今冬のボーナスは減少が予想されるので、婚活費用があるとはいえ日ごろからもっと貯めたいと考えています。

家計簿をつけたときに生命保険に目が行きましたが、がん家系であるので将来的な医療費のことを考え入りましたが、今は過剰ではないかと感じております。

生命保険の見直し方について、またほかに見直す点があればアドバイスをお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・男性、37歳、会社員、独身

・住居の形態:借り上げ寮(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:21万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:70万円

・毎月の世帯の支出の目安:19万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:1万220円

・食費:3万5,000円

・水道光熱費:1万円

・保険料:4万3,000円(1万6,000円・2万7,000円ともに掛け捨て)

・通信費:1万2,000円(契約プラン7,000円、端末分割費用3,900円)

・お小遣い:0〜1万5,000円

・その他:婚活費用8,000円~3万円、交通費0~3,000円、日用品0~5,000円、個人年金1万9,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0〜1万5,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:20万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):120万円

・現在の負債総額:150万円(医療ローン)氏家:こんにちは。ご相談ありがとうございます。現在婚活中で、将来の結婚に向けてお金を貯めていきたいとのことですね。

金融資産残高マイナス30万円から急いで脱出を

「赤字すれすれ」の家計であり、「この年収、この貯蓄額」では、結婚式も結婚指輪を買ってあげることも厳しいかも……とのことですが、現在の貯蓄残高は120万円。これに対して、150万円のローンを抱えていらっしゃいます。これは、貯金がないのではなく、実質的にはマイナス30万円の状況です。

ギャンブルなどではなく医療ローンということで、やむを得ない事情もあったとお察ししますが、住宅ローン以外の借金で金融資産がマイナスの状況は、結婚を前提でお付き合いをするには、かなり厳しい状況と思ってください。まずはこのマイナス家計を急いでプラスに持っていきましょう。

住居費の安さを生かせば貯蓄はできる

毎月の手取り月収は21万円。これにボーナスが手取り70万円加わって、手取り年収の合計が322万円です。ご自身でおっしゃる通り、金額的にみると年収が高いとは言えないものの、会社の借上げ寮に住めているおかげで、東京にいながら住居費が1万220円しかかかっていません。これは大きなメリットです。ワンルームのアパートでもやむを得ず8万円程度支払っている人が多いことを考えると、7万円も住居費を節約できていることになります。この恵まれた状況をしっかりと受け止めて、不要な支出を見直して貯蓄に回していきましょう。

掛け捨て保険を大幅カットして現金で備えよう

1か月の支出は19万円とのことですが、支出の中で目立つのが保険料4万3,000円です。貯蓄性の保険ではなく、1万6,000円と2万7,000円の掛け捨てタイプの保険に加入しています。お気づきの通り、ここが最大の見直しポイントになります。

掛け捨て保険でこの保険料の高さということは、既往症を抱えている人でも加入しやすい「引き受け基準緩和型保険」や、保険加入時の告知や医師の診査がいらない「無選択型保険」などでしょうか。医療ローンを抱えていることを見ても、何か大きな病気などを経験して、保険料の支払いに困った経験があるのでしょう。退院後、既往症を抱えた状況で加入できる保険といえば、このような保険になるのですが、一般的な医療保険や死亡保険に比べると保険料が高めに設定されている点には注意が必要です。

この保険2つを解約すると、月々4万3,000円が節約できます。1年間では51万6,000円の節約ができるので、マイナス家計の脱出にはとても有効な手段です。

保険よりも現金の確保が急務

保険を解約すると医療費の備えが心配になると思いますが、私たちには公的医療保険があります。医療費は原則3割負担となっていますが、1か月の医療費が高額になった場合には、高額療養費制度という制度があるため、公的医療保険の保障の範囲内の治療であれば、1か月の医療費は10万円以下に抑えられると思っていいでしょう。日々の生活費やピンチに備えるにはまず現金の確保が必要ですから、その現金の確保が急務です。

