<レスリング>【2021年全日本学生選手権・特集】無名の高校時代からチームの顔へ! 努力の4年間に悔いなし…男子グレコローマン72kg級・若原大輝(徳山大)

 

 初の山口開催となった2021年全日本学生選手権の男子グレコローマン72kg級で、2年連続西日本学生王者の若原大輝(徳山大)が健闘。3回戦で高橋大和(中大)に惜敗して上位入賞は逃したが、初戦で日体大の選手を破るなどし、「やるべきことはやったと思います」と、全力を尽くして闘った地元開催を振り返った。

若原大輝(左)の4年間の健闘を称える徳山大・守田泰弘監督=撮影・保高幸子

 上位進出をかけての一戦は、積極的な攻撃で先にパーテールポジションの好機をゲット。リフト技で2点を取ったものの、フィニッシュで失敗し、カウンターのがぶり返し3回転を受けて3-8とビハインド。4点差に縮めて再度のパーテールポジションでの攻撃は、リフト技が上がり切らずに2点を取るにとどまり、6-8で敗れた。

 がぶり返しをこらえるか、最後のリフトで4点を取れれば勝てた試合だったが、「練習不足ですね。もっとしっかり練習していれば(がぶり返しは)耐えられたでしょう。リフトは、1年生のときに比べれば上手になったとは思いますが、まだまだでした」と残念そう。

 ただ、無名の高校時代から2年連続で西日本学生王者に輝き、日体大の選手を破るまでに力をつけた過程には満足感がある。「日体大の選手は強いので、(精神面の)プレッシャーはありましたが、勝とう、という気持ちを持ち続けられました。4年間やってきてよかったと思います」と話し、やり切った表情を浮かべた。

1回戦を勝ち抜けば「すごい!」という高校時代

 中学時代までは野球の選手。プロレスが好きだったこともあって鳥取・鳥取中央育英高に進んでレスリングを始めた。キッズ・レスリング全盛期、全国のトップに行くことはできず、「1回戦を勝ち抜けば『すごい!』というレベルでした」と言う。

得意のリフト技は、2度とも4得点ならず…=撮影・保高幸子

 それでも、高校の杉谷忍監督に「大学で続ければ、まだ伸びる。頑張ってみないか」と言われ、徳山大から声をかけられて進学。大学の壁は厚く、西日本学生新人選手権は2年連続で初戦敗退。2度のJOC杯ではともに強豪高校選手に負けた。

 それでも努力を続けてはい上がり、昨年と今年の西日本学生選手権で優勝。今年の全日本大学グレコローマン選手権では5位に入賞する成績を挙げた。

 「本当によくやったと思う4年間でした」と言う。卒業で選手活動には区切りをつける予定なので、残る大会は西日本学生秋季リーグ戦と、出場資格があれば全日本選手権。「最後まで全力を尽くしたい」と話した。

起爆剤となるか、「徳山大」としての最後のリーグ戦

 守田泰弘監督は「最初はなかなか勝てない選手でしたが、4年間をかけて強くなってくれました。努力を積み重ねて強くなった選手です」と振り返る。同大学は、高校時代の全国トップ選手が何人も集まる大学ではない。努力で実力をアップさせた若原の存在は、他の選手の手本になっていると言う。

昨年10月、西日本の学生王者にたどりついた若原

 徳山大は来春、私立から周南市立となり、校名が「周南公立大学」と変更される。少子化による地方大学を取り巻く環境に対応するためで、ブランド力向上や学費低廉化などによって地域人材の育成を目指すため。

 スポーツ推薦制度がどうなるかは不明だが、同監督は市立や都道府県立の大学で唯一となるレスリング部(注=東大と、厳密には大学ではないが防衛大学校が国立として存在)としての特色を出し、部を発展させていく腹積もり。

 そのためにも、「徳山大」として最後の出場になる西日本学生秋季リーグ戦での「優勝を達成したい」と声を強める。

 若原の踏ん張りが、チームの起爆剤となるか。来週末の全日本大学選手権(栃木・足利市)とともに、西日本学生リーグ戦、全日本選手権での同大学の奮戦が期待される。

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