国内外の注目ギャラリーがコラボレーション。Art Collaboration Kyotoが開幕

「現代アートとコラボレーション」をテーマに今年初開催となるアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」が11月5日、国立京都国際会館で開幕した。会期は7日までの3日間。

当初、2月開催の予定だったがコロナ禍の緊急事態宣言を受けて延期となり、このたび念願の開催となった同フェア。国内外全53軒のギャラリー展示に加え、京都に様々なかたちで関わりのあるアーティストの特別展「Beyond Kyoto」やサテライト展も開催し、現代アートにフォーカスするアートフェアとしては日本最大級のものになっている(参加ギャラリーはこちらから)。

Art Collaboration Kyotoの会場 撮影:表恒匡

日本にはいくつかのアートフェアがあるが、ACKがほかともっとも異なる特徴は、日本国内のギャラリーがホストとして、日本国外に本拠地のあるギャラリーをゲストに迎え、ブースを共有して出展するセクション「Gallery Collaborations」があること。

たとえば、ANOMALY(東京)はBlum &Poe(ロサンゼルス)、アートコートギャラリー(大阪)はULTERIOR(ニューヨーク)、MISAKO & ROSEN(東京)はFortes D’Aloia & Gabriel(サンパウロ)など、世界のギャラリーを迎え入れ、ひとつのブースをシェアして展示するスタイルを取る。それらギャラリー同士のつながりは「作家を通して知り合った」「その国の文化に興味があったので知人にギャラリーを紹介していただいた」「ディレクターが昔からの友人」など様々だ。

会場風景より、ANOMALY(東京)+Blum & Poe(ロサンゼルス)のブース
会場風景より、TARO NASU(東京)+Esther Schipper(ベルリン)のブース

「今回、コラボレーションを通して異国の新しい作家を知ることができた。コロナ禍で国際展も少ないいま、フェアを訪れる鑑賞者の方々にとっては、国際的な動向を大規模なかたちで見ることのできる貴重な機会だと思います」と話すのは、銀座のギャラリー「THE CLUB」マネージングディレクターの山下有佳子。THE CLUBは新進気鋭のアーティストを紹介するKavi Gupta Gallery(シカゴ)とコラボレーション。コア・ポア、インカ・エッセンハイの作品がブースに並ぶ。

会場風景より、THE CLUB(東京)+Kavi Gupta Gallery(シカゴ)のブース

建築家・周防貴之が空間デザインを行う会場は、様々なサイズの展示ブースが一見ランダムに分散するかたちで配置。それぞれのブースはほかのブースから切り離されており、展示が干渉し合わないように工夫されている。このブースについて「ほかのフェアにはないスタイル。作品を集中して見られるのが良い」と話すのは、小山登美夫ギャラリー代表でACK共同ディレクターも務める小山登美夫。今回、ニューヨークを本拠地に表参道にも支店のあるファーガス・マカフリーとコラボレーションしている。

ファーガス・マカフリーをはじめ、今回が日本のアートフェアへの初参加となるギャラリーは大多数であり、日本初紹介の作家を多く知ることができるのも醍醐味だ。

会場風景より、小山登美夫ギャラリー(東京)+ファーガス・マカフリー(ニューヨーク)のブース
会場風景より、小山登美夫ギャラリー(東京)+ファーガス・マカフリー(ニューヨーク)のブース

主要都市でありながらも現代アートのギャラリーが少ないと言われる京都だが、本フェアには5軒のギャラリーが参加している。そのなかの1軒、FINCH ARTSは批評家・紺野優希をアドバイザーに迎えソウルのアーティストランスペース、SPACE Four One Threeとコラボレーション。FINCH ARTS代表の櫻岡聡は「私自身がアジア圏の美術の流れを知りたかったのと、なかでも日本と韓国の美術史の同時代的な動きと接続したかった」とコラボレーションの理由を明かす。黒宮菜菜、西太志、ジョン・フィス、シム・ヘリン、イ・スンチャンら同年代のアーティストたちの傾向と違いを見取るのも楽しい。

