7冠ウインカップが通算124勝目。SVGは年間13勝目、パスカーレも6戦3勝を記録/RSC第9戦シドニー2

 同一開催地4連戦の“クワドラブル・ヘッダー”に突入しているオーストラリア大陸最高峰のツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ第9戦シドニー・スーパーナイトが11月6~7日の週末に開催された。

 引き続きナイトレースが実施された今回のシドニー“ラウンド2”は、RSCキャリア初ポールポジションを獲得した初代TCRオーストラリア王者のウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)を出し抜き、2016年王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)が今季13勝目を獲得。

 日曜は前週2勝のディック・ジョンソン・レーシング(DJR)、アントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング/シェルVパワー・レーシング)がポール・トゥ・ウインを挙げてシドニーでの6戦中3勝目を手にすると、豪雨により赤旗短縮となった最終ヒートでは、今季限りでの勇退を決めているジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)が勝利を飾り、ここ18戦も優勝から遠ざかっていた7冠王者が最多勝記録更新のキャリア通算124勝目を手にしている。

 シリーズ参戦全ドライバーに「100%のワクチン接種を義務付ける」との方針により、先週末に開催されたスーパーナイト初戦終了後に、まだ2回目接種前のデビッド・レイノルズ(フォード・マスタング/ペンライト・レーシング)が当局による再調査を受けていたが、最終的に「シドニーでの残る3戦は出場停止とする」ことが確定。代わって“スーパーサブ”のルーク・ヨールデンがケリー・グローブ・レーシングのマスタングをドライブすることとなった。

 そんななか土曜最初の予選を制したのは、レース直前にイベント別メインパートナー制を導入するエレバスの施策により、9号車コモドアZBの新カラーリングを公開していた23歳のブラウンで、Q1を経てスーパーポール・セッションに進出すると、ウインカップとSVGを擁する強豪トリプルエイト・レースエンジニアリング勢を0.0285秒差で抑え、見事にRSC初ポールポジションを決めてみせた。

「本当に興奮した! 完璧な仕事をしたチームにとっても最高の瞬間だ。彼らとビールでお祝いするご祝儀を出さないとね(笑)。この2週間で3回も最前列を獲得できたのも素晴らしいことだし、まずはこのあとのレースがどうなるか楽しみだ」と、先週末もフロントロウを獲得していたルーキーのブラウン。

 しかし現地時間午後19時45分スタートの32周レース1は、悲願の初優勝を目指すブラウンにとっては失意の展開となり、ターン1ではウインカップとのポジション争いを制してホールショットを奪ったものの、ルーティンのピット作業時に右フロントホイールのナット装着に時間を要して万事休す。

「神様か誰かは……僕らにはまだ勝たせたくないのか、まだ勝つ時期ではないのか。僕に試練を与えているんだ」と肩を落としたブラウンはトップ10圏外に去り、代わって首位に立ったSVGが、僚友ウインカップとウィル・デイビソン(フォード・マスタング/シェルVパワー・レーシング)を従え、選手権リードをさらに拡大する今季13勝目、キャリア通算53勝を飾る結果となった。

 明けた日曜は雷雨の襲来が予報されるなか午前の予選が争われ、“シリーズ最速男”の称号を手にしつつあるパスカーレと、前日ウイナーのSVGがこの日の2ヒートに向けそれぞれポールポジションを確保した。

デビッド・レイノルズの代役として急きょ、参戦の決まった“スーパーサブ”のルーク・ヨールデン(フォード・マスタング/Penrite Racing)
初代TCRオーストラリア王者のウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)が土曜にRSC初ポールを獲得
前週に続き、土曜のレース1と日曜のレース3でナイトレースを実施。イベント別メインパートナー制を導入するErebus(エレバス)のブラウンがレース1の主導権を握る
そのブラウンは、ルーティンのピット作業時に右フロントホイールのナット装着に時間を要して万事休す
「少しラッキーな展開だったが、クルマは完璧だった」とレース1勝者のシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Red Bull Ampol Racing)

