神にも等しい最強ヒーロー降臨!『エターナルズ』はMCUの新フェーズを象徴する宇宙神話的SFファンタジーアクション

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

賛否上等!? 宇宙規模の神話的戦い

冒頭から震えがくる素晴らしいアクション・エンターテインメントでした! いや、エンターテインメント・エピックというべきでしょうか? 本作は、今までのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品の中でも賛否両論があります。僕は「賛」。しかし「否」の意見があることも理解できます。

それは、映画の出来云々ではない。これまでのMCUと比べて好きか/嫌いかで好みが分かれる作品だと思うからです。言い方を変えれば、過去のMCUとはかなり毛色の異なる作品なんですね。元々、原作となった“エターナルズ”というコミック自体が、スーパーヒーロー物ではない。宇宙の神々ともいうべきセレスティアルズによって造られた超人族エターナルズと、異形の種族ディヴィアンツの戦いを描いた物語です。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

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※以下、映画の内容に一部触れています。ご注意ください。

過去作との結びつきが少ないブランニューMCU映画

エターナルズはギリシア神話の英雄神、ディヴィアンツは悪魔や神話の怪物をモチーフにしている。そう、宇宙神話的なお話です。マーベルのヒーロー物というのは、基本的には犯罪者だろうがエイリアンだろうが、それが人々を脅かす脅威であるなら戦います。まあブレイドが戦うのは吸血鬼オンリーですが。しかし、エターナルズはディヴィアンツやセレスティアルズが絡む時に活躍するので、初期のシリーズは他のヒーローと人々を守るために共闘する、ということはあまりない。従ってヒーロー物とは一線を画するSFファンタジー物を志向していたのです。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

この映画も、そうした原作の事情・設定をうまく活かして、なぜ7000年前から地球にいたエターナルズが、今までMCUの(特にサノスとの)戦いに関与しなかったのか? をうまく説明しています。すなわちコミック同様、エターナルズの出番はセレスティアルズの命を受けたとき、人類がディヴィアンツの攻撃を受けたときだけであり、それゆえに他のヒーローたちと関わらなかった、と。しかしサノスとアベンジャーズとの戦いで、地球(というか人類)側の事情にある重大な変化が起き、再びディヴィアンツが動き出したため、エターナルズが活動を開始します。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

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他のヒーローとあえて干渉せずに存在したわけですから、当然今までのMCUとのリンクはほとんどない。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年)以上にMCU映画との結びつきは少ないのです(ただし、おお! と思うセリフがあります)。フェーズ4に入って『ブラック・ウィドウ』(2020年)は過去のMCUと結びつきが強い作品であり、『シャン・チー』は過去のMCUと新しさの絡ませ方が半々ぐらいでしたが、この『エターナルズ』は本当にブランニューな感じです。仮に、もしMARVELロゴでなくDCロゴが冒頭に出ても、すんなり観れてしまうでしょう。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

ここに違和感を覚えると、イマイチ本作に“ノれない”人が出てくるかもしれません。しかし僕は幸いにも、冒頭からハマってしまいました。神話というのは教訓じみていて登場人物も多いので、ドラマ部分の比重が多く地味な作品になるのかと少し心配したのですが、のっけからスーパーアクション! しかも話のテンポが速い。ここのツカミでワクワクさせてくれます。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

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アンジー、マッデン、ジェンマ……特に重要なキャラは誰?

そして中盤はバラバラになっていたエターナルズが集まるまでのドラマですが、キャラおよび俳優陣たちの力演もあって見応えがあります。ここで重要なのはそれぞれのエターナルズが人類をどう見ているか、が明らかになってくる。ここはディスカッション・ドラマとしての面白さがあります。そして後半、予想外の展開が。最強のエターナルズにふさわしい戦いになります。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

エターナルズの中でも最強なのはイカリス。空を飛び、目から破壊光線を発射する。MCU、いやマーベルには珍しいDCのスーパーマン・タイプの超人です。そう、今回いろいろな意味でDCを意識してるところがあるんですよね。これも新鮮でした。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

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そしてアンジェリーナ・ジョリー演じるセナ。最強の女戦士ですが、アンジーの貫禄も加わってさすがのカッコよさです。しかし、本作の事実上の主役はジェンマ・チャン演じるセルシです。彼女のやさしさ・強さこそがエターナルズの良心であり、そして彼らをヒーローと呼ぶにふさわしい存在へと昇華させています。きっとみんな彼女を好きになるでしょう。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

なお例によって、おまけシーンが2つあります。これはちょっと予備知識がいるので近いうちに解説しますが、これからのMCUに新風を吹き込みました。

それにしても、各キャラクターのスーパーパワーを活かしたバトル・シーンの素晴らしいこと。これを観て将来作られるであろう、MCU版X-MENについても期待が持てました。イカリスの“目からビーム”はスーパーマン的でもあり、X-MENのサイクロップスですからね。

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

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繰り返しになりますが、映画として面白い。けれどMCU映画としては評価が分かれる。それでいいのです。僕は『エターナルズ』を支持します。この先、エターナルズがMCUのヒーローやヴィランたちとどう関わってくるのか楽しみです!

『エターナルズ』©Marvel Studios 2021

文:杉山すぴ豊

『エターナルズ』は2021年11月5日(金)より公開中

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