ポルシェLMDhは年内ロールアウトを目指し「タイトだが予定どおり」に開発中。ドライバーには“中国の新星”も検討か

 ポルシェのモータースポーツ部門の新しい責任者であるトーマス・ローデンバッハによれば、ポルシェは2021年末までにLMDhカーをロールアウトするというスケジュールを依然維持しているという。

 2023年にWEC世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の双方でトップレベルのプロトタイプレースに復帰する予定のドイツメーカーは、2021年のクリスマス前までに、まだ名前の付けられていないLMDh車両のシェイクダウンを目指している。

「それは現在もなお、我々の計画である」とローデンバッハは11月2日のリモート取材で明らかにした。

「スケジュールはタイトだが、我々はまだそれを目指している」

 マルチマチックと協力して製造されているこの車両は、ローデンバッハによれば「極めてタイトな」スケジュールとなっているが、内部的な期限に対しては「良好な状態」で間に合うという。

「LMDhは複雑な構造を持つ。なぜなら、我々には(シャシー)マニュファクチャラーが必要であり、そこには共通部品も、我々独自の部品もあり、またペンスキーというパートナーもいるからだ」とローデンバッハは説明する。

「このように構造化された組織となっているため、『最も簡単な方法』にはなっていない。これはチャレンジングではあるが、我々は良い道筋をたどっており、予定どおりにそれを達成することができるだろう」

 シェイクダウンの場所に関する決定はまだ確定していないものの、ローデンバッハはそれがレーストラック(サーキット)で行われる可能性を否定した。

「まったくの新車の場合、適切なシェイクダウンと適切なロールアウトを行うべきであり、最初からいきなりレーストラックへと行くべきではない」

「我々がクルマをセットアップする際、最初のステップはいつも適切なロールアウトだ。バイザッハや他の場所でそれを行うかもしれないが、まだそれは決定されていない」

「すべてのシステムが正しく機能しているかどうかを確認し、セットアップを実行し、キャリブレーションを行うなどといったことのため、何らかのロールアウトが必要となる」

「それはパフォーマンステストではない。すべてのシステムをきちんと機能させるためのものだ」

■2023年からカスタマーへの供給も予定

 この10月より、ポルシェ・モータースポーツのバイス・プレジデントの座をフリッツ・エンツィンガーから引き継いだローデンバッハは、LMDhが立ち上がる年から、WECとIMSAの両シリーズのチームに、カスタマーカーを提供することを予期していると語っている。

 しかし、少なくとも最初の1年(2023年)は、現在の(カスタマーから寄せられている)需要を満たすことができない可能性が高いと、彼は示唆している。車両の価格についても、いまだ決定されていない。

「我々は、少なくとも一定数のカスタマーが2023年にプログラムを開始できるようにすることを、明確に計画している」とローデンバッハ。

「我々はまだクルマの開発段階にあり、カスタマーと同時にファクトリー・プログラムも開始するため、容易なものではなく、我々にとって課題となっている」

「彼らカスタマーは、ファクトリーチームと100%同じクルマ、同じ可能性を手にする。それは明らかだ」

「我々の目標は、2023年に明確にそれを狩野にすることであり、それは実現可能なはずだ。そして2024年、我々のクルマを購入したいという人々がいる場合は、さらに多くのカスタマーを持つことになる」

■ドライバー決定はまだ先。“中国の新星”の起用も検討か

 ローデンバッハはドライバーラインアップ発表のタイムフレームについては詳細を明らかにしておらず、「まだ少し時間がかかる」ことを認めている。

「我々はドライバーのラインアップ決定に取り組んでいる」と彼は言う。

「誰がドライバーになるかを言うには、少し早すぎる」

「我々は常に、すでに我々とともにいるドライバー、我々が育てた若いドライバー、そしておそらくは外部からやってくるドライバーとを、組み合わせようとする。良い組み合わせを作ることが、非常に重要だと思う」

 今季、アジアン・ル・マン・シリーズとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズの双方でLMP2タイトルを獲得し、ポルシェモータースポーツ・アジア・パシフィックのセレクテッド・ドライバーとして最近契約したイーフェイ・イェについて尋ねられたローデンバッハは、この中国の新星が(LMDhドライバーの)議論の一部になる可能性があると述べている。

「彼がセレクテッド・ポルシェドライバーとして選出されたという事実は、彼にはポテンシャルがあると我々が考えていることを示している」とローデンバッハ。

「これが何につながるのかを語るのは、私にとって時期尚早だ。我々には大きな歴史があり、若手ドライバーを育成する範囲も広い」

「ワンメイクシリーズに始まり、その後は(911)GT3 Rに乗り、RSRまたはLMPまで上り詰めるといったドライバーを見るならば、それは想像できることだ」

「だが、彼が間違いなくLMDhに乗ると言うには、まだ早すぎる。我々に中国人ドライバーが加わるのは良いことだと思うので、ぜひ見てはみたいね」

「(ドライバーラインアップが)国際的であることは、常に良いことだ。私はそうなるのを見てみたいが、結局はドライバーは速くなければいけない。彼のパフォーマンスを確かめる必要がある。個人的には、彼がうまく成長していくことを願っているし、それ(LMDhドライバーになること)が起こるだろうと想像することができている。ただし何の保証もない。常にパフォーマンスが重要だ」

ロバート・クビサ、ルイ・デレトラズとともに、2021年のELMSを制したイーフェィ・イェ

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