憲法改正への大前提「自衛隊は軍隊」だ|玉木雄一郎 11月7日、玉木雄一郎代表はツイッターに「憲法の議論をするだけで袋叩きにするようなスタイルが忌避されていることに気づかないと、野党が多くの国民、特に若い世代に支持されることはないでしょう」と投稿。「比例は1議席も取れない」と言われながらも、「改革中道」「対決より解決」の立場を貫き、選挙で躍進した国民民主党。惨敗した立憲民主党とは何が違うのか。2021年2月号(2020年12月21日発売)に掲載されたインタビューを特別公開!(※肩書等は当時のママ)。

枝野幸男代表はなぜ逃げたのか

(写真撮影/佐藤佑樹)

──2020年9月15日、立憲民主党との合流新党に参加しなかった国会議員が「新・国民民主党」を結成。立憲民主党と合流しなかった最大の理由は何ですか。

玉木 いっぱいあるんだけど(笑)。でもいちばん大きいのは、会社のM&Aもそうなんですが、社長と社長が最後は会わなきゃいけないのに、いまに至るまで公式な党首会談が実現していない。枝野さんは福島瑞穂さんとは会っているんですけどね(笑)。

合流するにせよしないにせよ、重要なのは腹を割ってトップ同士が話すことでしょ。何度も要請したのですが、最後まで実現しませんでした。

──なぜですか。

玉木 わかりません。この点は非常に残念です。我々はコロナ禍のなかで、いろいろな政策提案をしてきたという自負がある。「右だ」 「左だ」というかつての55年体制のようなことを国会のなかでやっても、国民から見たらなんの役にも立たない。

与党だろうが野党だろうが、この未曾有の危機に対しては、知恵がある者が知恵を出して、一人でも多くの国民を救うのが政治家だと思う。

10万円の定額給付金も、3月9日に私が最初に提案しました。最後は公明党がやったことになっていますが、大学生の学費猶予、家賃・住宅ローン支払い猶予など、ほかにも国民民主党発信の政策はたくさんあります。

時の権力を批判するのも野党の機能のひとつなんだけども、こればっかりに力を入れることは国民が求めていることからズレているんじゃないか。

政策提案型の改革中道政党としてやっていこうというのが我々国民民主党のスタンスであり、イデオロギーの前に、目の前にいる国民とか課題にもっと真摯に向き合う政治をやりたい。その志で集まったのが、新・国民民主党です。

イデオロギーでは飯は食えない時代ですよ。

──合流しなかった理由のひとつにイデオロギーの問題があった、と。

玉木 皆さんから見て、立憲民主党は左に寄って行っている感じがするのではないでしょうか。

仮に政権を取ろうとするのであれば、過半数の国民に支持されなければならない。国民のなかには左の人もいますが、やはり中道から穏健保守の国民から支持される政治集団をつくらなければ、政権なんて担えないし、担うべきではない。

正直、しんどいですよ。ある種の正論を貫いていこうというのは。選挙は大事だけれども、国民とどう向き合うか、政策がなければ国民の信は得られないでしょう。意外に見ていると思いますよ、国民は。

合流をめぐってあることないこと書かれましたが(笑)、この点も合流しなかった理由のひとつです。

戦略家だった安倍晋三前総理

──2019年4月、小沢一郎さん率いる自由党が国民民主党に合流しましたが、結局、小沢さんにぶっ壊された。

玉木 小沢先生はまあ……(笑)。小沢先生云々ではなくて、真ん中に集まってそれで党が大きくなっていくのはいいんですが、左に集まる形で大きくなっていっても左は共産党でつっかえているじゃないですか。

真ん中から右に右に展開していく形で拡張していかないと、政権は取れませんよ。自民党の支持層を崩さなければ政権は取れないんですから。

政治は数ですから大きくなることは否定しないけど、左方展開では未来はありません。安倍政権がうまかったのは、右を固めつつ左に展開していったこと。財政拡張や働き方改革などは、世界的に見れば左派政権がやることですよ。うまい戦略でしたね。

