負債1,000万円未満の倒産 累計400件、5社に1社がコロナ関連倒産【2021年1-10月】

 2021年1月-10月の負債1,000万円未満の企業倒産は400件(前年同期比26.1%減)で、6年ぶりに前年同期を下回った。400件は、2017年同期と並ぶ水準。
 負債1,000万円未満の「新型コロナウイルス」関連倒産は81件(2020年2-10月34件)で、前年同期の2.3倍に増加し、5社に1社(構成比20.2%)が新型コロナ関連倒産だった。
 産業別では、最多はサービス業他の190件(前年同期比27.4%減)で、全体のほぼ半数(構成比47.5%)を占めた。このうち、コロナ禍で休業や時短営業、酒類提供の自粛を要請されていた飲食業は57件(前年同期比35.2%減)で、給付金や協力金などの効果で倒産が抑制された。
 原因別の最多は、「販売不振」の295件(同22.9%減)で、負債1,000万円未満の73.7%(前年同期70.6%)を占めた。
 資本金別では、1,000万円未満が370件(前年同期比26.4%減)で、構成比が92.5%(前年同期92.8%)と9割以上を占め、小・零細規模の企業がほとんど。
 コロナ禍の資金繰り支援策は小・零細規模の事業者にも浸透し、2021年は3月と5月を除く8カ月で前年同月を下回った。だが、これまでの支援策は、次第に本業支援へ移行しつつある。緊急事態宣言などが全面解除され、本格的に事業が再開されるなかで業績回復が遅れた企業は新たな資金調達が課題になっている。
 長引くコロナ禍で小・零細事業者の経営体力は疲弊し、過剰債務も負担が増している。経済活動が平時に戻るなかで、支援策で判断を先送りしてきた事業者が廃業を決断する可能性も出てくるだろう。これまでの金融支援から、抜本的な事業再生への細やかな支援策も必要になっている。

  • ※本調査は、2021年(1-10月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の「倒産集計」(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産件数400件、5社に1社が新型コロナ関連倒産

 2021年(1-10月)の負債1,000万円未満の企業倒産は400件(前年同期比26.1%減)で、1-10月としては、2年ぶりに400件台になった。
 コロナ禍での国や自治体、金融機関による資金繰り支援策が奏功し、2021年は3月(前年同月比8.1%増)、5月(同123.5%増)を除く8カ月で前年同月を下回った。
 負債1,000万円未満の倒産のうち、「新型コロナ」関連倒産は81件(2020年2-10月34件)で、構成比は20.2%と、5社に1社が新型コロナ関連倒産だった。
 9月30日をもって緊急事態宣言などが全面解除され、本格的に事業が再開された。運転資金の需要が見込まれるなか、コロナ禍の長期化により財務面では疲弊感を強めていて、「黒字倒産」の発生など今後の動向が注目される。

1000万未満

【産業別】10産業のうち、7産業で減少

 産業別は、10産業のうち、増加が3産業、減少が7産業だった。
 産業別の最多は、サービス業他の190件(前年同期比27.4%減)で、1-10月としては、2年ぶりに前年同期を下回った。ただ、負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は47.5%(前年同期48.3%)で、ほぼ半数を占めた。
 そのほか、不動産業8件(前年同期比20.0%減)は3年連続、小売業52件(同1.8%減)は2年連続、卸売業35件(同28.5%減)は2年ぶり、建設業59件(同23.3%減)、製造業12件(同55.5%減)は3年ぶり、情報通信業21件(同55.3%減)は4年ぶりに、それぞれ減少した。
 一方、農・林・漁・鉱業7件(同75.0%増)は4年連続、運輸業14件(同16.6%増)は2年連続、金融・保険業2件(同100.0%増)は5年ぶりに、それぞれ増加した。
 負債1,000万円未満の「新型コロナ」関連倒産では、最多がサービス業他の47件(構成比58.0%、前年同期20件)で、前年同期の2.3倍に増加。このうち、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」7件(前年同期1件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」4件(同1件)などが、緊急事態宣言などで休業や時短営業の影響を大きく受けた。
 次いで、小売業10件(同2件)、建設業8件(同2件)の順。

1000万未満

【形態別】破産386件で、構成比は96.5%

 形態別は、法的倒産が398件(前年同期比26.1%減)。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は99.5%(前年同期99.4%)で、1-10月では2012年以降の10年間で最高を記録した。法的倒産のうち、破産が386件(前年同期比26.7%減)で、構成比は9割以上(96.9%)になった。
 そのほか、「民事再生法」は7件(前年同期11件)で、すべてが小規模個人再生手続きだった。
 また、「特別清算」は5件(同1件)、「取引停止処分」は2件(同3件)だった。
 負債1,000万円未満は小・零細企業が中心で、先行きの見通しが立たないことで事業継続を断念するケースが多く、ほとんどが消滅型の「破産」を選択している。
 また、代表者の高齢化が進むなか、後継者不在も事業継続をあきらめる一因となっている。

【原因別】販売不振の構成比が7割以上

 原因別では、『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が316件(前年同期比22.3%減、前年同期407件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は79.0%で、前年同期の75.0%より4.0ポイント上昇した。
 「販売不振」は295件(前年同期比22.9%減)。構成比は73.7%(前年同期70.6%)で、前年同期より3.1ポイント上昇した。
 「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は、前年同期と同件数の21件だった。
 そのほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」は24件(前年同期比14.2%増)。「他社倒産の余波」は32件(同47.5%減)で、関連企業の連鎖倒産が大半を占めた。
 また、「事業上の失敗」は12件(同66.6%減)、「運転資金の欠乏」は9件(同35.7%減)で、設立10年未満の企業がほとんどだった。

【資本金別】1千万円未満の構成比が92.5%

 資本金別では、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が370件(前年同期比26.4%減、前年同期503件)で、1-10月では2015年以来、6年ぶりに前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は92.5%で、前年同期(92.8%)より0.3ポイント低下した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が139件(前年同期比28.3%減、前年同期194件)、「個人企業他」が131件(同25.5%減、同176件)、「1百万円未満」が63件(同16.0%減、同75件)、「5百万円以上1千万円未満」が37件(同36.2%減、同58件)だった。
 そのほか、「1千万円以上5千万円未満」が29件(同25.6%減、同39件)。
 「5千万円以上1億円未満」は1件で、3年ぶりに発生。
 「1億円以上」は2年連続で、発生がなかった。

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