児童の石木ダム感想文提供 長崎市教委が訓告 教諭側「無効」求め市公平委に審査請求

 長崎市立小の50代男性教諭が、昨年勤務していた市立小の社会科見学で東彼川棚町の石木ダム建設予定地を訪れ、児童の感想文を住民に渡したことなどを理由に、市教委は今年、文書訓告とした。教諭側はこの処分を「無効」として取り消すよう、市公平委員会に審査を請求。9日会見し、請求が認められなかった場合、市を相手に訴訟も検討していることを明らかにした。
 審査請求書などによると、教諭は昨年11月11日、担任のクラスを含む6年生を引率し、県と佐世保市が石木ダム建設を計画する同町川原地区を訪問。建設に反対する住民から話を聞くなどした。後日、児童の感想文を住民に提供。感想文は、住民を支援する市民グループのブログに一時掲載された。
 市教委は、保護者の許諾や校長の確認がないまま学校外に感想文を提供したこと、経緯確認のための文書作成を拒否するなど校長の命令に従わなかったことを問題視。今年7月に教諭を文書訓告とした。
 これに対し、教諭側は会見で、保護者の許諾がないまま感想文を提供することは「これまで慣行上許容され、プライバシーにも十分配慮した」と主張。ブログに児童の名前は掲載されなかった。命令に従わなかったとの指摘には「事実無根」と反論した。代理人弁護士は「石木ダム問題を取り扱ったことへの報復的な処分。今後この問題を教員が取り上げられなくなる」と強調した。
 審査請求は10月7日付で、同20日付で受理された。市教委学校教育課は取材に「審査中のためコメントできない」としている。

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