<南風>無垢(むく)

 好きな色は何かと聞かれたら、真っ先に「白」と答えるだろう。何色にも染まらない、真っ白な世界観は花嫁衣装でも格式高く、その美しさは際立っている。そして人も心清らかで飾り気のない、ありのままに生きる「純真無垢(むく)」な人は、とても魅力的だと思う。

 ある日、中学生の息子からママのお手伝いをしてアルバイトをしたいと相談を受けた。なぜお小遣いが欲しいのか尋ねると、「近所のワンちゃんたちにおやつを買ってあげたい」という。お家があるワンちゃんだから、おやつは家族からもらっているのでは? と話すと、「保護犬だったから、たくさん幸せになってほしいんだ」と答えた。保護されるまでの複雑な環境を知ったからだと、なんとも心が温かくなる言葉が返ってきた。

 子どもらしい、純粋すぎる考え方で別の意味で心配にもなるが、頑張ってためたお小遣いを自分のために使うのではなく、他者の喜びのために使うのは、そうそうできることではない。不器用ながらも息子のそんな純粋なところに触れると、大人になり忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる。

 幼い頃の汚れのない清純さは、人の心を優しく爽やかにしてくれる。心が洗われるようなピュアな魅力は、大きくなっても男女問わず愛される理由の一つ。今、目の前にある幸せに感謝できて、素直に喜びを共有できる、私もそんな人になりたいと思う。

 「無垢」という花言葉を持つ白ユリ。琉球の島々に自生する純白の「テッポウユリ」は、ラッパの形を横向きに、力強く大地に根を下ろしている。海を見渡せる過酷な岩場などに生息している姿は、とても真っすぐで強く無垢な人との重なりを感じる。この先も、息子には、優しく純粋な心を大切に成長していってほしいと願っている。

(宮平亜矢子、フラワーアーティスト)

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