第25回「リップサービスの、奥にある想い」

先日、レズっ娘グループのご利用規約に新しく「キャストからのリップサービスについて」という項目が加わりました。こちらでも紹介しますね。 キャストはご案内中、特に女性限定コースご利用のお客様に対して恋人気分や疑似恋愛を楽しんでいただくため「好き」「愛してる」「恋人にしたい」「付き合いたい」など、お客様の要望に沿って、また、”キャストの演出”として『リップサービス』を行う場合が御座います。 これらのキャストらの演出による『リップサービス』は、お客様によっては、本気にしてしまったり、依存してしまったり、ルール違反を起こしたり最悪の場合、出禁となる場合も御座います。 キャストの過剰な演出が苦手、過度なリップサービスはやめてほしいなど、ご遠慮なく事前にお申し出ください。 * * * ご利用規約とは、こちらに同意をいただいたお客様のみコースをご利用いただけるというもので、レズっ娘グループでは項目がとにかくたくさんあります。キャストも覚えるのにひと苦労するくらいですから、お客様はもっと大変! と思うのですが、たいていの方はまじめに目を通してきてくださいます。 お客様のほうから「あっ、これってダメなんだよね。ご利用規約に書いてあったよね」と言ってくださることもしばしばあり、本当に助かっています。 お店が立ち上がった当時から、お客様や私たちキャストのルールなどとあわせて、ご利用規約も事あるごとに追加されてきました。キャストが「お客様からこんな要望があった」「こんなルールがあればいいと思った」とスタッフさんか代表の御坊さんに伝えて、必要だと判断されれば規約に加わることがあります。 今回新たに加わったのが、「リップサービス」です。 ご覧になって、少し暗い気持ちになっちゃった方もいるかもしれませんね。 こんなことをわざわざルールに定めるなんて、無粋だと思われた方もいるでしょう。 その気持ち、とてもよくわかります。 でも、誤解しないでほしいんです。「好きだよ」「付き合っちゃいたいね」「彼女になってほしい」……キャストは心にもないウソを言っているわけではないのです。 私はレズ風俗を、究極のサービス業だと思っています。 お客様に最高の夢をみていただくために、私たちも一緒に夢を見ることがあります。ふたりでいる空間を、時間を居心地のいいものにするために、全力を尽くします。私に逢いにきてくださるために、日ごろはお仕事をがんばったり、節約をしたり、またはきれいになろうと努力したり、新しく服を買ったりされていることも知っています。 だからここでは、思いっきり非日常を味わってほしい。 普段の生活ではなかなか味わえない特別なことを体験するために、私たちがエスコートします。ドキドキして、ときめいて、「これは、恋!?」と思ってしまうぐらいに。甘い時間にたっぷりと浸ってほしいのです。 ウソを言っているわけではないというのは、私も一緒にその世界に浸っているからです。かぎられた時間を大切に思えばこそ、気持ちも高まります。 そこで私が心がけているのは、極上のリップサービスです。 センスのある言葉で誘う、でも惑わせないーーその言葉を受け取ったお客様の気持ちが走りすぎてルール違反を起こしてしまうようだと、それは極上とは言えません。 シンデレラタイムには、終わりがあります。ご案内の時間が終われば、現実に戻らなければなりません。 いまここで終わったほうがいい、と思ったときは、一瞬で目を覚まさせてあげる。 いまここで終わっちゃいけない、と思ったときは、甘い空気を残しつつゆっくりと目を覚まさせてあげる。 そして、晴れやかな気分で、気持ちよくおうちへ帰ってほしいのです。 ……と書きましたが、これがなかなかむずかしいのですよね! どちらの場合もあるので、それを上手に見極めなければなりません。私たちも人間です。感情というものがありますし、引っ張られることもあります。 ですが、それも含めて楽しんでもらえばいいと思っています。絶対の正解なんて、ないんですよ。ふたりでいろいろ確かめ合えばいいのです。 以前にも、「疑似恋愛は『ウソ』ではないのです」 というコラムを書きました。その瞬間、瞬間の恋心はウソではないし、お客さまが自分からそれを愉しむことだって可能なのです。ふだんの自分とは違う自分を、女優気分で演じてみるもアリだと思いますよ。キャストからのリップサービスに乗っかるように、あえて大人の余裕を演じてみるのも、楽しいかも。 そして、バイバイと手を振り、ひとりになった瞬間にすーーーーっと気持ちを切り替える。 リップサービスを過度に信じてしまいそう、ハマりすぎてしまうかも……というときの対策はいくつかあると思います。ほかのキャストにも逢ってみるとか、ご利用を一時的に控えるとか、使っていい予算を決めておくとか。実際にお客様から「こんなふうにしているよ」と聞くこともありますし、キャストに相談していただいてもいいんです。 私がここで働く理由は、自分の夢を叶えるためです。 一番やりたいことを支えてもらうために、働いています。キャストのお仕事は私にとって、特別で、とても大切なお仕事です。恋愛目的の出逢いを求めているわけではありません。 これはドライに割り切っているという意味ではありません。このお仕事を通して、私は最高の出逢いをすでに何度も経験してきました。これまで私に逢いにきてくださった方なら、その意味をわかってくれると思います。 私たちは、言葉を超えたものを交換しあっているはずなんです。「これはリップサービスだ、本気じゃないんだ」と警戒するより、そのさらに奥にあるものを探ってみるほうが、楽しいと思いませんか? ……つづきは、また次の夜にここで逢ってお話しましょう。

ゆう:

永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025

© 有限会社ルーフトップ