会場風景より、FINCH ARTS(京都)+SPACE Four One Three(ソウル)のブース

国内よりも国外フェアへの参加の目立つNANZUKAも、今回はニューヨークの人気ギャラリーPetzelとともに出展。安部貢太朗、佃弘樹、山路紘子、ピーター・スクールワース、ニコラ・タイソン、サラ・モリスの作品が一堂に会する。
NANZUKAディレクターの南塚をはじめ、会場となる国立京都国際会館の魅力に触れる者も少なくない。じつは同会館は、丹下健三の片腕としても知られる建築家・大谷幸夫の設計によるモダニズム建築の代表作。日本古来の合掌造り様式と現代的建築様式が融合し、池と木々からなる日本庭園もあるが、今回のフェアはこの建築の魅力を知る機会でもある。

茶室へ続く道
会場となる国立京都国際会館
会場風景より、NANZUKA(東京)+Petzel(ニューヨーク)のブース
会場風景より、NANZUKA(東京)+Petzel(ニューヨーク)のブース

岩倉川が流れる景色を楽しみながら本館とイベントホールの連絡通路を歩けば、その先にはサテライトプログラムのひとつ「ひとのうしろにかくれてあるもの ─あらかじめ備え付けられたわたしとの邂逅」が。TARO NASUディレクターの那須太郎キュレーションの本展では、カール・アンドレ、ロバート・バリー、アンジェラ・プロック、ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス、ライアン・ガンダー、ダグラス・ヒューブラー、ローレンス・ウィナー、イアン・ウィルソンらが参加。

「ひとのうしろにかくれてあるもの ─あらかじめ備え付けられたわたしとの邂逅」展会場風景
「ひとのうしろにかくれてあるもの ─あらかじめ備え付けられたわたしとの邂逅」展会場風景より、ライアン・ガンダー《主観と感情による作劇》(2016)

さらに、イベントホールを出て日本庭園へと進むと、宝ヶ池畔に佇む茶室「宝松庵」では特別展「Beyond Kyoto」が開催。イベントホールでは金氏徹平 × 森千裕、SIDE CORE/EVERYDAY HOLIDAY SQUAD、田中功起、ヒスロム、宮島達男が、この茶室では金氏徹平、SIDE CORE、染谷聡という京都ゆかりのアーティストたちが集結。金の精錬から製作、販売、買取までを一括で行う株式会社SGCとコラボレーションし、金を素材とした新作も披露されていた。

「Beyond Kyoto」展会場風景より、染谷聡《ちぢみ絵/漆と金♯2》(2021)
「Beyond Kyoto」展会場の茶室「宝松庵」
「Beyond Kyoto」展会場風景より、金氏徹平《Mellow Gold♯2》(2021)

4日に行われたオープニングセレモニーで、プログラムディレクターの金島隆弘はフェア開催実現の感謝とともに次のように語った。「今回、行政や民間、ギャラリー、アーティストなど肩書きを超えた様々なコラボレーションができたと思います。ときに億劫にも思えるコラボレーションをなぜ行うのか? あるアーティストにその理由を聞いたら“行き詰まりや形骸化したとき、新たなスタイルを切り開いてくれるから”だと語ってくれました。ACKは今年が1回目。これから日本や京都を代表するアートフェアにしていきたいです」。

作品売買の場という性質上、画一的で無味乾燥な「展示場」になりがちなアートフェアを、コラボレーションという形式でときほぐす。王道かつオルタナティブなフェアのあり方をここでは見ることができる。

「Beyond Kyoto」展会場風景より、SIDE CORE/EVERYDAY HOLIDAY SQUADの作品
「Beyond Kyoto」展会場風景より、田中功起の作品
「Beyond Kyoto」展会場風景より、宮島達夫の作品
会場風景より、Gallery OUT of PLACE(東京)+Galerie CAMERA OBSCURA(パリ)のブース
プログラムディレクターの金島隆弘

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