オゾンホールって最近どうなってる? NASAが経年変化をグラフ化

【▲ 2021年の南極オゾンホールは10月7日に最大面積に達し、1979年以降13番目の大きさになりました。(Credit:NASA Ozone Watch)】

最近「オゾンホール」の話題はあまり耳にしませんが、いまどうなっているのでしょうか? 消滅してしまった? いえ、そんなことはありません!

NASAとNOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration:米国海洋大気庁)は、2021年の南極オゾンホールが10月7日に今年の最大面積に達し、1979年以降で13番目の大きさになったと発表しました。南半球の冬が例年よりも寒かったため、オゾンホールが平均よりも深く大きくなり、11月から12月初旬まで存続する可能性が高いと考えられます。

わたしたちがオゾンホールと呼んでいるのは、毎年9月頃にはじまる南極上空の成層圏のオゾン層が薄くなる現象のことです。ちなみに、北極では気象条件のちがいにより、南極のような大規模なオゾン破壊は通常発生しないとされています。

人間が作り出したフロンなどの化合物に由来する、化学的に活性な塩素や臭素が高高度にある雲(「極域成層圏雲」や「真珠母雲」と呼ばれる特殊な雲)で化学反応により発生します。冬の終わりに南極で太陽が昇ると、太陽光を浴びた塩素や臭素がオゾンを破壊する反応を開始します。

NASAとNOAAの研究者は、「Aura」「Suomi-NPP」「NOAA-20」に搭載された衛星観測機器を用いて、オゾンホールの成長と崩壊を検出・測定しています。

今年、NASAの衛星観測によると、オゾンホールは最大で北米大陸とほぼ同じ大きさの2480万平方キロメートルに達し、10月中旬に縮小に転じました。南極大陸を取り巻く成層圏の気温が平年より低く、強風が吹いていたことが、オゾンホールの大きさに影響しました。

世界的なオゾン監視ネットワークの一つである南極観測所のNOAAの科学者たちは、オゾンゾンデと呼ばれるオゾン測定器を搭載した気象観測気球を放ち、気球が成層圏を上昇する際に変化するオゾン濃度を測定することで、オゾン層の厚さを記録しています。

極地の太陽が昇るときを見計らって、「ドブソン分光光度計」を使って測定を行います。ドブソン分光光度計は、地表から宇宙空間の端までの間にあるオゾンの総量を記録する光学機器です。今年は、10月7日に102ドブソン単位という、1986年以来8番目に低いオゾン総量を記録しました。また、オゾンホールの最大期間中、高度14〜21キロメートルでは、オゾンがほとんど存在しませんでした。

【▲ 1990年代から2000年代初頭にかけての多くのオゾンホールは、9月上旬から10月中旬までの平均オゾンホール面積が、2021年のオゾンホールよりもかなり大きかったことがわかります。(Credit:NASA’s Earth Observatory/Joshua Stevens)】

2021年の南極オゾンホールは平均より大きいものの、1990年代後半から2000年代初頭のオゾンホールに比べるとかなり縮小しています。

オゾンホールが改善しているのは、モントリオール議定書(「オゾン層の保護のためのウィーン条約」に基づく議定書、1989年発効)とその後の改正により、オゾンを破壊する有害な化学物質であるクロロフルオロカーボン(CFC)の放出が禁止されたためです。

もし、現在のフロンガスによる大気中の塩素濃度が2000年代初頭と同程度であれば、同じ気象条件のもとで、今年のオゾンホールは約400万平方キロメートル、さらに拡大していたと考えられます。

Image Credit: NASA Ozone Watch、NASA’s Earth Observatory/Joshua Stevens
Source: NASA気象庁
文/吉田哲郎

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