保険の見直しという点では、個人年金保険1万9,000円も、現在の家計からすると優先度は低くなります。個人年金は、既往症がある方でも加入しやすい保険ですし、個人年金保険料控除という生命保険料控除の1枠を利用できることから節税効果もあります。ただし、個人年金保険料控除は年間保険料8万円が上限なので、それを超えると節税効果が薄れていきます。年金の受け取りも高齢になってからです。今のご相談者さんの状況を考えると、老後のための個人年金にお金を使うよりも、金利負担がある医療ローンの返済を優先したほうが有効です。個人年金を辞めると、ここでも毎月1万9,000円の現金を増やせます。

生命保険4万3,000円と個人年金1万9,000円の見直しで、合計6万2,000円の現金が生み出せました。

通信費の見直しでも5,000円節約できる

2021年は、大手キャリア3社が相次いで携帯料金の見直しを発表しました。おかげで従来の格安スマホも含めると、通信費の見直しの選択肢がずいぶんと増えたことになります。通信費は毎月の大きな固定費となりますから、携帯電話の料金プランを今すぐ見直していきましょう。

機種代がまだ残っているのは仕方ないとして、契約プラン月額7,000円は、月額2,000円程度まで引き下げられる可能性大です。いま、各社がこの価格帯のプランを出しているので、携帯会社に相談してみてください。

年間120万円の貯蓄も可能に

ここまでで、保険料から6万2,000円、通信費から5,000円で合計6万7,000円の見直しができました。ここに現在の貯蓄額1万5,000円を加えると、毎月の貯蓄可能額は8万2,000円になります。8万2,000円×12か月=98万4,000円になります。

ボーナスは年間70万円ありますが、ボーナスからの貯蓄は年間20万円です。ボーナスのうち50万円の使い道が見えていないため何とも言えませんが、ここはあと1万6,000円程度節約を頑張っていただいて、ボーナスから年間21万6,000円の貯蓄をすると、1年間で120万円の貯蓄ができるようになります。

現在の貯蓄残高は120万円あるので、これには手を付けずに残高を維持してください。そして家計の見直しで積み増しのできる貯蓄については、いま150万円ある医療ローンの返済に充てていきましょう。ローンには通常金利がかかるため、このローンを早期に返済していくことが、返済総額の負担軽減につながります。繰り上げ返済のルールを調べてみてください。ボーナスを含めたお金の使い道をもうちょっと見直せば、2023年いっぱいでローンを完済できるかもしれません。あと1年頑張って、2023年を負債ゼロでスタートできることを目指してみましょう。

30代のうちに貯蓄体質が手に入る

1年間頑張ってローンを完済するメリットは、その先にあります。ローン返済が終わっても家計を緩めずに、自動積立でお金を貯める仕組みを作れば、確実に貯められるようになるからです。

世の中には保険や投資などいろんな金融商品がありますが、まだあれこれ考える段階ではありません。2022年の1年間はローン返済に集中しているため、2023年初の貯蓄残高はいまと変わらず120万円ですから、ピンチに何とか備えられる程度の金額です。その先の人生にある結婚や出産などに使うお金はここから貯めていくことになるので、必要になったときに使いやすいことを第一に考えます。給与口座のある銀行で「自動積立定期預金」を申し込み、給与が入ったら自動的に毎月一定額が定期預金に移動する仕組みづくりをしましょう。

2023年に借金ゼロスタートを目指そう

明るい未来のためにも、保険や通信費を急いで見直し、毎月8万2,000円ずつ医療ローンを返済していきましょう。ボーナス時は少なくとも10万8,000円×2回、可能であればそれ以上を繰り上げ返済していきます。今すぐ見直しを始めて、2022年も1年間このように頑張れば、2023年の初めには年間120万円ずつお金が貯まる貯蓄体質な家計が手に入ります。30代のうちに貯蓄体質に変わることで、明るい未来が見えてくることでしょう。

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