海外マネーが注目する日本のスタートアップ、コロナ後に海外投資家比率が高まった銘柄は?

日本には、世界に誇れる技術をもった製造業が多いですが、かつてと比べると世界経済における存在感は薄らいでいる印象です。一方、米国では近年、フェイスブック、アルファベット、アマゾンといった創業から比較的日が浅い企業がイノベーションの牽引役となり、自社と米国株式市場の時価総額を大きく拡大させてきました。

コロナ後の経済成長において欠かせないのが、DX(デジタルを活用した変革)や脱炭素などに対応した新ビジネスの創造です。米国に比べると国内では、新ビジネスの創造を担う若い企業の存在感が増しているとは言いがたく、資本市場としては、こうしたイノベーターを支援し、いかに大きく育てていくのかが課題といえるでしょう。


日米では出口戦略となるM&Aの差が大きい

米国では、大企業によるM&A(合併・買収)が盛んです。M&AはIPO(新規株式公開)以上に多い、ベンチャーキャピタル投資の出口戦略ですが、こうした「出口」がしっかりあるため、ベンチャーキャピタル投資の規模は日本と比べて高水準です。

2020年の米国におけるベンチャーキャピタル投資は、1,300億ドル(約14.3兆円)に達しました。なお同年、過去にベンチャーキャピタルの投資を受けた企業のうち、886社がM&A、103社はIPOを実施しています。

海外マネーによる新企業育成に期待

そのような環境下、変化の兆しもみられます。9月、米決済大手のペイパル・ホールディングスが、日本の後払い決済会社ペイディの買収を発表しました。その金額は約3,000億円と大きい額です。

2021年3Q(7-9月)の海外企業による日本企業の買収額は、コロナ前の2019年3Q、4Qを上回りました。さらに、9月30日にはメルカリ前最高財務責任者らが設立した投資会社ミネルバ・グロース・パートナーズの第一号となるファンド設立に、海外投資家が約6割強を出資したそうです。海外投資家からの日本のスタートアップへの関心が高まっているといえるでしょう。

加えて、金融庁も、海外の資産運用会社が日本に参入しやすくなるよう行政手続きを簡素化する方針です。海外マネーを巻き込んだ新しいビジネスに挑戦する企業の育成に期待がかかります。

外国人投資家が注目する日本の変化

新型コロナ感染拡大を機にDXや脱炭素へ向けて世の中が大きく変わりました。中でも新首相が誕生した日本における進展への期待値は高まります。

海外からの注目は、国内のスタートアップのみならず上場企業へも集まっているといえるでしょう。クラウドやアプリを使ったITサービスや、医療のデジタル化、再生エネルギー関連等に注目が集まっているようです。まだ黎明期であり、利益が伴っていない企業や、高PER銘柄も散見されるため、短期的な株価の動きには注意が必要ですが、長期視点を持った投資対象として取り上げたいと考えます。

<文:投資情報部 金丸裕美>

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