ですから、いまの野党は左を固めつつ右に展開しなければいけないのに、さらに左に行こうとしているように見える。

エネルギー政策にしても、原発に頼らなくてもいい状態なら頼らないほうがいいんだけれども、「原発ゼロ」をドーンと掲げて問題がすべて解決するわけではない。使用済み核燃料の問題や日米原子力協定があり、中国や韓国が原発を推進しているなかで、技術者が日本からいなくなっていいのか。

安全保障の観点、内外のさまざまな情勢、そういった現実的な課題に向き合いながらロードマップを示していく。我々国民民主党は、リアリズムを追求する政党でありたい。

──枝野代表、立憲民主党はなぜ提案型になれないのでしょうか。野党ですから政権を批判するのは当然ですが、批判ばかりで提案が何もない党に国民は投票する気にはなれない。

玉木 たとえば憲法の問題もそうですが、共産党との連携を重視するあまり提案ができなくなっているのではないでしょうか。本来、枝野さんは憲法改正論者だったのですが。

──『文藝春秋』(2013年10月号)で、かつて「改憲私案」を発表しています。

玉木 2017年に立憲民主党ができた経緯が「反小池」であり、選挙では共産党と調整を行った。このことが、ある種の制約になっている可能性はあると思います。

憲法改正に他国が介入する危険性

──2020年11月26日、憲法審査会で国民投票法の改正案をめぐる実質的な審議がようやく行われましたが、立憲民主党と共産党は「さらなる議論が必要だ」とやはり後ろ向きです。

玉木 中身はまったく問題ないんですよ。駅の構内やショッピングセンターなどでも国民投票ができるようにすることは、いまの国政選挙でも行われていることです。

一般の投票と同じように、投票の利便性を高めるための7項目を改正しましょうということですから、まったく問題ありません。立憲民主党と共産党は、この先に行くと改憲発議が待っている、だから反対だというロジックなんでしょう。

この改正案が国会に提出されてから2年以上も経っている。速やかに採決し、次の課題に移るべきです。我々は賛成しますよ。

CM規制や外国人寄付規制、この2点を議論し解決していくほうがよほど重要です。たとえば、憲法を改正しようというときに国民投票運動というものをやるのですが、その運動に対して外国人の寄付をまったく禁止していないんですよ。

さらに、ネット広告がテレビや新聞を抜きましたが、この広告にもまったく制限がない。この2つを組み合わせると何が起きるかと言えば、どこの国とは名指しはしませんが、ある国の勢力がお金を大量に入れて、この改正はダメですよというプロパガンダを日本国内で展開することが可能です。

護憲派だけでなく、実は保守派のほうも理解が足りない。米国の大統領選挙を見ればわかるように、外国の重要な選挙に他国が介入することはよくあるわけで、この点をしっかり押さえておかなければ、憲法改正が他国によって歪められてしまう。

──安倍政権が掲げた改憲4項目(自衛隊の明記・緊急事態対応・合区解消・教育充実)については賛成ですか、反対ですか。

玉木 必ずしも賛成ではありません。2012年の自民党憲法改正草案との関係がよくわからないんですよ。どっちが生きていてどっちが死んでいるのか、と尋ねても曖昧な返事しか返ってこない。

──石破茂さんは、2012年の改憲草案にこだわっていますよね。

玉木 そうですね。いいか悪いかは別にして、2012年の改憲草案のほうが体系的ですよ。

本丸は憲法9条ですが、自民党内でもまとまっていないのでこの問題は後述するとして、緊急事態条項についてはコロナ時代とどう向き合うかが重要であり、憲法改正しなくても法律でできると思いますね。

