元ロッテ守護神・小林雅英氏が分析するパCS 「独特な雰囲気でどういう投球をするか」

6日のCS初戦に先発するロッテ・佐々木朗希(左)と楽天・則本昂大【写真:荒川祐史】

V逸&4連敗で終えたロッテ「この1週間でどう立て直せるか」

セ、パ両リーグのCS(クライマックスシリーズ)が6日に同日開幕する。レギュラーシーズンでオリックスとロッテが激烈な優勝争いを演じたパ・リーグは、3位の楽天をまじえて仕切り直し。現役時代にロッテ、オリックス両球団に在籍し、日米通算234セーブを誇った野球評論家・小林雅英氏が、自身の経験を踏まえて展開を読む。

2戦先勝のファーストステージは、16年ぶりのリーグ優勝を惜しくも逃した2位・ロッテと3位・楽天の対戦。レギュラーシーズンの順位通りの結果が出るかどうかは予断を許さない。シーズンを通して大健闘してきたロッテだが、最後の4試合は全敗だった。一方の楽天は先発投手の顔ぶれが豊富で、短期決戦で強みになりそうだ。

小林氏は「最大でも3試合しかない“超短期決戦”ですから、先発投手の出来がポイントになる。1、2、3戦目を誰に、どういう順番で任せていくのか、探り合い、読み合いになるでしょう」と指摘する。

ロッテについては「シーズン終盤に圧倒的な投球を見せた佐々木朗希、チームトップの10勝を挙げた小島(和哉)、右肘の手術から復帰し終盤に調子を上げてきた石川(歩)が3戦目までに先発してくるのではないでしょうか」と予想。一方の楽天は、11勝(5敗)を挙げた則本昂大投手、4勝9敗と白星につながらなかったものの防御率3.01の安定感を誇った田中将大投手、9勝の岸孝之投手、新人ながら同じく9勝を挙げた早川隆久投手らが腕を撫している。

「佐々木朗の場合は、CS独特の雰囲気の中でどんな投球ができるか。ロッテはシーズン最後の最後まで優勝を争い、結果的に敗れたストレス、疲労を抱えていると思うので、この1週間でどう立て直せるかにも注目したい」と小林氏は言う。

ファーストステージを突破したチームは、ファイナルステージで、シーズン18勝5敗の山本由伸投手、13勝4敗の宮城大弥投手を擁するオリックスに挑む。オリックスに1勝のアドバンテージが与えられた上で4戦先勝。「ロッテが進出した場合は、美馬(学)、二木(康太)らが、山本、宮城と対等に投げ合えるくらいまで調子を上げて臨めるかどうかが鍵になる」と小林氏。ロッテの先発要員のうち、美馬は今季6勝7敗、防御率4.92。二木も5勝7敗、同4.38とやや精彩を欠いた。短期決戦で復調が期待されるところだ。

日米通算234セーブを誇った野球評論家・小林雅英氏【写真:荒川祐史】

優勝王手で迎えた2005年プレーオフ第3戦は「変な緊張感に…」

小林氏自身、現役時代の短期決戦には強烈な思い出がある。2005年、ロッテの守護神として29セーブを挙げてタイトルを獲得し、レギュラーシーズン2位でCSの前身である「パ・リーグプレーオフ」に進出した。第1ステージで3位・西武を撃破し、首位通過のソフトバンクが待つ第2ステージ(3戦先勝)へ。当時のプレーオフには、1勝のアドバンテージがなく、しかも第2ステージを制したチームが「パ・リーグ優勝」を称することになっていた。

第1、第2戦を連勝し早々と“王手”をかけたロッテは、第3戦も4-0とリードを奪って9回に小林氏が登場。優勝決定は間違いなしに見えたが、小林氏はまさかの4失点。延長10回に別の投手が打たれサヨナラ負けを喫した。

レギュラーシーズンであれば、セーブの付かない4点リードの場面でクローザーが登板することはほとんどない。小林氏は「4点差があったことで集中し切れず、変な緊張感に包まれていました。僕はシーズン中の登板に関しては相手打者、配球、結果の全てを記憶していて、シーズンが終わればリセットしていましたが、あの試合だけは記憶が所々飛んでいました。集中できていなかった証拠だと思います」と振り返る。

ロッテは第4戦も敗れ、2勝2敗のタイに持ち込まれたが、最終第5戦では3-2とリードして9回を迎え小林氏が登場。先頭打者の出塁を許したものの後続を断ち、ロッテは「僕が生まれた1974年以来の」31年ぶりの優勝を飾った。そのまま日本シリーズでも阪神を破っている。

「第5戦はプロ生活で最も印象深い登板です。第3戦で“やらかした”僕に、ああいう場をつくってくれたチームメート、任せてくれた首脳陣に感謝の気持ちでいっぱいでした。あの登板がなかったら、その後の僕の野球人生は変わっていたかもしれない」と語る。

小林氏も戸惑ったように、短期決戦ならではの雰囲気、起用法にどう対応するかが、選手個々にとって重要になる。「短期決戦では選手1人1人の熱量、出力が全然違う。ならではの表情、ガッツポーズを僕は楽しみにしているし、ファンの皆さんにも楽しんでほしいです」と小林氏。CSの存在意義について賛否両論があるが、「1年間を大きな遊園地ととらえ、レギュラーシーズンというアトラクションが終わり、また別のアトラクションが始まるのだと、選手にもファンの皆さんにも考えてほしい」と強調した。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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