45人死傷の相模原事件、植松死刑囚が描いた絵とは 「死刑囚表現展 2021」、東京で5~7日

By 竹田昌弘

 死刑囚が拘置施設内で描いた絵画などを集めた「死刑囚表現展 2021」が5~7日、東京都中央区の松本治一郎記念会館で開かれる。表現展は今年で17回目。事務局によると、死刑囚19人の作品計約170を展示する。作品からは、生活ぶりがうかがい知れない死刑囚の心境が垣間見える。今年は、2016年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が死傷した事件の植松聖死刑囚が描いた、観音像のような絵も展示される。(共同通信編集委員=竹田昌弘) 

植松聖死刑囚の「(笑い)」

 ▽日々謝罪、執行の瞬間、前首相が誤判救済? 

 植松死刑囚の人物の絵は「(笑い)」という題で、A4判の封筒に描かれていた。前回は、墨絵のような背景の上に「より多くの人が幸せに生きるための7項目」として、安楽死、大麻、カジノ、軍隊などと書いた作品で、意思疎通のできない人の安楽死などを提案していた。裁判を受けていた頃と比べ、心境の変化はうかがえなかった。今回は、文字中心ではない初めての本格的な絵だ。多くの顔がある観音像を意識したのかもしれない。何らかの心境の変化があったのだろうか。  

西口宗宏死刑囚の「日日夜夜 其の壱 詫びる」

 堺市で2011年、元象印マホービン副社長ら2人が殺害された強盗殺人事件の西口宗宏死刑囚が便せん6枚をつなぎ合わせて描いた「日日夜夜 其の壱 詫(わ)びる」では、月を背に男性が頭を下げている。毎晩、被害者に謝罪しているのだろうか。常連の応募者だ。

麻酔切れの「デッドマンズ・ウォーキング」

  ペンネーム「麻酔切れ」という死刑囚の「デッドマンズ・ウォーキング」には、死刑執行の瞬間とみられるシーンが描かれている。執行されたとみられる人影に手を合わせる2人の後ろには、近づいてくる何かが…。

何力死刑囚の「切なる期待」

 菅義偉前首相とおぼしき人物が元号「令和」を発表したときのように、誤判事件の死刑囚等に救済命令を出したー。そんな場面を描いたのは、東京都多摩市のパチンコ店で1992年、従業員3人が刺殺され、売上金を奪われた強盗殺人事件の何力死刑囚(中国籍)。応募した作品15点のうちの一つで「切なる期待」というタイトルが付いている。取り調べの録音・録画(可視化)が始まる前の誤判で死刑となった人らの救済がテーマのようだ。何力死刑囚は裁判で「殺意はなかった」などとして、死刑を回避するよう求めていた。取り調べに不満を持っているのかもしれない。 

 ▽秋葉原事件の死刑囚が描く「お昼寝」 

加藤智大死刑囚の「お昼寝」の一つ「階段国道」

 2008年に17人が死傷した東京・秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大死刑囚は「お昼寝」のタイトルで、14点の漫画のような絵を送ってきた。この「階段国道」はその一つ。

風間博子死刑囚の「命―弐〇弐壱の参」

 風間博子死刑囚は、1993年の埼玉愛犬家ら連続殺人事件で死刑が確定したが、再審請求を続けている。今回の応募は絵画3点と絵の中に「獄の風」と題する短歌を書いた作品。絵画の「命―弐〇弐壱の参」には、花と山が鮮やかに描かれている。短歌では「春待つや あせらず、あわてず、あきらめず」と再審に期待する気持ちを詠んでいる。

 ▽大道寺元死刑囚の母が残したお金でスタート 

  死刑囚表現展は2005年から始まった。連続企業爆破事件で死刑が確定した大道寺将司元死刑囚(17年5月に東京拘置所で病死)の母幸子さんが04年5月に死去し、残したお金は幸子さんが晩年取り組んだ死刑廃止運動に役立てることになり、表現展の運営費も使途の一つに。島田事件(1954年)で死刑が確定し、再審で無罪が確定した赤堀政夫さんからも、2014年に資金の提供があり、表現展の主催は「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」に変更されている。  

 「死刑囚表現展 2021」の今年の選考委員は評論家の太田昌国さん、精神科医の香山リカさん、アートディレクターの北川フラムさんら6人が務めた。5日午後1~7時、6日午前11時~午後7時、7日午前11時~午後5時。松本治一郎記念会館会場は、東京都中央区入船1-7-1(地下鉄日比谷線、JR京葉線八丁堀駅から徒歩3分)。5階の会議室が会場となっている。問い合わせは、共催の「死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90」(電話03-3585-2331、港合同法律事務所気付)。

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