終盤の接触に関するポルシェの抗議は棄却。FIA国際控訴裁判所への上訴も検討か/WEC第6戦バーレーン

 WEC世界耐久選手権のGTEドライバーズ・タイトルを決定づけた接触と、それに対する裁定に関してポルシェGTチームが提出した抗議が、スチュワードによって棄却された。同チームは現在、FIA国際控訴裁判所への上訴を検討しているものとみられる。

 ポルシェは11月6日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたWEC最終戦バーレーン8時間レースで、フェラーリとLMGTEプロクラスのタイトルをかけて争った。

 92号車ポルシェ911 RSR-19のケビン・エストレ/ニール・ジャニは、第3ドライバーとして加わったマイケル・クリステンセンとともに、AFコルセ51号車フェラーリ488 GTE Evoのアレッサンドロ・ピエール・グディ/ジェームス・カラドと同点に並んでスタートした8時間の決勝レースで、たびたび接近戦を演じた。

 残り12分、トップを走っていたクリステンセンにピエール・グイディが最終コーナーへのブレーキングで接触。92号車がスピンアウトしコース復帰に時間を要した一方、走行を続けた51号車フェラーリがリードを奪った。

 51号車フェラーリのピエール・グイディには当初、レースコントロールからポジションを戻すように指示が出たが、92号車が計画されていた給油のみのスプラッシュ・ピットへと向かうと、レースコントロールからの指令のメッセージは消去された。

 51号車も翌周にはスプラッシュを行なったが、コースに戻ってもトップをキープし、そのまま首位でチェッカーを受けている。

勝利とタイトルを失い、憮然とした表彰で表彰台に立つ92号車ポルシェ911 RSR-19のクルー

 ポルシェGTチームはその抗議のなかで、接触はスチュワード(審査委員)に報告されておらず、インターナショナル・スポーティング・コードに反する形で、WECレースディレクターのエドゥアルド・フレイタスが独断で取り扱ったものである、と主張している。

 この抗議に対する調査結果として、スチュワードはブルテンに「この事件に関わるすべての決定は、レースディレクターからスチュワードに報告された。その後、スチュワードによって審査され、レースディレクター(の判断)に合致した決定が下されたものである。これは、映像と口頭での証拠によって裏付けられた」と記している。

 これらのことから、スチュワードはポルシェの抗議を棄却するとしている。このブルテンは、レースのフィニッシュから4時間近くが経過した深夜1時45分に発行されている。

 ポルシェ・モータースポーツのバイス・プレジデントであるトーマス・ローデンバッハは「今日はポルシェ・モータースポーツにとって悲しい日だ」とコメントした。

「我々のライバルは、トップを走行していた我々のクルマをスピンさせ、勝利を得た。なぜレースディレクターが最初にペナルティを発出し、次にそれを撤回したのか理解できない」

「我々のドライバーとチームは、最大限のリスペクトを受けるに値する。誰もがフェアでクリーンなレースを8時間にわたって繰り広げ、観客に素晴らしいショーを提供した。みんなに感謝したい。あの最後の瞬間までは、このレースはモーター・レーシングにとっての素晴らしいプロモーションだった」

 ポルシェのWECオぺレーションの責任者であるアレクサンダー・ステューリッヒは、次のように付け加えている。

「残念ながら、我々はライバルによってトラックからスピンオフされた。レーススチュワードの決定を理解することはできない」

「接触後、当初は2台がポジションを入れ替えることになっていたので、トップに戻れると考えていた」

「だがその少し後、彼らは92号車のピットストップ中に、このアナウンスメントを撤回した。したがって、我々はフェアでクリーンなレースをしたにもかかわらず、目標を達成できなかった。だから我々は抗議を提出した」

 スチュワードによって抗議が棄却されたポルシェには現在、FIA国際控訴裁判所に上訴をするための96時間の猶予がある。もし上訴した場合には、バーレーン8時間レースのリザルト、およびGTE世界耐久選手権のタイトルの最終決定については、同裁判所の判断を待つことになる。

 一連の出来事について、FIAまたはACOフランス西部自動車クラブからの説明は、まだなされていない。WECはレース翌日の日曜朝にファイナルリザルトを公表したが、これには「上訴の対象となっている」と注釈が記されている。

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