「母を返して、愛を返したい」被害者の娘が涙の陳述 那覇強盗殺人

 いつも穏やかで優しい母がなぜ命を奪われなければならなかったのか―。那覇市具志のゲーム喫茶店で従業員2人が死傷した事件で、亡くなった女性=当時(47)=の家族が被害者参加制度を利用して公判に参加した。4日に意見陳述した女性の次女(23)は「母を返して」と法廷で涙ながらに訴えた。
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 昨年5月25日。仕事中に姉から何度も着信があった。電話を取り、母が事件に巻き込まれたかもしれないと知った。豊見城署に駆け付けると遺体安置室に通された。母の首や頬には血のにじんだタオルが掛けられ、苦しそうな表情だった。

 女手一つで3人の子を育てるため仕事を掛け持ちし、早朝から深夜まで働いていた。事件があった店では、4年ほど前から働いていた。どんなに苦しいことがあっても人の悪口を言わず「3人の子どもがいるから私は幸せ」と言い切った。「私たちもそう教えられてきたはずなのに、犯人への強い憎しみは生涯消えることはありません」

 遺品整理をしていると、母の日に贈ったプレゼントに添えたメッセージカードが財布の中から見つかった。プレゼントの電化製品は開封されていなかった。

 事件の約1年前、母と姉は大阪旅行をした。同行できず「楽しんで」と送金したところ、2人でハリネズミカフェに行って喜んでくれた。その時に撮った写真が遺影になった。「たくさん愛をくれた分、もっと愛を返したかった」

 旅行しよう、同じスマートフォンに機種変更しよう…。約束を果たせないまま、家族の日常は破壊された。声を振り絞り、陳述をこう締めくくった。「私たちの母を返してください。そして、母と過ごせたはずの私たちの人生を返してください」

 
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