ホンダF1田辺TD会見:メキシコでは優勢が予想されるも「ここまで絶対優位のレースはなかった」と慎重な姿勢を崩さず

 今週末のF1第18戦メキシコGPが行われるエルマノス・ロドリゲス・サーキットは、2017、18年にマックス・フェルスタッペンが2勝を挙げ、レッドブルが強さを見せてきたサーキットだ。さらにホンダと組んで初めて臨んだ2019年のレースでは、フェルスタッペンが予選最速タイムを出している。空気の薄いここでは、高効率の今季のホンダ製ターボがさらに威力を発揮するはずだ。ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターも、前戦アメリカGPでの勝利を受け、「今回はペレスの母国で、スタッフの士気も高い」と期待を寄せる。

 しかし一方で、「今季は絶対優位の展開はない」と、決して楽観的になってはいない。ホンダF1が1965年に初優勝を遂げた地で自分たちにできることは、「持てる性能を100%引き出すことだけ」と、決意を新たにしていた。

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──ここから今季最後の3連戦が始まります。

田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):距離も時差も大きく、大変なレースが続きます。ホンダF1としては今まで以上に気を引き締めて、1戦1戦大切に戦っていきたいと思っています。

──今週末のレースの特徴は?

田辺TD:なんと言っても標高2300mの高地にあるということですね。パワーユニットにとっては空気が薄いために仕事量が増え、冷却効率も落ちる。ですが過去の経験も活かして、対応は取っています。一方で車体側は、空力効率が落ちるということですね。

 前戦アメリカGPでは(マックス・)フェルスタッペンが優勝、さらに(セルジオ・)ペレスも表彰台に上がることができました。シーズン終盤に向けて、今回もできるだけ多くのポイントを獲得できればと願っています。ペレスの母国ということで、スタッフみんなの士気も非常に高いですね。

2021年F1第17戦アメリカGP表彰式 左から2位ルイス・ハミルトン(メルセデス)、優勝マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、3位セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)、ホンダF1山本雅史マネージングディレクター

──アメリカGP後は、ロスにいらっしゃったのですか?

田辺TD:はい。HPDを訪問しました。私も以前駐在していた、ホンダアメリカのモータースポーツ活動の拠点です。インディカーを含め、今後はアメリカも電動化の波が来るということで、F1で培った技術の交流を深めようと。そのためHRD Sakura、英国ミルトンキーンズのメンバーも同行しました。かつてのメンバーとも旧交を深めたりして、そこから直接メキシコに入りました。他のメンバーの多くは、英国に戻っています。

──ホンダF1の活躍については何か言われましたか?

田辺TD:みんな注目しているし、「いいレースをしているね」と喜んでくれています。結果のみならず、内容も含めてですね。一方HPDもインディ500に勝ち、ドライバー、マニュファクチャラータイトル合わせて3冠を獲った。そこは私からも、祝福させていただきました。

──今季はターボも改良されてますが、メキシコでの手応えは?

田辺TD:ICEとともにターボにも手を入れて、効率も上がり、性能も向上しています。ですので悪くはないと思っています。ただ競争ですから、他メーカーがどこまで改良しているか。高地に向けての彼らの対応もまだ見えていません。いつもながらですが、走ってみないとわからないですね。

2021年F1第17戦アメリカGP セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)

──ここはレッドブル・ホンダが強いと予想されていますが、以前のような優位性が今年も保てるとは思っていない?

田辺TD:今季ここまでの戦いを見ても、絶対優位のレースはありませんでした。コース特性だったり、週末のコンディションだったりで、戦闘力はレースごとに変わっている。過去優位だったからといって、そこはわかりません。

──メキシコはホンダ初優勝の地です。そのことに特別な思い入れはありますか?

田辺TD:ホンダでF1をやってる以上、今の我々が想像もつかないような1960年代の困難な時期に海外に出て戦い、最初に結果を残したのがメキシコだった。そこはいつも意識しています。かと言って具体的に何ができるかといえば、しっかり準備してミスなく、高地という難しい状況で、持てる性能を100%引き出すことだけです。そう思っています。

2021年F1第18戦メキシコGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2021年F1第18戦メキシコGP セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
2021年F1第18戦メキシコGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第18戦メキシコGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

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