横浜・旧大口病院点滴殺人 9日に地裁で判決公判 刑事責任能力の程度と量刑が争点に

事件のあった旧大口病院。横浜はじめ病院と改称したが、現在は休診している=横浜市神奈川区

 横浜市神奈川区の旧大口病院(現横浜はじめ病院)で2016年9月、入院患者の男女3人の点滴に消毒液を混入して中毒死させたとして、殺人罪などに問われた元看護師久保木愛弓被告(34)の裁判員裁判の判決公判が9日、横浜地裁(家令和典裁判長)で開かれる。被告は起訴内容を認めており、刑事責任能力の程度と量刑が争点となった。検察側は完全責任能力があったとして死刑を求刑、弁護側は犯行当時、心神耗弱状態だったとして無期懲役を主張している。

 起訴状などによると、被告は16年9月15日~19日ごろ、入院患者の女性=当時(78)、男性=同(88)、男性=同(88)=の点滴に消毒液を混入して、同16~20日に殺害した、とされる。同18~19日ごろに、殺害目的で投与予定の点滴袋5個に消毒液を入れた殺人予備罪にも問われている。

 今年10月22日の論告求刑公判で検察側は、起訴前に行った精神鑑定の結果から、被告にはごく軽度の自閉スペクトラム症の特性があるものの「精神障害が及ぼした影響は極めて小さく、完全責任能力があった」と主張。酌量すべき特別な事情はないとして死刑を求刑した。

 一方、弁護側は起訴後の精神鑑定で被告が「統合失調症の前駆症状だった」とされたことを基に心神耗弱状態だったと主張し、無期懲役が相当としている。

 被告は最終意見陳述で「看護師という人の命を守る職にありながら、自分の弱さゆえにこのような事件を起こし、深く反省しています。死んで償いたいと思います」と述べた。

 家令裁判長は「静粛な環境で判決を被告に聞いてもらいたい」として、判決内容にかかわらず、主文を後回しにするとしている。

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