中国の輸出規制で北朝鮮の肥料工場が稼働ストップ寸前

中国の輸出規制が、韓国を直撃している。

中国税関は先月11日、尿素、硝酸アンモニウム、リン酸肥料など29品目の輸出前検査を行うと発表した。事実上の輸出規制だ。

これによる肥料の不足はもちろんだが、ディーゼル車に必要な尿素水(アドブルー)も不足している。2015年以降に韓国で生産されたディーゼル車には、このシステムの搭載が義務付けられているが、尿素水の原料となるアンモニアのほとんどを中国からの輸入に依存しているために起きた深刻な品不足だ。このままでは、トラックや救急車の運行に支障が出かねない状況だ。

貿易の対中依存度が韓国と比べ物にならないほど高い北朝鮮では、状況はさらに深刻と言えよう。肥料不足に拍車がかかり、来年の食糧事情が今年以上に悪化する可能性が出ている。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、道内の安州(アンジュ)にある南興(ナムン)青年科学連合企業所など、主な肥料工場で、アンモニア、尿素などの輸入物資が不足し、最近になって生産量が激減、輸入が回復しなければすぐにでも生産中断に追い込まれかねない状況だと伝えた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の興南(フンナム)肥料連合企業所も同様の状況に追い込まれていると伝えられている。

北朝鮮の各肥料工場は、国内産の石炭からアンモニアを抽出し、「チュチェ(主体)肥料」と呼ばれる尿素肥料を生産してはいるものの、コストがかかり、質が低いため、結局輸入原料に頼る構造になっている。

「南興肥料工場は、肥料の原料の95%以上を輸入に頼っており、中国からの輸入が止まれば生産を中断せざるをえない。この状態が続けば、来年にはほとんどの農場で肥料なしで農作業を行わなくてはならない状況が発生しうる」(情報筋)

南興肥料工場では昨年9月と今年8月に爆発事故が起きており、地元住民からは八方塞がりの状況に追い込まれたとの嘆きの声が上がっているという。

北朝鮮の肥料供給の現状について、韓国の民間シンクタンク、韓国GS&Jインスティチュート東北アジア研究所のクォン・テジン院長は、デイリーNKとの電話インタビューに「今年の北朝鮮の肥料輸入量は昨年よりは増加したものの、例年の半分にも満たない」「肥料不足が収穫量の減少に直結するのは当然」と答えた。

一方、輸入肥料と国内産の割合は半々だとしたクォン氏は、「公式に集計されていない中国の無償肥料供給の量も少なくないため、中国から輸入される肥料が完全にゼロになることはないと見るのが現実的」だと述べた。

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