源頼朝が戦勝祈願、弘法大師が修行… 中世文書から探る江の島 藤沢で資料展開催中

江の島弁財天信仰をテーマにした資料展=藤沢市文書館

 「天女の坐(ざ)す神の島」として古くから信仰を集める神奈川県藤沢市江の島。同市内に残る中世の文書から浮かび上がる多様な「弁財天信仰」に焦点を当てた資料展「祈念の島」が、同市文書館(同市朝日町)で開かれている。

 弘法大師や日蓮が修行したと言われ、1182年に源頼朝が戦勝祈願をしたと伝えられる江の島岩屋。その管理を担った岩本院が保管している文書など約80点が展示されている。天女(弁財天)降臨に始まる「江島縁起」、戦国時代、古河公方と呼ばれた足利成氏や小田原北条家など統治者と江の島の関わり、芸能をなりわいとする人々からの信仰など、中世文書からは、神として幾つもの性格を持つ弁財天に対するさまざまな祈りが浮かび上がる。

 第4代玉縄城主の北条康成が敵襲への対応を指示した文書には、江の島が大名に属さない「公界(くがい)所」であり、敵襲があれば自衛措置をせよと命じている。北条氏を滅ぼした豊臣秀吉が江島寺に与えた住民に対する不当な行為を禁じる禁制からは、江の島の自衛意識の高さを見ることができる。

 このほか、戦国時代の連歌師谷宗牧が京都から東北へ向かう地の途中で訪れた江の島に言及した「東国紀行」、戦国時代の能楽師観世長俊が江島縁起を題材に創作した「江野島」の謡曲本、江戸幕府が岩本坊に2代将軍の徳川秀忠の病気平癒を江の島弁財天に申し向けるよう命じた書状などが並べられている。

 観覧無料、26日まで。問い合わせは、市文書館電話0466(24)0171。

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