アンドロメダ座β星に隠れている「ミラクの幽霊」 その正体と名前の由来

【▲ アンドロメダ座β星「ミラク」と、その右上に見えている楕円銀河NGC404(通称「ミラクの幽霊」)(Credit: John Chumack)】

アンドロメダ座には「幽霊」が隠れています。その幽霊は、天文学者にはよく知られた存在で「ミラクの幽霊」と呼ばれています。

しかし、幽霊とは言っても怖い存在ではありません。なぜなら、幽霊の正体は楕円銀河だからです。では、なぜ幽霊と呼ばれるのでしょうか?

通称「ミラクの幽霊」は、アンドロメダ座β星「ミラク」(Mirach)のすぐそば(地球から見て7分角の距離)に位置していて、11等級の明るさです。それに対してミラクは、アンドロメダ座α星「アルフェラッツ」(Alpheratz)とほぼ同じ明るさの2等星で、アンドロメダ座では最も明るい星です。

そのため、ふつうの望遠鏡では、まぶしさや「回折スパイク」によって、ミラクの近くにあるものは隠されてしまいます。その結果、かすかな楕円銀河は、圧倒的な星(ミラク)の光の影響で幽霊のように見えてしまう(あるいは幽霊のように見つけにくい)ことがあるのです。

冒頭の画像では、圧倒的な明るさで輝くミラクの右上にややぼやけて写っている丸い天体が「ミラクの幽霊」です。この楕円銀河は1784年にウィリアム・ハーシェル(天王星の発見などで知られる著名な天文学者)によって発見され、現在は「NGC 404」としてカタログに掲載されています。推定距離は約1000万光年。

ちなみにミラクは約200光年の距離にあり、太陽よりも低温ですが、はるかに大きく明るい赤色巨星です。

【▲ アンドロメダ座β星「ミラク」と、渦巻銀河M31(左上)M33(右下)(Credit: Malcolm Park (North York Astronomical Association))】

アンドロメダ座と言えば渦巻銀河の「M31」が有名です。また、そのお隣にある、さんかく座のM33もM31と対をなす有名な渦巻銀河です。

ミラクは偶然にもM31とM33とのちょうど中間に位置していて、M31とM33を探すためのガイドの役目を果たしています。M31は約250万光年、M33は約300万光年の距離にありますが、ミラクは200光年しか離れていないので、その位置関係は地球からの見た目に過ぎないことは言うまでもありません。

さらにNGC 404はミラクのすぐそばに見えているとはいえ、実際は約1000万光年先の遥か彼方に位置していて、時空を超えた「幽霊」とも言えるでしょう。

Image Credit: John Chumack、Malcolm Park (North York Astronomical Association)
Source: APOD (1) (2)、Galactic Images
文/吉田哲郎

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