横浜点滴殺人「無期懲役は納得いかぬ」「控訴を」 被害者遺族ら悲痛

横浜地裁

 横浜市神奈川区の旧大口病院で2016年に起きた点滴連続殺人事件で、殺人罪などに問われた同院の元看護師久保木愛弓被告(34)に9日、無期懲役が言い渡された。判決を受け、遺族は代理人弁護士を通じて「納得がいかない」「検察には控訴してほしい」との悲痛な心情をつづったコメントを出した。

 男性=当時(88)=の長女は、被告の完全責任能力を認めながら、検察が求刑した死刑の判決が示されなかったことに「納得できる理由は判決の中で説明されなかった」とコメントした。

 法廷で判決の言い渡しを聞いた、別の男性=同(88)=の長男(61)は、亡くなった日が男性の誕生日だったことに裁判長が言及すると、無念さをかみしめるように視線を落とした。「身勝手な動機で罪のない人を殺しておきながら死刑にならないのはおかしい。検察には控訴してほしい」とコメントし、憤りをあらわにした。

 事件現場となった旧大口病院(現横浜はじめ病院)は代理人を通じコメントを出した。「患者に寄り添い、患者を守る病院で看護師がこのような恐ろしい行為に及んだことが正式に認定される結果になった。改めて被害に遭った患者さま、ご遺族に心よりおわびする」と謝罪した。

 判決後、裁判員を務めた20代の男性は記者会見で「判決を下す葛藤や苦悩があった。難しい経験だった」と振り返った。

© 株式会社神奈川新聞社