瀬戸内寂聴さん死去 作家・僧侶、99歳 文化勲章受章者

瀬戸内寂聴さん(京都市右京区、2017年4月撮影)

 「夏の終(おわ)り」「美は乱調にあり」など、情熱的な愛と生をつづった小説や、法話などの活動で知られる作家で僧侶の瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが9日午前6時3分、心不全のため京都市内の病院で死去したことが11日分かった。99歳。

 葬儀は近親者で行う。お別れの会は後日、東京で開く予定。

 徳島市の神仏具商の次女に生まれ、東京女子大在学中に結婚。卒業後、夫の赴任先の北京に渡るが、夫の教え子と恋に落ち、3歳の娘を残して家を出た。離婚後、少女小説や童話で生計を立てる。

 1957年「女子大生・曲愛玲(チュイアイリン)」で新潮社同人雑誌賞を受賞。「花芯」が酷評されて失意の歳月を送るが、61年の伝記小説「田村俊子」で再起。「かの子撩乱」や「美は乱調にあり」など優れた評伝小説を相次いで発表し、63年、2人の男の間で揺れる女の性と心理を綴った「夏の終り」で女流文学賞を受賞して、作家としての地位を築いた。

 古典を題材にした作品から現代文学まで幅広く発表し、著作は400冊を超える。主な著作に一遍を描いた「花に問え」(谷崎潤一郎賞)、西行の人間性に迫った「白道」(芸術選奨文部大臣賞)など。98年には「源氏物語」現代語訳(全10巻)を完成させた。

 執筆活動と並行して、信仰に生きた。51歳で出家し、京都・嵯峨野に寂庵を結ぶ。後に岩手県二戸市の天台寺住職も兼ね、京都と往来しながら、荒廃した寺の復興に尽力した。寂庵や天台寺では定期的に法話を開き、孤独や病、家族不和などに悩む人への思いに耳を傾け、励ました。

 社会的な活動や平和への行動にも力を注いだ。湾岸戦争の救援活動や米中枢同時テロへの報復停止を祈る断食を敢行した。東日本大震災時は原発再稼働に抗議し、89歳の時には東京の経済産業省前でハンガーストライキに参加。東北にも足を運んで、被災者を支援した。

 2006年に文化勲章。最晩年まで新聞や雑誌に連載を続け、本紙では1996年10月から2021年7月まで「天眼」を執筆した。

 先月に肺炎で入院。退院したが、その後、再び体調を崩し、病院で療養していた。

© 株式会社京都新聞社