神奈川大学開発のロケット、高度10.7キロ到達 国内記録更新も、部員は意外にも・・・

打ち上げられた神奈川大のハイブリッドロケット=9月19日、秋田県能代市(同大宇宙ロケット部提供)

 神奈川大(横浜市神奈川区)の学生が開発した「ハイブリッドロケット」の飛翔実験が9月に行われ、到達高度の国内記録約10.7キロ(速報値)を打ち立てた。開発過程のトラブルや新型コロナウイルス禍を乗り越えての快挙に、学生らは「団結と努力が実った」と胸を張る。得られた知見をもとに改良を重ね、記録更新を見据える。

 ハイブリッドロケットの開発に取り組んだのは、神大航空宇宙構造研究室と宇宙ロケット部の学生。企業で人工衛星の研究開発に携わった同大工学部の高野敦教授が指導した。

 打ち上げは9月19日に秋田県能代市の海岸で行った。持ち込んだロケットは全長約4メートル、幅約16センチ、重量約32キロ。学生約30人と高野教授らが見守る中、エンジンに点火、地上を離れたロケットは海の方向へぐんぐん高度を上げた。

 ロケットから送信される高度データを読み上げる部員の声がそれまでの国内記録8.3キロ(北海道大)の突破を告げても、部員たちは冷静だったという。広報担当の川口舞子さん(24)=4年=は「打ち上げまでバタバタしていて、記録更新の実感が湧いたのはしばらくしてから」と笑った。

 神大がハイブリッドロケットの開発に着手したのは2014年。プラスチック樹脂の固体燃料を液体の酸化剤で燃やすため、爆発の危険がなく有毒ガスも発生しない。安全性、環境性能に優れ、管理コストを抑えられるのが特長だ。

 今回の打ち上げには困難がつきまとった。エンジンの燃焼実験でトラブルが相次ぎ、部品の強度不足が判明。さらに20年以降はコロナ禍で研究室や部活動自体が停滞を余儀なくされた。

 それでもオンラインで勉強会を重ねるなどし、搭載燃料の増量と機体の軽量化を両立。今年5月には燃焼実験を成功させ、18年以来の打ち上げにめどを付けた。期待と不安が交錯する中で臨んだ秋田での打ち上げだった。

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