コロナ禍でも有名企業への就職者数が増加 学生を成長させる埼玉工業大学のキャリア教育プログラム

2020年、未曾有の事態に世界中が巻き込まれ、学生は大学に通うことさえままならず、就職活動もオンライン中心の活動で苦戦を余儀なくされた。しかし、コロナ禍においても、埼玉工業大学は2019年度、2020年度と98%という高い就職率を維持した。同学は以前から有名企業への就職率ランキングを毎年向上させるなど就職への評価が高い。全体の学生数は2,000人規模ながら、就職率はもちろん就職先も有名大学にもひけをとらない顔ぶれが並ぶ。それはなぜなのだろうか?

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1年生から始まるキャリア教育プログラム

埼玉工業大学では、入学するとすぐに「新入生就職ガイダンス」がある。

1年生からキャリア教育プログラムが始まるのだ。1年次は、ほぼ週1回のペースで、景気、日本の技術力、人口減少といった、さまざまな社会情勢について勉強をする。そういうテーマについてディスカッションをし、考えを書き出していくうちに、学生は徐々に社会に出て「働く」ということについて自分自身で考えはじめ、3年生になる頃には、それぞれの考えが醸成され、自分が目指す進路に向けて就職活動を開始する。

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京セラに内定した工学部・情報システム学科・IT専攻4年の秋山 涼樹さんは

埼玉工業大学では「寄り添う就職サポート」を掲げている。「寄り添う」とは、実際どういうことなのか、キャリア支援センターの藤田 拓勧先生に聞いた。

「学生一人一人と、こまめに連絡を取り、直接話をすることを意識しています。メールや電話でのコミュニケーションは日常的に実施しています。また、学内で呼び止めて話をすることもよくあります。そもそも何を相談したらいいかわからないと言う学生もよくいるので、そういった学生にはこちらからアプローチをしてとにかくまず話してもらって、個別の状況や背景にあわせて、じゃあこういう準備をしていこうとサポートをしています。」

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就職課の職員は、担当学科の4年生の顔と名前を全員把握している。キャリア支援センター、研究室の教員とも連携して学生をサポートする。学生数が数千人、一万人規模の大学では難しいかもしれないが、学年500名ほどの同学だからこそできる体制だ。

就職活動について「こういう進路に進みたいと、連絡した時に『君ならできると思うよ』とキャリア支援センターの先生が、まず私の気持ちを肯定してくれたことが忘れられません。就職課の職員の方々も、自信のない私に『大丈夫ちゃんとやればできるよ』と言って、いろいろと指導してくださったこともやる気につながったと思います」と、話してくれたのは、工学部・機械工学科・機械工学専攻 4年の麥倉 綾華さん。彼女も東急電鉄に内定している。

「この大学に来てよかった」と卒業していく学生たち

就職活動を取り巻く環境は年々変化し、多くの大学でもこれまで研究室中心だった理工系の就職活動が大学全体で取り組む体制へと変わりつつある。

埼玉工業大学がキャリア支援センターを立ち上げたのは、10年前。学生と向き合うこうした取り組みが徐々に功を奏し、近年の就職率は、毎年95%以上という高い結果を出している。さらに有名企業への就職者も、ここ数年増え続けている。

キャリア支援センター長の西田 優先生は「本学では就職率が80%を切ったことはありません。もちろんアカデミックな進路を選ぶ学生もおりますし、教員の中にはいろいろな研究賞を受賞する者もいます。その一方で、この学校はそもそも明治時代に職人学校としてスタートしていることもあって、社会で現場のリーダーとなる人材を育てることに力を注いでいます」と話す。

埼玉工業大学の体系的なキャリア教育プログラムを通して、学生は自分と向き合い、自分のキャリア、将来を意識して学生生活を過ごす。教職員のきめ細やかなサポートもあり、それが学業やさまざまな活動に取り組むきっかけにもなって成長する。こうした好循環が就職へと結びついているのではないだろうか。ただ、それは文字にすれば数行の出来事だが、学生にとって人生の大切な時期に寄り添うというのは、決して簡単なことではない。

「4年生からは、この大学に来てよかったという話をよく聞きます。この大学に第二志望で入ってくる学生もいるので、はじめは入学してよかったと思っていない学生もいると思うんです。でも、卒業するときには、この大学に来てよかったと言う学生がすごく多い。それも就職に力を入れている本学の特徴だと思います」と、西田先生が言ったことのことが、この大学のキャリア教育、就職支援のすべてを表しているように思われた。

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