ボーカリスト NOKKO の真髄を見た!雨中の早稲田祭レベッカライブ in 1986  11月4日はNOKKOの誕生日

スージー鈴木「いいボーカリスト」3つの基準

『切れ味鋭いコピーライター、NOKKOは作詞家としてもっと評価されるべき』に続いて、レベッカ時代のNOKKOの、音楽家としての凄みについて書きたいと思います。

前回は作詞家、いや「コピーライター」としてNOKKOが、歌詞の中に、実に鋭いフレーズをはさみ込んでいたことを検証しました。今回は、ボーカリスト・NOKKOの歌が、とても素晴らしかったという話です。

ここでまずボーカルについての、個人的な評価基準を述べておきます。私が考える、「いいボーカリスト」の概念は、ざっくり3つの基準で構成されるものです。

(1)音程(ピッチ)が合っていること
(2)ビブラートが必要以上に大きくないこと
(3)声量があること

(1)は、これは一般的にいう「歌の上手さ」の概念ですよね。ですが、やっぱり大切なことだと思います。これに関連して(2)。私は、極論すれば、ビブラートまったく無しで、後ろの伴奏と、音程がぴったり合っているような、まるでオルガンみたいな歌い方をするボーカリストこそが「歌が上手い」と考える立場です。

逆に、過剰にビブラートをかけるボーカルは、下手、とは言いませんが、好きではありません。主に演歌の世界で多いのですが、過剰に、これでもかこれでもかとビブラートをかけて(こぶしを回して)、どの音程を取っているのか、分からなくなっているような歌があります。

更にはそういう、感情移入の過剰な歌こそが上等だとする、昭和からの風潮があって、キツイ言い方をすれば、私は、そういうのを、貧乏くさいと思うんですよね。

重視すべきは “声量”、聴けばわかる「Maybe Tomorrow」の表現力

そして(3)。実は私は、この基準を最も重視しています。ボーカリストは、とりわけロックボーカリストは、大声であるべきです。大声が出るということは「小声」も出るわけで、大声から小声の間での、声量の変化による表現力も備わっているということなのですから。

そんな私が「あぁ素晴らしいなぁ」と思った女性ボーカリストは、後で触れるNOKKOに加えて、デビューからちょっと経ったあたりの松田聖子(「夏の扉」のあたり。その後、もったいないことに声を潰してしまいます)や、最近では木村カエラですね。

さて本論です。上の(1)~(3)の条件を、それぞれ高得点で満たしたNOKKOのボーカルを聴いていきましょう。

まずは、アルバム『Maybe Tomorrow』のタイトル曲=「Maybe Tomorrow」でしょう。できれば全編聴いていただきたいのですが、お時間の無い方は、曲の4分35秒あたりからの、「♪ Maybe Tomo《rrow》」の《 》内のロングトーン・ボーカルをお聴き下さい。

どうでしょう? この、抜群の音程と声量で、みずみずしく響き渡るボーカルは。あまりにも個性的なボーカルだったため、「NOKKO=優秀なボーカリスト」だとは、当時ほとんど語られなかったと記憶しますが、あれから30年を超えて、今これを聴けば、そういう聴き方をしなかったことが、いかにもったいなかったかと思ってしまいます。

早稲田祭で実感、レベッカ・NOKKOの圧倒的なパフォーマンス

そして、極めつけは、1986年11月1日、早稲田大学の学園祭=『早稲田祭』で行われたライブにおける「プライベイト・ヒロイン」です。実は私、早稲田大学の1年生として、この場に居合わせていました。

大阪から上京してきた1年生。初めての大学祭なので、一応、行っておこうと足を運んだのですが、知り合いもいないし、天気も悪いので、帰ろうか思っていたら、レベッカが来るという噂が流れてきたので、文学部のある戸山キャンパスに向かったのです。

行ったら、すでにかなり人が集まっていて、そこにレベッカが登場、どんどん盛り上がっていくのに気後れして、穴八幡宮の方から遠巻きに見つめていました。

今から考えると、この圧倒的なパフォーマンスに、なぜもっと近づかなかったのか、飛び込まなかったのかと悔やまれます。そういう意気地なしの少年が、30数年後に音楽評論家になっている。人生とはそんなものでしょう。

『早稲田祭』でのNOKKOを見て頂くとわかるのですが、これは音楽というより、もうスポーツの領域です。少なくとも、80年代の日本ロック界を代表するライブパフォーマンスの1つであることは言うまでもありません。意味もなく「ざまあみろ」と叫びたくなります。

このライブを体験した若者たちの多くは、もう50歳を超えています。みんな元気でしょうか。今でもレベッカを、そしてロックンロールを聴いているでしょうか――。

最後に。

早稲田祭ライブ全6曲の完全版が収録されたDVD 2枚組『REBECCA LIVE ’85-’86 -Maybe Tomorrow&Secret Gig Complete Edition-』は、2017年7月26日に発売されました。

※2017年10月29日、2018年11月1日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: スージー鈴木

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