「こんなはずではなかった」前年王者山本尚貴の2021年スーパーフォーミュラ。最終戦で見えた“復調の手がかり”

 2021年シーズン、ディフェンディングチャンピオンの称号であるカーナンバー1を引き下げてTCS NAKAJIMA RACINGに移籍した山本尚貴。2021年シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦となった第7戦『JAF鈴鹿グランプリ』では16番手スタートから9位でチェッカーを受け、ドライバーズランキングは13位、最高位は第1戦富士の6位という結果でシーズンを終えた。

 10月31日に行われた第7戦『JAF鈴鹿グランプリ』決勝では、オープニングラップで坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)を先行、3周目のスプーンカーブで宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が単独スピンを喫すると14番手に浮上した。

 続けて国本雄資(KCMG)をかわし、さらにポールスタートの松下信治(B-Max Racing Team)がスタート違反によりドライビングスルーペナルティを消化すると、6周目には12番手までポジションを上げた。

2021スーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)

「実質的に抜いたのは2台くらいだったのですけど、序盤からクルマは2021年のなかで言えば調子がよく、手応えは感じていました」とレース序盤を振り返る山本。

 10周目を迎えピットウインドウがオープンとなると、チームメイトの大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が11周目にピットへ。山本はその翌周の12周目にピットインを敢行。後半には、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、大湯をかわし10番手までポジションを上げた。

「大湯選手が前だったので、大湯選手が先にピットに入って、次の周に僕を入れてもらって、アンダーカットじゃないですけど、そこで比較的タイムを稼いだことで、さらにポジションをあげることができたのかなと思います」

「後半も大湯選手、阪口選手を抜けたということで、順位は低かったですけど、久しぶりにちゃんとレースができたなという感じはあります」

 チェッカーまで10番手を守った山本だったが、9位チェッカーを受けた牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に5秒加算ペナルティが課せられたことで最終結果は9位となった。決勝は2021年で1番マシンの調子がよかったと語る山本は、決勝日朝にウエットコンディション下で行われたフリー走行では最速タイムをマークしていた。

「(前日の予選から)クルマのセットアップは変えましたが、根本的なベースというものは変えていません。そういうところにもクルマの調子に多少なりとも影響があるのでしょうけど、個体差的な問題だったら、どのコンディションでも速くは走れないだろうと思います。第6戦もてぎのウエットもそうですし、今回の日曜フリー走行のウエットもそうですけど、速く走れるタイミングはあるので、何かを見落としている可能性がある、というのは感じています」

「決勝前のウォームアップでも少し気になるところを見つけたので、それを変えたら結果的に2021年で1番戦えるような状況に持っていくことができたかなと思います。ただ、まだ終わったばかりですので、それが不調の原因だったかどうかはまだはっきりとはわからないので、もう少し時間をかけて分析したいですね。でも、最終戦は現状の持てる力を出しきれたのかなと思います」と山本。

2021スーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)

 改めて、1年を通して苦しみ続けることとなった2021年シーズンを振り返った思いを尋ねると「ひとことで言えば『こんなはずじゃない』というのが本音です」と山本は悔しさを滲ませる。

「それは僕だけじゃなくてチームのみんなも同じだと思います。期待して僕を迎え入れてくれたのに、その期待にまったく答えられてなかったと思うし、ずっとうまく……自分の感覚とマシンを合わせることができなかった。その感覚を合わせようといろいろと頑張ったし、チームも頑張ってくれたのですけど、なかなか理想通りに動かなくて。それを最終戦まで引きずってしまったという感じですね」

「ただ、最後の最後に本当に少しですが、手がかりになるようなきっかけが見つけられたかなと思います。正直、ここが2021年のスタートじゃないといけなかったと思いました。2022年の体制はまだ発表されていないですけど、また同じ体制でチャンスがもらえるのであれば、このまま終わるわけにはいかない。またカーナンバー1を着けたいと思うし、僕も、チームも、みんなで強くなって、2022年シーズンを戦いたいなと思います」

 苦戦が続いた2021年シーズンも、最終戦でようやく復調の手がかりを見つけられたと語った山本。苦しみ抜いた1年を経て、さらに強さを増した3度の王者の走りからは、2022年シーズンを占う意味でも、12月に開催される合同テストから目が離せない。再起をかける山本の2022年シーズンはすでに始まっている。

第7戦鈴鹿を制した福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を称える山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)
山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)

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