前市議の”挑戦” 衆院選長崎4区 無所属・萩原氏 全てを投げ捨て訴えた思い

演説する萩原氏。「県北を変えよう」と訴え続けた=佐世保市内

 衆院選長崎4区は自民党前職がわずか400票足らずの僅差で勝ち、立憲民主党新人も比例復活する大激戦となった。その陰で、無所属の萩原活(ひろし)(61)はひっそりと落選した。公示直前に出馬表明し、与野党一騎打ちとみられていた選挙戦に割って入った。2期目だった佐世保市議を辞め、自民を離党し「全てを投げ捨てて」の挑戦だった。彼はなぜ出馬したのか。選挙で何を訴えたのか。12日間の戦いを追った。
 公示日の10月19日午後1時ごろ、同市俵町の事務所前で「必勝」の鉢巻きを締めた萩原はマイクを握り、声を張り上げた。「皆さんの1票が県北を変える。変えるのは今だ。絶対に投票に行ってください」
 6月まで党佐世保支部幹事長を務め、今回8選を目指した北村誠吾(74)を支える立場だった萩原。北村が地方創生担当相に就任した時には「もう一度国政に押し上げよう」とも話していた。その思いを裏切るかのように、北村は不安定な国会答弁や失言で批判され、県議との公認争いを招いた。萩原は次第に、党への不信感を強めていった。
 このままでは立民の末次精一(58)に自民の議席を奪われるという危機感を抱いた。長引く公認争いに有権者が愛想を尽かし、投票率が下がるとも感じた。「自民への批判票の受け皿に自分がなれないか」。周囲からは「出たらつぶされる」と警告されたが、決意は揺るがなかった。衆院解散の2日前、立候補を正式表明した。
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 「大きなゾウに、小さなアリが挑む構図。でも、絶対に勝たなければいけない」。限られた時間で準備し迎えた選挙戦。演説では「県北を変えるのは今。変える勇気を持とう」と呼び掛けた。ただ北村や自民を名指しで批判することは一度もなかった。真っすぐに、自分の思いを訴え、最終日まで駆け回った。
 若い世代を中心に多くの声援を受け、勝利への手応えは十分にあった。戦い終え、スタッフ一人一人と握手を交わし、側で支えてくれた妻の手も力強く握って感謝を伝えた。「みんなには頭が下がる思い。涙が出たよ。僕はそんなに強い男じゃないから」
 投開票日。萩原は事務所で、支持者ら十数人と開票状況を静かに見守った。北村と末次の接戦が報じられる中、自身の当選がないと悟り、午後11時すぎに席を立った。「力不足でした。すみません」。そう言って頭を下げると、温かい拍手が送られた。
 「出馬を後悔していないか」。記者の質問に萩原は即答した。「していない。このままでは4区はだめだと、みんな気付いたと思う。自民党も変わらないといけない」。自分の得た票は北村から奪ったのではなく、末次に流れるのをつなぎ留めたとみている。
 日付が変わっても、テレビは接戦を伝えていた。結果を見届けることなく、萩原は事務所を後にした。数時間後に判明した得票数は「1万6860」だった。
=敬称略=

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