巨人主力に備わる“献身性” 専門家も感嘆、ファイナルS進出決めた原采配の妙

巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】

「個人より巨人」の原監督面目躍如

■巨人 4ー2 阪神(CSファースト・7日・甲子園)

「2021 JERA クライマックスシリーズ セ」ファーストステージ第2戦が7日、甲子園球場で行われ、巨人が4-2で競り勝った。レギュラーシーズン3位で挑んだ短期決戦に2連勝し、ファイナルステージ進出を決めた。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、“下剋上”成功の要因を語った。

「巨人がファーストステージを突破できた最大の要因は、バントだと思います」。野口氏はそう断言した。この日の第2戦では、1点リードの8回、先頭の坂本勇人内野手が敵失で出塁すると、続く4番・丸佳浩外野手は三塁線へ絶妙のバント。虚を突かれた三塁手の大山が送球もできず、一、二塁ともセーフとなった。

「坂本は相手のエラーでもらった走者ですから、これをホームに還せば相手のダメージは倍増する。相手のミスに付け込むことは勝負の鉄則なのです。それが分かっているからこそ、原(辰徳)監督は是が非でもこの回に点を取ろうと丸に送りバントを命じ、結果的に一塁もセーフとなってチャンスが広がりました」と野口氏は解説する。

続く亀井善行外野手の送りバントで1死二、三塁とし、ゼラス・ウィーラー内野手の中犠飛で値千金の追加点を奪ったのだった。

岡本和の穴を守備の面で埋めた若林、廣岡

前日の第1戦では、両軍無得点の5回に、先頭の丸が内野安打で出塁した直後、ウィーラーが来日7年目にして初の犠打を投前へ決めた。これが吉川尚輝内野手の先制適時打につながっていた。

原監督は以前から、チームリーダーの坂本であれ、現役時代4番を打っていた頃の阿部慎之助作戦コーチであれ、必要とあらば迷わず送りバントを命じてきた。「巨人軍は個人軍であってはならない」とする指揮官の、面目躍如たるところと言える。

一方、もともとファーストステージ最大の難題は、左脇腹痛で欠場した岡本和真内野手の穴をいかに埋めるか──だった。実際、レギュラーシーズン全143試合で「4番・三塁」を務めた主砲の欠場は、チームに暗い影を落としていた。

その面では、投手陣が第1戦で零封、第2戦も2失点でしのぎ、得点力の低下をカバー。野口氏は「岡本和の代わりにサードに入った若林(晃弘内野手)、廣岡(大志内野手)がよく守ったことも、見落としてはいけない。岡本和と同じくらい打てと言われたら無理でも、同じくらい守れと言われる分には何とかなる。2人はそれを全うしました」と評価する。

第2戦に「2番・三塁」でスタメン出場した若林は、1点リードの3回、1死一、二塁のピンチで梅野が放った三塁線のゴロを逆シングルで抑え、三塁ベースを踏んだ後に一塁へ送球。見事に併殺を完成させた。第1戦に三塁手としてフル出場し、この日も8回から三塁守備に就いた廣岡は、近本の三遊間への当たりを軽快にさばいた。

2戦2勝という“最短距離”でファーストステージを駆け抜け、10日からのファイナルステージで王者のヤクルトに挑む巨人。豊富な経験に裏打ちされた試合運びのうまさが、本当にモノを言うのはこれからだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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