米国でビットコイン先物ETFが上場、現物ETFはくる?日本で取引できるのはいつ?今後の展開を考察

ビットコインは10月に一時1BTC=760万円まで上昇し、およそ半年ぶりに史上最高値を更新しました。5月に暴落してから再び高騰するに至った要因は様々ありますが、最大のきっかけとなったのが米国におけるビットコインETFへの期待です。

ビットコインETFの議論は2017年から盛んに行われてきましたが、これまでは価格操作や詐欺などの懸念から当局に認められてきませんでした。しかし、暗号資産市場が年々拡大するなかで、今年に入ってから再び実現の可能性が高まっていました。

今年2月にはカナダで、6月にはブラジルでビットコインの現物ETFが実現し、そして10月に米国でビットコインの先物ETFが実現しました。現物と先物の違いはありますが、米国で初めてビットコインのETF商品が上場したことでビットコインの価格も高騰しました。

今回は、なぜビットコインETFが大きく期待されるのか、今後市場で注目すべきポイントについて解説します。


ビットコインETFが注目される理由

ETFとは上場投資信託のことを指します。金融機関の窓口を通じて売買の手続きをする通常の投資信託とは異なり、ETFは取引所に上場しているため証券口座を通じて投資家が任意に売買することができます。つまりビットコインETFとは投資家が株式などと同じ形でビットコインに投資できる金融商品になります。

一般にビットコインをはじめとする暗号資産に投資するには暗号資産取引所で専用口座を開設するか、あるいは個別のウォレットを用意する必要があります。前回のコラムでも紹介しましたが、これらによって暗号資産を自ら管理するためには秘密鍵の仕組みについて理解しなければなりません。

個人投資家であれ、機関投資家であれ、秘密鍵を管理する際には相応のセキュリティ対策が求められます。多くの場合、個人投資家は取引所を利用し、機関投資家はカストディアンに資産を預けることでその手間を省いています。こうした管理コストの問題を理由に暗号資産投資に踏み出せない人は数多くいることでしょう。

ところがビットコインETFであれば現物を自分たちで管理することなく証券口座を通じて気軽に売買することができます。暗号資産に特有の問題である秘密鍵云々の話を考えずに、ビットコインの値動きだけに注目して投資することができます。

また、ビットコインETFは金融商品としては上場株式等と同じ扱いになるため、通常に比べて税負担も軽くなることがあります。もし仮に日本でそれが実現した場合には、総合課税(最大税率55%)ではなく分離課税扱い(税率20.315%)になります。

このようにビットコインETFをきっかけにより多くの投資家がビットコインに投資することができるようになり、それに伴ってビットコインの価格が上昇していくと期待されています。

本丸は“先物ETF”ではなく“現物ETF”

今回米国で初めて承認されたのはビットコインの先物ETFでしたが、本来期待されているのはビットコインの現物ETFです。これは現物ETFの場合にはビットコインの現物需給に影響が及びやすいためです。また、ビットコインと比較される金の価格が現物ETFの実現(2004年11月)をきっかけに高騰したためです。

米国証券取引委員会(SEC)はビットコインの現物ETFについて投資家保護が不十分であるとの理由から未だに慎重な姿勢を示しています。先物ETFの場合には商品先物規制によって市場を監視する仕組みがありますが、現物ETFの場合には価格操作や詐欺などを防ぐ仕組みが確立されていません。

しかし、米国では先物ETFの承認を受けて現物ETFの議論が前進することは間違いないでしょう。大手金融機関が暗号資産のカストディサービスを提供するような動きもあり、現物ETFにおける資産管理の部分については他のアセットクラスと同様の態勢が整備されつつあります。

先物ETFだけを見ても第一号が承認されてから新しい動きが出ています。ビットコインの先物価格に連動するシンプルなものだけではなく、レバレッジ型やショート型などの先物ETFが新たに申請されており、今後はビットコインの先物ETFの商品性が多様化していくことが予想されます。

SECはビットコインの先物ETFの運用状況を注視しながら現物ETFの可能性を見極めていくことでしょう。

日本ではいつ取引できるようになる?

最後に、日本におけるビットコインETFの動きについてです。日本では米国と違って暗号資産のカストディサービスを提供する業者もおらず、独自にビットコインETFが誕生することは今のところ考えづらい状況です。そのため、米国で承認されたビットコインETFが日本に上陸するかどうかが注目されます。

通常、日本の証券会社等が海外ETFを取り扱う際には金融庁の承認を受ける必要があります。先ほど触れた金の現物ETFについても日本で取引できるようになったのはおよそ4年後のことでした。そのため、米国で承認されたビットコインの先物ETFについてもおそらく数年単位のズレが日米で生じると考えられます。

しかし、米国におけるビットコインETFの進展を受けて、日本当局の暗号資産に対する姿勢に変化が生まれる可能性はゼロではありません。現行の規制では金融機関が暗号資産を預かることは禁止されています。しかし、それが見直されるなどの動きが出てくれば、日本の暗号資産市場でも明るい話題が増えてくるでしょう。

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