ルーベンス・バリチェロが予選レースで今季初勝利、日曜はシボレーの“No.2”が制す/STC2000第11戦

 11月6~7日の週末にコルドバのオスカー・カバレンで開催された2021年のスーパーTC2000(STC2000)第11戦は、土曜クオリファイレースでTOYOTA GAZOO Racing YPF INFINIA(トヨタ・ガズー・レーシングYPFインフィニア)復帰2戦目のルーベンス・バリチェロ(トヨタ・カローラSTC2000)がシリーズ通算3勝目をマーク。続く日曜は「スタートボックスの制限を尊重しなかった」ドライバーが続出する裁定で、最終的に2016年王者のアグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)の僚友を務める“No.2”ベルナルド・ラヴァーが今季初勝利、キャリア通算7勝目を手にしている。

 11月末にはブエノスアイレスでの最終決戦を控え、タイトル争いも大詰めを迎えたSTC2000シリーズ。その初日公式練習ではルノー在籍時代にシリーズ連覇を達成しているプーマ・エナジー・ホンダ・レーシングのファクンド・アルドゥソ(ホンダ・シビックSTC2000)が最速を記録し、1000分の1秒刻みの緊迫した接戦が繰り広げられると、土曜予選ではシボレー勢が良好なペースを披露し、ラヴァーが2018年以来となる自身2度目のポールポジションを獲得した。

 土曜15時を前に開催された25分+1ラップの“クオリファイレース”は、シリーズ独自のハンディキャップ・システムにより、予選7番手タイムを記録したバリチェロと、フランコ・ビビアン(トヨタ・カローラSTC2000)のTGR勢がフロントロウからのスタートに。

 グリッドからの蹴り出しでビビアンの揺さぶりを退けたバリチェロは、入国制限で長らくご無沙汰になっていた2年目の“世界最速FFツーリングカー”を楽しげに操り、後続とのギャップをみるみる拡大していく。

 3番手にもニコラス・モスカルディーニ(トヨタ・カローラSTC2000)が続いてTGR陣営がポディウム圏内を堅守し、レース序盤はファビアン・シャナントゥオーニ(ホンダ・シビックSTC2000)とシボレーのラヴァーが4番手争いを繰り広げる。

 すると中盤に向けペースを上げたのが2019年チャンピオンのリオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)で、ルノースポール・カストロール・チームのエースカーである3号車は、シャナントゥオーニを仕留めて5番手へ。さらに勢いそのまま“論争を引き起こすであろう”強引なオーバーテイクでラヴァーもパスし、4番手に進出してくる。

スタンドに大観衆が詰め掛けたSTC2000のコルドバ戦。入国制限で長らくご無沙汰になっていた2年目のシリーズで、ルーベンス・バリチェロ(トヨタ・カローラSTC2000)が貫禄のパフォーマンスを見せる
公式練習では“B組“最速だったバリチェロは、予選7番手タイムながらポールを引き当て、流れを引き寄せる
中段の競り合いにフタをされた形のトヨタのエース、マティアス・ロッシは土曜8位、日曜9位に終わる

■フィーチャーレースではバリチェロに無情のペナルティ

 そのままルノー・フルーエンスGTはトヨタ艦隊に迫ったものの、モスカルディーニは巧みなディフェンスラインでこれを封じ、前を行く2台の護衛役をまっとうしてチェッカー。

 この結果、バリチェロが盤石のレース運びで今季初勝利を飾り、ビビアン、モスカルディーニのトヨタ・カローラSTC2000が表彰台を占拠。4位でフィニッシュラインを通過したペーニャは、やはり「ラヴァーに対する危険な操作」によりタイム加算ペナルティが科され、2ポジションダウンの6位に。代わってエースのカナピノを前に行かせたシボレー勢の2台が、獲得ポイントを積み増す結果となった。

 明けた日曜9時からの“フルタンクテスト”を経て、迎えた午前11時50分からのフィーチャーレース。スタンドには大観衆が詰め掛けるなか、40分+1ラップの勝負に向け首位発進を決めたバリチェロだったが、ここでグリッド停止位置を問題視したレースコントロールから「スタートボックスの制限を尊重しなかった」として、ブラジルの“鉄人”に対し無情のピットスルー・ペナルティを言い渡す。

 さらに背後にいたトヨタの2台も、スタート直後に3番手モスカルディーニがビビアンのリヤを“擦った”せいで2番手のカローラSTC2000はたまらずスピン。これがセーフティカーの引き金となり、TGR艦隊は早くも崩壊する形となってしまう。

 これで首位を引き継いだのがシボレーのラヴァーで、ルノーのペーニャと自陣のエース、カナピノを引き連れてゴールラインへ。しかしここでも3位フィニッシュのカナピノに対し「スタートボックスの制限を尊重しなかった」との裁定が下り、代わってホンダのアルドゥソが3位を継承する結果に。

 その波乱を横目に勝者ラヴァーには不幸が降り掛かることもなく、ポジションを譲った前日の借りを返す今季初優勝を手にしている。

 これでランキング首位カナピノは188点とし、2位ペーニャが178点で追随。以下129点のジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)、124点のアルドゥソが追い、トヨタのエースであるマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラSTC2000)は、この週末の不調で123点に留まり5位へと後退。シーズン最終戦”グラン・プレミオ”として開催のブエノスアイレス、オスカー・ファン・ガルベスでのタイトル決定戦は、11月27~28日の週末に雌雄が決することとなる。

“鉄人”バリチェロが、2年目の”世界最速FFツーリングカー”で通算3勝目を手にした
週末を通じてスピードを維持したシボレー勢は、日曜にベルナルド・ラヴァー(シボレーYPFクルーズ)が今季初勝利
土曜は荒れ気味のレースを見せた2019年チャンピオンのリオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)は、日曜の2位で選手権上のギャップを詰めることに成功した

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