『「子供を殺してください」という親たち』コミックス第10巻、本日発売!

11月9日、 (株)トキワ精神保健事務所を主宰する押川剛が原作を書く漫画『「子供を殺してください」という親たち』コミックス第10巻を新潮社より刊行。 本作の原作は、 (株)トキワ精神保健事務所が1996年より行っている「精神障害者移送サービス」を通じて、 病識のない精神疾患患者を医療につなげられない家族の現実、 長引く「ひきこもり」問題などに向き合ってきた押川剛。 押川原作だからこそ描ける、 事実に基づくエピソードが各巻に盛り込まれ、 新巻を出すたびに、 大きな話題となった。 このたびの第10巻を刊行で、 累計100万部を突破。 今作には、 他の漫画作品と全く異なる点が2点ある。全てのエピソードは押川剛が経験してきた「事実」であり、 登場する人物は、 プライバシーに配慮し固有名詞等は変えているけれど、 全てモデルがいる。 漫画「原作」というと、 文庫や小説などを底本にして、 それを単になぞったり、 翻案して漫画化されることが多いが、 本作は新潮文庫『「子供を殺してください」という親たち』『子供の死を祈る親たち』を底本にしているものの、 押川剛が「漫画」用に新たに「プロット」を書き下ろし、 文庫でも描ききれなかったエピソードや社会情勢を盛り込んでいる。

この、 他の作品では類を見ない製作体制のもと、 「マトリズム」や「ケーキの切れない非行少年たち」など、 現代社会をこれ以上ないリアリティのある筆致で描く漫画家鈴木マサカズ氏が漫画執筆をすることで、 これ以上ない化学反応が生まれ、 毎回、 家族の問題とそれを内包する現代社会を圧倒的なインパクトで描いてきた、 奇跡のような漫画作品だ。現実には、 元農林水産省事務次官が長男を殺害した事件や、 精神疾患が疑われる無差別殺傷事件、 ストーカー殺人など、 漫画に出てくるケースを彷彿とさせる事件も相次いでいる。 精神疾患を題材としていることから、 賛否両論を生む作品であることは事実。 しかしそのゆるぎないリアリティと、 社会問題に取り組む真摯な姿勢によって、 幅広く読者を獲得しつづけている。 一例だが、 作家の林真理子は、 ひきこもりをテーマにした「小説8050」執筆に当たり、 押川に取材を行なった。 また、 漫画好きで有名な女優の広瀬アリスや、 クリエイターのヒャダインも、 テレビ・雑誌等で「オススメ漫画」として本作を挙げている。

原作者:押川剛コメント

私は、 この漫画の原点となる「精神障害者移送サービス」を始めた約30年前から、 精神疾患にまつわる「命」ギリギリの現場を見てきました。 当時は「家庭」に隠匿されていたそれも、 今では「事件」として顕在化しています。 コロナ禍もあり、 不可解な事件は今後さらに激増すると予測されます。 この風変わりな漫画が多くの読者に支持されているのは、 ひとえにそういった日本の現状に対する恐れがあり、 真実を知りたいと願う人たちが数多くいることの現れだと思います。

漫画家・鈴木マサカズコメント

この漫画のお話をいただいたのはもう5年前になるでしょうか。 直感的に「いま自分が描きたものはこれだ!」と強く感じたことを昨日のことのように思い出します。 そしてその思いはいまも変わりません。 この漫画に描いてあることは誰にとっても他人ごとではなく紙一重のできごと。 彼ら彼女らの目は苦しみや悲しみ、 怒りがこもった目です。 そのようなことを思いながら今日も粛々と作画をしています。

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