【財務省財政制度分科会】「かかりつけ薬局・薬剤師以外の処⽅箋受付における負担のあり⽅についても検討を」

【2021.11.08配信】財務省は11月8日に開いた財政制度分科会の社会保障に関する資料を公表した。この中で、「外来医療における『かかりつけ医』以外の受診への定額負担の導⼊とあわせて、『かかりつけ薬局・薬剤師』以外の処⽅箋受付における負担のあり⽅についても検討を深めるべきである」とした。リフィル処方箋導入も求めた。そのほか、敷地内薬局についてはさらなる適正化、後発医薬品調剤体制加算については廃止を含めた見直しと減算の対象拡大の必要性を記載した。

「調剤報酬上の評価については制度化された地域連携薬局で」

財務省が財政制度分科会で示した社会保障関連資料で、「調剤報酬」に関する視点は6つだった。
1つ目が「調剤報酬」、2つ目が「かかりつけ薬局」、3つ目が「同一敷地内薬局」、4つ目が「後発医薬品調剤体制加算等の見直し」、5つ目が「リフィル処方」、6つ目が「多剤・重複投薬等への対応」だ。

1つ目の「調剤報酬」では、対物業務から対人業務へシフトしていくべきにもかかわらず、調剤基本料と調剤料、薬学管理料の割合について変化していないことを問題視。調剤料の算定方法の適正化が必要とした。

2つ目の「かかりつけ薬局・薬剤師」では、「地域連携薬局」の調剤報酬上の評価を行うべきとした。調剤基本料の地域⽀援体制加算の実績要件と、地域連携薬局の要件との整合性が明確でないとした上で、「調剤報酬上の評価については制度化された地域連携薬局に対して⾏うこととし、制度⾯の対応と調剤報酬上の評価とが相まって、かかりつけ薬局・薬剤師機能の発揮を促していくことが望ましい」とした。
さらに、かかりつけ薬局・薬剤師以外の処方箋受付について、「外来医療におけるかかりつけ医以外の受診への定額負担の導⼊とあわせて負担のあり⽅についても検討を深めるべきである」とした。

3つ目の「同⼀敷地内薬局等に係る調剤基本料の⾒直し」では、令和2年度の診療報酬改定で見直したにもかかわらず引き続き誘致の動きが見られるとして、さらなる適正化が必要とした。「経済的、機能的、構造的独⽴に疑義をもたらす同⼀敷地内薬局の誘致は医薬分業の趣旨を損ねるものであり、調剤基本料の適正化を⼀段と強⼒に進めることは勿論、規制的⼿法も⽤いてこうした薬局の在り⽅を正していくべきである」とした。

4つ目の「後発医薬品調剤体制加算等の⾒直し」では、後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保が⼤前提としつつも、廃止を含めた見直しと減算対象拡大が必要とした。令和3年度予算執⾏調査での指摘を繰り返した形で、後発医薬品調剤体制加算は新目標の適正化効果の増分が 200 億円と⾒込まれる⼀⽅、現⾏制度では年1200億円程度の加算とされているため、費⽤対効果が⾒合っていないことを問題視している。「廃⽌を含めた⾒直しを⾏い、減算について対象を⼤幅に拡⼤するなど減算を中⼼とした制度に⾒直すべきである」とした。
なお、後発医薬品調剤体制加算の⾒直しでは、調剤だけでなく処⽅側の医療機関の⼀般名処⽅加算や後発医薬品使⽤体制加算のあり⽅も同じ⽅向で⾒直しが必要と付記している。

