阪神CS敗退の必然… 専門家指摘「3つの“永遠の課題”が凝縮されていた」

8回の攻撃が無得点に終わりうつむく阪神・矢野燿大監督【写真:共同通信社】

中野、大山のエラーが失点に直結、チーム失策数は3年連続12球団ワースト

■巨人 4ー2 阪神(CSファースト・7日・甲子園)

「2021 JERA クライマックスシリーズ セ」ファーストステージ第2戦が7日、甲子園球場で行われ、阪神は2-4で巨人に敗れ、0勝2敗で敗退が決まった。レギュラーシーズン2位の優位を生かせなかった猛虎軍団。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、「この試合に、阪神の“永遠の課題”が凝縮されていました。3つあります」と敗因を指摘した。

まずは、言わずと知れた守備力だ。この日も、失点はいずれもエラーから始まった。2点リードの3回には、先頭の吉川の平凡な遊ゴロを中野拓夢内野手がファンブル。これをきっかけに、打者9人の猛攻で3点を奪われ試合をひっくり返された。1点ビハインドの8回にも、先頭の坂本の三ゴロを大山悠輔内野手がお手玉。これがウィーラーの犠飛へとつながり、痛恨の追加点を許した。

阪神は今季まで3年連続でチーム失策数が12球団ワースト。ドラフト6位ルーキーの中野は30盗塁でいきなりタイトルを獲得し、打率.273と粘り強い打撃を見せたが、失策数はリーグワーストの17に上った。大山の10失策もチームで中野に次ぐ。

「1つ先の塁を奪う技術を磨かないと日本シリーズ進出はおぼつかない」

野口氏は「守備がうまくなるには、地道な練習以外にない」と断言。「中野の場合は、シーズン前半に失策数を稼いでしまいましたが、後半には成長の跡が見られました。あとはCSのような、ミスが勝敗を左右する大事な試合でやらかさないように、成長していってほしい」とエールを送った。

攻撃面で「チャンスはつくるのに、ここぞの1本が出ない」傾向も、ここ数年続いている。この日、7、8回以外は全てのイニングで得点圏に走者を進めながら、得点できたのは2回の1度だけ。タイムリー欠乏症は深刻である。「近本(光司外野手)、中野が出塁しても、主軸の“還すべき人たち”が機能しなかった」と野口氏は評した。

そしてもう1つ、「走塁面で、1つ先の塁を奪う技術を磨かないと、日本シリーズ進出はおぼつかないですよ」と指摘した。2回、1点を先制してなお1死二塁のチャンス。近本が右前打を放ったが、二塁走者の佐藤輝明外野手は三塁ストップ。「あの当たりで本塁に還ってこられない、ましてやチャレンジもできなかったのは寂しい」と指摘したのは一例だ。

3回1死一塁で、メル・ロハス・ジュニア外野手が右前打を放った際、一塁走者の大山が二塁にとどまったのも物足りなかった。野口氏は「言うまでもなく、一、二塁より一、三塁にした方が、得点できる可能性は広がります。ゲッツー崩れ、犠飛、バッテリーミスでも点が入るのですから。阪神が点を取れない理由は、タイムリーが出ないことだけでなく、こういうところにもあるのです」と強調した。

レギュラーシーズンでは前半に首位を独走しながら、結局ヤクルトに捲られた阪神。リーグ優勝、日本シリーズ進出までのあと一歩は、近いようでまだまだ遠いようだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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