警察庁・皇宮警察の警察官らは“こんな理由”で処分されていた 情報開示請求で調べた結果は……

◆情報開示請求を使い、「処分」された警察庁職員を調べる

警察庁「警視」は「関係者」の服を脱がせて体を触ったりキスをしたり。皇宮警察「警部補」は女性風呂をのぞき見した上で盗撮――。警察庁の職員らがどんな懲戒処分や訓告処分を受けたかを知るため、フロントラインプレスが警察庁に情報公開請求したところ、2020年に限っても延べ42人が懲戒処分や訓告・注意を受けていたことが分かった。

開示請求では、警察庁(管区警察局、皇宮警察を含む)の職員と、国家公安委員会が任免する都道府県警察の「警視正」以上の職員(地方警務官)を対象とし、処分された者に関する公文書を請求した。

国家公務員の懲戒処分には、国家公務員法に基づき、重い順に「免職」「停職」「減給」「戒告」の4種類がある。懲戒処分に至らない非違行為については、各府省庁が内規に基づき、「訓告」「厳重注意」などの措置を講じている。

開示された文書によると、処分を受けた者は42人を数えた。このうち、国家公務員法上の懲戒処分を受けた者は前年より4人減の3人で、いずれも「減給」だった。では、この3人はそれぞれ、どんな事案だったのだろうか。

◆「関係者の服を脱がし……」 関係者とは誰か?

その1人、警察庁「警視」は2019年4月13日から翌14日にかけて、大阪市内の関係者宅において「関係者の服を脱がせた上、キスをしたり、体を触るなどした」とされている。その事実はのちに発覚し、2020年4月に「月額の10分の1・6カ月間」の減給処分となった。

この「関係者」がどういう立場の人か、開示された「処分説明書」には一切の記載がない。まさか、事件の関係者では…。その点もはっきりしなかったため、フロントラインプレスは警察庁広報室に対し、主に以下の4点を文書で質問した。

① 処分された「警視」は、いわゆるキャリアかノンキャリアか
② 「警視」は独身者か既婚者か
③ 「警視」と「関係者」はどのような間柄か
④ 服を脱がされるなどした「関係者」は被害届を出したのか、なぜ事件化しなかったのか。

返ってきたメールの答えは「個人に関わることなので、回答を差し控えさせていただきます」だった。

警察庁職員の処分に関する公文書

「警視」の事案と処分はこれまで公表されていなかった。

警察庁は職員が処分された際、「懲戒処分の発表の指針」に沿って発表するかしないかを判断している。すべての事案を発表するわけではない。指針によると、マスコミなどに公表する事案は①職務執行上の行為および関連する行為に係る懲戒処分②私的な行為に係る懲戒処分のうち停職以上の処分―などとなっている。これに照らし合わせると、「警視」の行為は私的なものであり、②の「停職以上」にも該当しないとして、公表していなかったということなのだろう。

◆「建造物侵入」「盗撮」でも減給だけ

懲戒処分の2人目は、皇宮警察の「警部補」。内容は女性風呂ののぞきと盗撮だった。2020年2月5日、場所は出張先の宿泊施設だった。「処分説明書」を引用しよう。■■の部分は、開示文書の黒塗り箇所である。

「……午後5時30分頃から同40分頃までの間、新潟県南魚沼郡■■■■■■■■■■■■■■■■■において、女性浴室内をのぞき見し、動画撮影機能付携帯電話で内部を撮影したものである。この行為は、刑法第130条(建造物侵入)、新潟県迷惑行為等防止条例第2条第3項に抵触するとともに、国会公務員法第99条に違反する」

新潟県条例の第2条は「痴漢行為等の禁止」、国家公務員法第99条は「信用失墜行為の禁止」である。ただし、罰則のある刑法や県条例に抵触するとされながら、この「警部補」は減給「月額10分の1・6カ月間」で済んだ。

懲戒処分の3人目は関東管区警察局の「技官」。2019年3月16日開催の「平成30年度■■■■■退職者送別会」の幹事として集金を担当し、費用として預かっていた現金約42万円を横領した。「技官」はまた、消費者金融2社から約615万円、職場の同僚らから約183万円、計約828万円の借金があることが発覚。2つの事案を合わせて減給「月額10分の1・6カ月間」の処分を受けた。

◆那須御用邸の施設で「みだらな行為」

一方、内規に基づく訓告は39人で、このうち「訓戒」は12人(前年7人)、「注意」は27人(同10人)だった。ここで目立ったのは、皇宮警察職員の多さ。3つの事案で19人に達している。

皇宮警察学校の校長である「皇宮警視正」をはじめ、警視、警部、警部補ら12人は2019年6月から2020年1月にかけて、未成年の皇宮巡査らと那須御用邸(栃木県那須町)の敷地内の施設や都内の居酒屋などで飲酒を繰り返し、訓戒や注意を受けた。

皇宮警察職員の処分に関する公文書

これとは別に、皇宮警察の男女の巡査4人は2019年6月27日、那須御用邸の施設でみだらな行為をしていた。4人のうち1人は既婚者。この4人はいずれも注意を受けた。

さらに皇宮警察の巡査部長2人と巡査1人の計3人は、いずれも既婚者でありながら都内で不適切な交際をしていた。

都道府県警の警視正以上で訓告を受けたのは2人。このうち宮崎県警の警視正は2019年6月から12月にかけて宮崎市内のゴルフ場などで許認可がからむ利害関係者とゴルフをしたとして、2020年3月に本部長訓戒となっている。

(フロントラインプレス・本間誠也)

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