5つ目の「リフィル処⽅」では、地域連携薬局によって環境が整いつつあるとし、「時機を逸することなく導⼊すべき」とした。リフィル処方と分割調剤の違いも整理。「リフィル処⽅は処⽅期間が⻑期化し、処⽅を⾏う医療機関への通院負担が減る⼀⽅、分割調剤は処⽅を⾏う医療機関への通院負担は減らない。分割調剤がリフィル処⽅と同様の効果をもたらすには、⻑期の処⽅が前提となるが、現在の通知上は例外的扱いであり、分割調剤の算定回数は少ない。患者の通院負担の軽減や利便性の向上から新型コロナ禍でそのニーズも増しているなか、⼤きく仕組みを変えていくことが必要であり、リフィル処⽅を時機を逸することなく導⼊すべきである」とした。
リフィル処⽅は「かかりつけ薬剤師が処⽅医と情報連携しつつ、患者に対し服薬期間中にわたって服薬管理を⾏い、必要に応じて患者に医師への受診勧奨を⾏うことが前提」として、「そうした服薬指導・管理の評価を調剤報酬上充実・強化していくこともあわせて検討すべきであり、地域連携薬局制度が導⼊される中で制度導⼊への環境は整いつつある」とした。
また、リフィル処方の対象については、「依存性の強い向精神薬等については避けるべきであり、前回と同じ内容の処方が長期にわたって行われているような生活習慣病等に対象を限ることが必要である」とした。

6つ目の「多剤・重複投薬等への対応」については、取り組みを強化すべきとした。薬局だけでなく「診療報酬における多剤・重複処⽅について、減算等の措置を導⼊・拡充すべき」とした。

<編集部コメント>

財務省からの資料とはいえ、諸団体との調整が図られている印象を受ける資料の内容だった。
例えば、敷地内薬局では調剤報酬上の適正化だけでなく「規制的手法も用いて」正していくべきとしているのは、昨今の日本薬剤師会の主張を色濃く反映している感がある。
また、すでに浮上していた論点である調剤料のあり方をめぐる「対人業務へのシフト」や「多剤・重複投薬等への対応」については違和感はなかった。

こうした中で最も目新しい視点は「かかりつけ薬局・薬剤師以外の処方箋受付」に関して、患者負担の検討に触れたことだ。すでに紹介状なしの大病院受診には定額負担が導入されているが、かかりつけ薬局・薬剤師の議論はかかりつけ医とのセットの議論になるだろう。日本医師会は日本の医療保険制度の優れた点の3つの中に「フリーアクセス」を挙げており、議論は簡単ではなさそうだ。ただ今回の資料では、コロナ禍でフリーアクセスが機能したかについて疑問が呈されている。資料では「外来医療・在宅医療へのアクセスの機会は限られていたことが指摘されており、世界有数の外来受診回数の多さをもって我が国医療保険制度の⾦看板とされてきたフリーアクセスは、肝⼼な時に⼗分に機能しなかった可能性が⾼い。『いつでも、好きなところで』という意味でとられがちで、受診回数や医療⾏為の数で評価されがちであった『量重視』のフリーアクセスを、『必要な時に必要な医療にアクセスできる』という『質重視』のものに切り替えていく必要がある」と指摘している。コロナ禍で浮き彫りになった課題への早急な対応を求める声も強いことから、来春の改定でどこまでフリーアクセスの議論が進むのか注目される。

地域連携薬局の評価については、地域連携薬局と地域支援体制加算の整合性を図る意味でも地域連携薬局の評価へシフトの必要性は業界で指摘されてきた視点だ。コロナ対応などもあり、申請が遅れていた薬局も見受けられるため、行政資料での提言とコロナ感染者の減少を受けて年末にかけて急速に申請が進展する可能性があるだろう。

一方で、業界との調整不足と見受けられる点もある。
1つは後発医薬品調剤体制加算の廃止を含めた見直しだ。
今回の資料では今年6月に公表された令和3年度予算執⾏調査での指摘を繰り返した形になっているが、11月5日に開かれた中央社会保険医療協議会薬価専門部会では、後発品への置換えによる削減額は1.4兆円あるとの資料が提示されている。財務省では現状の水準を維持していることへの財政効果を軽視している節があること、さらには足下の供給不安で薬局現場での業務負担が理解されていない印象を受ける。廃止や減算対象の拡大は薬局業界から反発が大きいのではないだろうか。定量的な薬局の負荷データ提示などが求められるのかもしれない。

財務省では指摘されていない調剤報酬改定の視点ももちろん多くあるだろう。対人業務へのシフトに関しては、財務省の資料では前回同様、調剤料のあり方に焦点が当たっていたが、もっと多面的な、例えば今の構成の中での対人と対物のさらなる区分けの精査などが進むのではないだろうか。

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