■雷雲襲来の最終ヒートは大荒れの展開に

 これで今季8度目の最前列からレース2のスタートを切ったシェルVパワー・マスタングのパスカーレは、予選時のわずかなシャワーから路面が回復し、完全ドライとなったことでハードコンパウンドのスリックタイヤを選択したSVGに対し、ソフト側を履いたことで優位に立ち、2位SVGと自身ひさびさの表彰台となったジェームス・コートニー(フォード・マスタング/ティックフォード・レーシング)を抑え、シーズン4勝目を挙げている。

 そしてついに雷雲がサーキットに到達したナイトセッションの最終ヒートは、事前の予測どおり大荒れの展開に。その最初のドラマはまずフロントロウ2番手に並んでいたチャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド)に襲い掛かり、予選後の再車検で25号車のフロントバーが「規定よりワイドだった」と判断され最後尾グリッド降格となってしまう。

 すると濃い水煙が立ち昇るなかスタートが切られたレースは、8番グリッド発進だったブライス・フルウッド(ホールデン・コモドアZB/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド)がエースの仇とばかりロケットスタートでターン1に首位で突入すると、続くターン2で前ヒート表彰台のコートニーとブロディ・コステッキ(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)が接触してバリアにスタック。いきなりセーフティカー(SC)の出番となる。

 車両回収後、7周もの長い先導走行を経てもトラック上の雨量は変わらず。今度はリスタートでSVGが窮地に陥り、コースオフしたレッドブル・アンポル・レーシングの97号車はターン1アウト側の濡れたグラベルをハイスピードで滑走する。

 しかしWorldRX世界ラリークロス選手権ドライバーからも一目置かれるグラベルでのマシンコントロールでことなきを得たSVGだったが、これで中段までポジションを下げてしまい、さらにルーティン作業時にはクルーを引き連れたアンセーフリリースにより勝負権を失うことに。

 この時点で先頭のフルウッドにもジャンプスタートの裁定が下ったことで、代わって首位を手にしたのがウインカップ。2番手にいたパスカーレらも続々とピット作業に向かうなか、終盤まで引っ張った“セブン・タイムス・チャンピオン”をレース展開も味方し、21周目にはパワーステアリングに問題を抱えていたジェイク・コステッキ(ホールデン・コモドアZB/マットストーン・レーシング)がバリアに刺さり、この日2度目のSCが発動する。

 このSCピリオドが運命の分かれ目となり、ここでピットを済ませ首位で復帰したウインカップを先頭に、3周の先導走行を経たところで、レースコントロールは「悪天候によるトラック状況の安全性の問題」により赤旗中断を宣言。各車10分間のピット待機後にレース成立となり、ウインカップが4月以来のキャリア通算124勝目を飾ることに。

 2位パスカーレの背後には、26番手の最後尾からアーリーピットを選択し、全車のアンダーカットを狙ったモスタートが「正直、どうやって戻ってこられたのかわからない」と笑いながら、混乱のレース展開にも助けられグリッド降格騒動を跳ね返す3位表彰台へのカムバックを果たした。

 このレースで23位に終わった僚友SVGとのポイント差をわずかに詰めることに成功したウインカップも「スタートではドライパッチを拾えたのか、なぜか蹴り出しが良く、クリーンエアの先頭走行で視界も良好だった。奇妙なことに、キャリアも終盤のこの歳になると勝利も思いがけない形で舞い込んでくるね(笑)」とご満悦。

 引き続きシーズンフィナーレの“祭典”となる『バサースト1000』に向けシドニー・モータースポーツパークでの連戦が続くRSCは、11月13~14日に今度は陽の光のもとで“スーパースプリント”戦の開催が予定されている。

レース2ではジェームス・コートニー(フォード・マスタング/Ticford Racing)がひさびさの3位表彰台を獲得
濃い水煙が立ち昇るなかスタートが切られたレース3は、ブライス・フルウッド(ホールデン・コモドアZB/Walkinshaw Andretti United)が8番手から飛び出すも……
ルーティンを終え、上位を目指すブラウン、ウィル・デイビソン(フォード・マスタング/Shell V-Power Racing)らが”3ワイド”のバトルを展開
21周目以降、3周の先導走行を経たところで、レースコントロールは「悪天候によるトラック状況の安全性の問題」により赤旗中断を宣言
今季限りでの勇退を決めているジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Red Bull Ampol Racing)が、キャリア通算124勝目を手にした

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