「勝ち抜くイメージは描けている」井口監督がCSのキーマンに挙げた投手とは

ロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

ロッテ・井口監督のリアルな声を届ける月イチ連載・第9回

暦は11月を迎え、プロ野球では6日にセ・パ両リーグでクライマックスシリーズ(CS)が開幕する。ファーストステージでは各リーグ2位と3位のチームが3戦2勝制で対決。勝ち上がったチームは、10日から始まるファイナルステージで1位チームと戦い、先に4勝したチームが日本シリーズへ駒を進める(1位チームが1勝のアドバンテージ)。

井口資仁監督率いるロッテはオリックスと熾烈な優勝争いを繰り広げ、一時は51年ぶりに優勝マジックも点灯させたが、2.5ゲーム差の2位に終わった。リーグ優勝は逃したものの、日本一を目指し、6日からは本拠地・ZOZOマリンスタジアムに3位楽天を迎える。負けたら終わりの短期決戦を前に、指揮官は何を思うのか。その本音に迫る。【取材・構成 / 佐藤直子】

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たくさんの声援をいただきましたが、残念ながらリーグ優勝には一歩及びませんでした。開幕からみんなで頑張ってきて、141試合目で優勝が消えてしまった。正直キツい経験です。ただ、最後の最後までチーム一丸となって戦えたことは事実。そして、これが我々の今の実力だということも事実。しっかり受け止めて、また来年以降に繋いでいきたいと思います。

優勝したオリックスとは2.5ゲーム差でした。この差は、トータルで考えると先発投手陣の差だったと思います。うちの先発ローテを見ると、2桁勝利を挙げて貯金を作れたのは小島(和哉)だけでした。長いイニングを投げられて、しっかり勝てる投手は必要です。シーズン前半は先発陣が早めに降板してしまい、中継ぎ陣にかなり頼ってしまいました。後半も小島が奮闘する中、ようやく(佐々木)朗希が出てきたり、石川(歩)が復活したりしましたが、そこが課題の一つです。

当然ながら、打線もチーム打率.239(リーグ4位タイ)でしたから、もっと個人のレベルを上げる必要がある。それでも、今年のチームスローガン「この1点を、つかみ取る。」を実践し、リーグ最多得点(584点)を記録できました。マーティン、レアード以外は繋いでいくしかない打線の中で、514四球(リーグ2位)、107盗塁、106犠打(いずれもリーグ1位)と機動力を生かしながら、1試合平均4点を挙げられたのは大きかった。だからこそ、個々がレベルアップを図り、より大きな束となって掛かるしかありません。

ロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

若手6選手に命じた“秋季キャンプ”「ポジションをつかみ取るのは選手本人」

来年の話をする前に、我々にはまだCSがあります。明日から始まるCSは短期決戦なので、初回からエンジンを吹かしていかなければなりません。シーズンを振り返るとエンジンの掛かりが遅いこともありましたが、最後の20試合くらいは初回からベンチの雰囲気がすごく良かったと思います。緊張感のある中での戦いは、短期決戦の雰囲気に近く、初回の1球目からどう入っていくかが大事。優勝を逃した悔しさと合わせ、あの雰囲気を経験できたことは本当に大きかった。1試合の重み、1点の重みを、僕も含めてチーム全員が実感する中、本拠地・マリンスタジアムで迎えるファーストステージは絶対に勝ち抜いて、オリックスを叩くチャンスを手に入れたいと思います。

勝ち抜くイメージ? それはしっかり描けています。まずはファーストステージから着実に。

シーズン終了からCS開幕までの準備期間を、若手には休日返上の“秋季キャンプ”として過ごさせました。安田尚憲、藤原恭大、山口航輝、佐藤都志也、小川龍成、和田康士朗の6人です。今年はチャンスをかなり与えましたが、物足りなさがありました。もちろん、こちらが求めるレベルまですぐ到達するとは考えていません。ただ、チャンスを与えるのが我々の役目ではありますが、ポジションをつかみ取るのは選手本人。決して「はい、どうぞ」と渡すつもりはありません。今年1軍で積んだ経験を、来年どう生かせるか。それも本人次第です。

11月2日には、ちょうど若手が練習している時、戦力外になった選手たちがスーツ姿で挨拶に来ました。その光景を見て、若手のみんなは何を感じたのか。やはり結果が全ての世界です。いつかは自分が戦力外という立場になる日が来るかもしれない。若いから、期待されているから、ではなく、結果を残さなければ野球を続けることはできない。それが現実です。だからこそ、自分のポジションは自分の手でつかみ取って守り続ける=レギュラーになる必要があるのです。

CSに向けて調整するロッテ・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

6日から始まるCSのキーマンは…「佐々木朗希です」

3日には鳥谷(敬)が引退会見をしました。マリーンズで過ごした時間は2年ですが、僕は現役時代から一緒に自主トレをするなど交流があり、選手としても人間としても一目置く存在です。昨年は監督・コーチと選手を繋ぐパイプ役のような役目を果たしてくれました。決して口数が多い方ではありませんが、しっかりと姿と行動で見せてくれた。実績ある選手が元気に声を出して練習をしたり、誰よりも多い練習量をこなしたり、手本のような存在でした。今年は交流戦明けくらいからファームでしたが、いつファームに行っても変わらず声を出しながら練習をしていた。若い選手にとって一緒に過ごした時間は大きな財産になったと思います。

CSのキーマンは、初戦に先発する佐々木朗希です。シーズン後半は先発しては抹消の繰り返しでしたが、次第に週1回の先発ペースにも慣れ、かなりの安定感を見せてくれました。求めるものが非常に高く、本人も本当にいろいろと勉強している。登板したら反省点を見つけ、修正して次回マウンドへ向かう。この繰り返しで長いイニングも投げられるようになりました。7回、8回まで投げられたことは、深い自信になっているでしょう。来年はローテを1年守り抜いて、最多勝や沢村賞を狙える投球を見せてほしいところですが、まずは6日にどういうスタートを切ってくれるのか。

さあ、やり返す時間がやってきました。シーズンの悔しさを晴らせるように、チーム一丸となって日本一をつかみ取ります!(佐藤直子 / Naoko Sato)

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