“無免許当て逃げ”の木下都議 信頼回復は…

3回にわたって「召喚状」が出されていた東京都議会の木下富美子都議が11月9日、7月の都議選以降初めて議会に姿を見せました。これまでの経緯を振り返ります。

木下都議は7月2日に無免許運転で当て逃げ事故を起こしていましたが、明らかにすることなく選挙活動を続け7月4日の東京都議会議員選挙で再選しました。その後すぐ、事故が明らかになると7月5日に当時所属していた「都民ファーストの会」から除名処分を受けました。都議会では会派に所属していることが必要なため、木下都議は7月7日に一人会派「SDGs東京」を立ち上げました。しかし議会の欠席を続け、説明もしてこなかったため、7月23日には都議会から1回目の辞職勧告決議を受けました。9月17日には自動車運転処罰法違反と道路交通法違反の疑いで書類送検されたのを受け、9月28日には2回目の辞職勧告決議を受け、10月4日には"都議会に出向くよう”1回目の召喚状が出されました。10月14日には2回目の召喚状が、11月5日には3回目の召喚状が出されるに至りました。

3回目の召喚状で"8日正午に議長室を訪れ、説明するよう”求められた木下都議はこの日、ついに再選後初めて登庁し「これからの議員活動で答えを出す」としました。

無免許運転による事故から4カ月となる中、木下都議はホームページも更新し、都民に向けたメッセージを掲載しました。また、自身の今後については「失われた信頼を回復できるよう、これからの議員活動で答えを導き出しながらご奉仕していきたい」として、議員を続けていく意向を示しました。ただ、木下都議には街の人から今も厳しい声が相次いでいます。

都議会からこれまで辞職勧告決議が2度にわたって出され、予定されていた委員会が開かれないなど、都議会全体への影響も及んでいます。こうした一連の流れについて、議員経験もある若狭勝弁護士は「議員としての身分を失わせる方法としてはリコールと除名があり、強制的に身分を奪うことはできる。ただし今回、曲がりなりにも議長の召喚状には赴いて説明したので、召喚状に従わなかったという理由で除名することは現実問題として、もはやできなくなったと思われる」と指摘しました。その上で「都議会の他の議員はほぼ、木下議員に辞めてほしいという思いを強く思っているので、木下議員が参加する委員会などは全部ボイコットするなどの動きもあると思う。都民全体の問題になるので、木下議員からすると自主的に辞職せず居座り続けることはかなり困難だと思う」と分析し、東京全体への影響も大きくなると判断して、自らが職を辞するということもあるのではとみています。

地方自治法による"議員を辞職させることができる”2つの手段についてもまとめました。

1つめは「除名処分」です。除名処分は「議員定数の3分の2以上の出席」の上で「4分の3以上の同意」によって処分となります。しかし若狭弁護士によりますと除名手続きを取るためには理由が必要で、今回2回の召喚状に応じなかったことに関しては「体調不良」ということもあり、都議会での義務違反として処分するのは難しいのではないかと話しています。

2つめは、住民による「リコール」です。「選挙区の有権者の3分の1以上の署名」によって住民投票が行われ「過半数の賛成」によって解職となります。しかしリコールは「議員当選から1年間はできない」という決まりがあるため、7月に当選した木下都議に対しては、仮にリコールになったとしてもまだ先の話になりそうです。

木下都議は「議員活動で答えを導き出す」としていますが、この日は委員会は開かれず、今後も同じようなことになれば都議会は止まってしまいます。東京全体の話として、木下都議がどういった形で失った信頼を回復しどう活動していくのか、今後の成り行きが注目されます。

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