新庄監督がど派手会見で明かした“真面目な野球観” 作戦、全員競争、重要なメンタル

就任会見に臨んだ日本ハム・新庄剛志新監督【写真:荒川祐史】

早期理解のため、選手に「本にして渡そうかな」

日本ハムの新庄剛志監督が4日、札幌市内で就任会見を行った。「日本ハムを変えていくし、僕がプロ野球を変えていきたいという気持ちで帰ってきました」と語り、独自の野球観を披露。自身の考えを本にまとめて、選手に渡すプランを明かした。

「優勝を一切目指さない」「試合中にインスタライブができたら最高」と仰天の“新庄節”で注目を集める一方、野球に対する真摯な思いも口にした。プロ野球界で変えていきたいのは、まず作戦面。「ヒットを打たなくても点をとれるとか、作戦面の面白さ、こんなやり方があるんだというものを発信して、他球団に真似されるようになっていけば。考えるのは楽しいし、行動、成功した時のうれしさはたまらない」と頭の中にはたくさんのアイディアが渦巻いている。

ただ、実際に“新庄マジック”を実行するのは選手だ。「僕の考えを把握して、ついてきてくれないとできない」と新庄野球の早期理解を求めた。そのために本を書く。「早く選手にインプットしてもらうために、自分の考えというものを、野村さんじゃないけど本にして渡そうかなと。本を読んで新庄剛志というものを早く知ってくれ、という風に渡したい」。阪神時代の恩師である故野村克也氏が書いた“ノムラの考え”ならぬ“シンジョウの考え”の執筆に取りかかる。

メディアを通じて、選手に熾烈な競争スタートの合図も送った。「全員がドラフトにかかった選手と思っている。レギュラーなんか1人も決まっていない。キャンプで伸びたら、若い選手で固めるかもしれないし、開幕投手も決めていない。そういう争いをどんどんさせたい」と競争をあおった。

「顔と名前は全く知らない」けど「プレーはしっかりインプット」

監督のオファーを待っていたこの1年、12球団の選手をじっくり勉強してきたという。日本ハムの選手について「選手の顔と名前は全く知らない」と言った後で、こう付け加えた。「プレーはしっかりインプットしている。だから、キャンプで顔と名前とプレーの答え合わせをして、いいチームをつくっていきます。(スタート)ラインはみんな一緒」と先入観なくキャンプに臨む。

オフの過ごし方についても注文をつけた。「キャンプに入る前、スタートラインに立った時にはほぼレギュラーは決まっていると思います。だから、オフシーズンに自分でいろいろ考えて、体をつくって、頭の中をアップデートして、このラインに立って。厳しくなると思います、僕がやってきたので。そういう気持ちでオフシーズンを過ごしてください」とカメラに向かって熱く語りかけた。

選手育成にあっては、人間性重視を掲げた。「人間性は大事。人の悪口を言わない、いただきます、ありがとうございましたと言える選手を育てたい。プライベートの生活は後に役立つよと教えていきたい。プレーはみんなすごくうまい。きっかけさえつかめば、ドカーンといくと期待しています」。現役時代に可愛がっていた森本稀哲氏が成長した具体例を挙げながら、人間教育への思いを語った。

型破りな新監督は、メンタルコーチと外野守備コーチも兼ねることになりそうだ。「プロの世界、レベルはほぼ一緒。自分はメンタル面に関して引き出す力があると思う。鍛えながら、投手3人、野手4人、タレントをつくり上げていけば楽しいチームになる」と選手のモチベーションアップを担う。さらに稲葉篤紀GMに「GM兼左打者専用の打撃コーチをしてください」とお願いし、「僕も監督兼外野守備コーチという気持ちでやるので」と約束した。

北海道移転後の輝かしい歴史を築いた新庄監督と稲葉GMがこれだけの情熱を持って直接指導にあたれば、選手の目の色も変わるはずだ。「なんでもトライするチームにしていきます」と力強く宣言して幕を開けた新庄劇場から目が離せない。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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