逆転王座を狙う2台は明暗分かれる。Q2でミスのAstemo、2連勝に向け手応え十分のARTA【第7戦GT500予選】

 ツインリンクもてぎでは今季2度目の開催となった2021年のスーパーGT。GT500クラスの公式予選は、ヨコハマタイヤ勢がフロントロウを独占する快進撃を見せたが、一方ではチャンピオン争いをしているメンバーの予選結果にも注目が集まっている。

 ドライバーズランキングでは1号車STANLEY NSX-GTを駆る山本尚貴が首位を独走中。今回はGT500クラスのなかで、唯一燃料リストリクター制限がついていることもあり予選10番手となったが、決勝ではいつも上位に食い込んでくる強さを見せているだけに、明日もそういった展開になりそうな雰囲気だ。

 その1号車にランキング争いで対抗しそうな存在が、ドライバーズランキング3番手につけるAstemo NSX-GTの塚越広大/ベルトラン・バケット組。朝の公式練習では4番手につけ、塚越が担当したQ1でもトップと同タイムの2番手につけるなど、速さを見せていた。

 しかし、バケットが担当したQ2では90度コーナーの立ち上がりでミスが出てコースオフを喫し、1分37秒016で7番手に。しかもそのタイムは走路外走行があったとして無効となり、最終的に1分37秒484で8番手という結果に終わった。

2021スーパーGT第7戦もてぎ Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)

 いつもはフレンドリーに話すバケットだが、今日だけはコメントが少なく険しい表情をしていたのが印象に残った。

「気温と路面温度が下がったなかでQ2はすごく苦戦した。朝の公式練習は、僕が最初の走行を担当して、その時に新品タイヤを履いたけど、だいぶコンディションが変わっていたから、クルマの限界を掴むのがすごく難しかった。特に今回は、なぜか分からないけど僕にとってはすごくトリッキーな状態だった」

「Q2のアタックでは少しプッシュしすぎてしまってアンダーステアが出てしまい、コースオフしてしまった。それで結果的に8番手となった。クルマのフィーリングは悪くないけど、トップを目指すには十分ではない。そこで僕のミスも重なってしまった」

 Q1で素晴らしいアタックをみせた塚越も同様に口数が少なめで、どこか悔しそうな表情を見せていた。実は、彼が担当したアタックでもミスがあったという。

「1周目のアタックではミスがあったのでタイムを伸ばせなかったですが、2周目はミスしたところを修正しながらのアタックができたので、タイムも更新できました。2周しっかりとタイムを出せる状況にしてくれたチームに感謝したいです」

「最終的にこのポジションになりましたが、速く走れていたということは事実です。Q2でタイヤの選択が(Q1から)変わっている人たちもいたと思います。決勝ではちゃんと結果を出せるように、みんなで頑張りたいと思います。当然、あのグリッドから前に行くとなるとタフなレースになりますが、それを乗り越えれば最終戦に向けてもプラスになると思います」

「スタートからテンポ良く前にいって、上位でたくさんポイントを獲ることをやらないといけないので、それができるよう明日に向けてしっかりと準備したいです」

バケットも決勝での挽回を諦めていない様子。上位入賞を誓っていた。

「前回のレースではスタートは悪くなかったけど、結果的にポジションを落としてしまった。今回はその逆で、予選ポジションはよくなかったけど、決勝では追い上げて上位でフィニッシュできる可能性も残っている。チャンピオン争いにつながるように、少しでも多くのポイントを獲得したい」

2021スーパーGT第7戦もてぎ 塚越広大(Astemo NSX-GT)

■17号車と対称的に、好調を維持していた8号車ARTA NSX-GT

 予選を終えて悔しい雰囲気が漂っていた17号車Astemo陣営とほぼ対称的だったのが、前回のオートポリスで今季初優勝を飾ったARTA NSX-GTの野尻智紀/福住仁嶺組だ。

 今回は朝の公式練習から調子が良くトップタイムを記録。予選ではポールポジションこそ獲得できなかったが、ブリヂストンタイヤ勢では最上位となる3番手を獲得した。

「持ち込みのセットアップが、すごくレベルの高いところにいてくれたので、大きな変更がなくても、ある程度戦えるだろうなという感触がありました。その持ち込みの状態から、大きく伸ばすことはできなかったですが、同じタイヤを履いている人たちに比べて、だいぶ速かったと思うので、僕たちのなかでは今あるポテンシャルをだいぶ引き出せた方ではないかなと思っています」

「もちろんポールポジションは狙っていたので、悔しさはありますけど、明日逆転したいなと思っています」

 そう予選を振り返った野尻。いつもは険しい表情をしていることが多いのだが、今回は手応えをつかんでいる様子だった。ただ、ヨコハマタイヤ勢の決勝ペースを気にしており、そこを攻略するためにも決勝に向けてさらなる改善が必要だと語った。

「この前の第4戦でも、19号車(WedsSport ADVAN GR Supra)が最後までペースを落とさずに走っていました。実際、今日も2周連続で良いアタックをしていたので、向こうが落ちてくることはないのではないかなと思っています。しっかりと僕たちのポテンシャルを上げていかないと彼らには追いつかないかもしれないなと思っています」

「レースは終わるまで何が起こるか分かりません。決勝を終えてランキングトップとは20点差以内にいないといけないです。優勝を狙うには好位置につけることができていると思うので、明日もいつもと変わらず優勝を目指すだけです」

2021スーパーGT第7戦もてぎ 鈴木亜久里監督と野尻智紀(ARTA NSX-GT)

 Q2を担当した福住も予選を終えて手応えをつかんでいた。それだけに、ポールポジションを獲得できなかったことをかなり悔しく感じていた。

「走り始めの段階から良いポジションにいることができましたし、専有走行もトップで終えられて、流れとしては悪くなかったと思います。野尻選手がQ2につないでくれて、いろいろなフィードバックや走り方のアドバイスをもらって……そういった細かなアジャストをしたおかげでタイムを上げることができました」

「ヨコハマ勢が上位に来るのは予想外ではないですけど、自分としては走っているときの感触は悪くなかったので、ポールポジションを獲ることができなかったというのは悔しいです。でも、明日に向けては悪くない位置だと思っています」

「ただ、今日と明日は別ものです。あの(ヨコハマタイヤを履く)2台がどういうレースをするかで展開も変わるでしょうし、戦略もしっかりと考えないといけません。しっかりと明日も強く戦えるようにしたいです」

 福住は先々週のスーパーGT第6戦オートポリス、先週のスーパーフォーミュラ第7戦鈴鹿と優勝を飾っており、今週末は彼個人として3連勝がかかっている。

「あまり意識はしていないけど、もちろん狙っていきたいです。何より明日のレースで勝って、チームとファンのみなさんに恩返しをしたいという気持ちが強いので、この流れを崩さないように明日もしっかりとやっていきたいです」

 この予選を終えて、8号車ARTA陣営、17号車Astemo陣営から聞こえてきたのは「決勝では何が起こるか分からない」ということだった。チャンピオン争いに生き残るためにも、是が非でも優勝がほしい2台が、どんな戦いぶりを見せるのか。明日の決勝レースも最後まで“激戦”になりそうな予感だ。

2021スーパーGT第7戦もてぎ ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)

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