広告市場2桁回復。巣ごもり需要でネット広告へシフト加速。動画広告、ブランド向上系出稿が増加傾向

 近年、インターネット広告は急激に拡大し、2019年には電通の広告費ベースの推計で2兆円を超えテレビ広告を抜いて最大の広告市場となった。20年は新型コロナ感染症の流行の影響で一時的に広告出稿の抑制がみられたものの秋以降は回復傾向となり、伸び率は鈍化したもののプラス成長を維持したようだ。コロナ禍での外出自粛等の影響によるEC購買の増加や動画視聴の拡大の影響でインターネット広告へのシフトはさらに加速し、動画広告の拡大など、その広告フォーマットについてもコロナ禍の影響を受け大きく変化しているようだ。

 10月28日、矢野経済研究所が「インターネット広告市場に関する調査(2021年)」の結果レポートを公表しているが、これによれば20年度のインターネット広告市場の規模は出稿額ベースで2兆1290億円と推計され、前年度に比べ107.4%の増加と伸び率は鈍化したもののプラス成長となった。21年度はコロナ禍でのネット通販利用の拡大などを背景にインターネット広告へのシフトも加速すると見込まれ、市場規模は2兆4370億円、前年度比114.5%の2桁の成長となる見込みだ。

 注目すべきは、コロナ禍での外出自粛に伴い動画視聴者数が拡大傾向となっており、これに伴い広告フォーマットとして動画広告が増加傾向となっているようだ。YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォームが急成長しており、動画広告の媒体が増加していることも動画広告市場拡大の背景として指摘されている。さらに、5Gなど通信環境の進化により動画コンテンツの提供速度や品質も向上してきていることから、企業やサービスのブランド向上を目的とするブランド系広告主の出稿も増えているとみられている。また、テレビCMからインターネットの動画広告にシフトする広告も増えており、デバイスをまたぐ視聴者の増加も見込まれ動画広告はさらに拡大する見通しだ。

 中長期的にはAIを活用した広告運用手法などDXの進展に伴い、他の媒体からインターネット広告へのシフトがさらに加速するとレポートでは見込んでいる。また、ソーシャルメディア広告や動画広告などの運用型広告の拡大も見込まれ、レポートは24年度のインターネット広告の市場規模を3兆2740億円まで拡大すると予測している。コロナ禍での人々の行動変容が広告市場の構造も大きく変容させているようだ。(編集担当:久保田雄城)

矢野経済研究所が「インターネット広告市場に関する調査」。2021年度の市場は2兆4370億円、前年度比114.5%見込み。巣ごもり需要を背景にネット広告へのシフト加速。動画広告が増加傾向。

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