唯一できないのは、戦争やコロナのような緊急事態で選挙ができないときに、国会議員の任期をどうするのかという点。延長できるようにするためには憲法改正が必要です。

教育の無償化についても法律でできるので、やってもやらなくてもどっちでもいいというのが正直なところです。維新のために書いているのかな(笑)。

合区解消については議論は必要でしょうが、個人的には賛成です。徳島と高知の合区の選挙を戦いましたが、1台の街宣カーで広い範囲を回らなければいけない。1票の格差の問題もわかりますが、候補者の声を聞く権利を有権者から奪っているのも事実。日本は地方をもっと大事にすべきです。

ヨーロッパがなぜ地方を大事にするかと言えば、国境線だからですよ。地方とか田舎に住んでいる人を軽んじると、すぐ他国から侵略されてしまう。日本は幸か不幸か海に囲まれていますから、周辺の部分を軽んじる傾向がありますね。

国境線をどう守っていくのか、この観点からも地方の在り方を考える必要があるでしょう。

平和主義の定義とは何か

──国民民主党は先日(2020年12月7日)、条文案を含む憲法改正に向けた論点整理を発表しましたが、なぜいまだったのでしょうか。

玉木 いままではできなかったからですよ(笑)。

憲法は「国のかたち」を示すものですから、1項、2項を取り出して云々ではなくて、序文も含めてやはり全体像を示さなければならない。そうしなければ、我々が何を考えているのか、国民に示すことはできない。

野党から全文、つまり包括的な憲法改正条文案が出ることはいままでなかったこと。我々はこれを持って全国を回り、国民の皆さんの意見を聞いていこうと思っています。

__●憲法9条
⑴日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
⑵前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。__

──憲法9条についてはどのように。

玉木 憲法9条の議論、安全保障の議論の本質は、日本という国はどういうときに武力行使をするのか、もっと突っ込んで言えば、どういう時なら戦争をするのかという境界線を国民と共有するプロセスにあります。

まずは、自衛隊を軍隊として位置づけることが大前提。そのうえで、自衛権の範囲をきちんと憲法に書き込むことが重要です。

日本国憲法の3大原則のひとつである平和主義。では、この平和主義の定義とは何なのか。非武装中立で真っ裸で立っていることが平和主義ではない。かといって、地球の裏側にミサイルを撃ち込むことも平和主義ではない。非武装中立から現在の米国の中間、おそらくそこに日本の平和主義があるのではないでしょうか。

自分の国は自分で守ることが基本ですが、中国の台頭、米国が世界の警察官ではなくなりつつあるなかで、日本はどこまでやるのか、どこからはやらないのか、しっかり議論していきたい。

中途半端な「9条2項維持」

──安倍前総理が示した「憲法9条1項、2項維持・自衛隊明記」には賛成ということですか。

玉木 9条の2項を残したまま、自衛隊を明記する。つまり、戦力不保持と立派な戦力である自衛隊、この矛盾がこのままでは永遠に解消されません。いままでと同じような不毛な憲法議論が続いてもいいのか。この議論から自衛隊の皆さんを解放してあげないと、かわいそうですよ。

現実的だという評価もあるでしょうが、私は安倍前総理のこの案は極めて中途半端、場当たり的であり、あまり評価はしていません。であれば、9条の2項を削除したほうがいい。

自衛隊という組織を明記することは、憲法議論としてはそれほど重要ではない。むしろ、自衛隊が行使する「自衛権」の範囲をきちんと憲法のなかに定義づけるほうが重要ではないでしょうか。

──自衛権行使の範囲を明確化することなど本当にできるのでしょうか。

玉木 簡単だと思いますよ。いちばんシンプルなのは、いまの新3要件を書くこと。
①密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある。
②我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない。
③必要最小限度の実力行使にとどまる。

限定とはいえ集団的自衛権はダメだと主張する人は、旧3要件を憲法に書けばいいじゃないですか。①我が国に対する急迫不正の侵害があること。
②これを排除するために他の適当な手段がないこと。
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。

なぜ、こういう議論をしないのか。

個別的自衛権に限るという人ほど憲法は一言一句いじるなと主張しますが、いじらない憲法のなかで無限に解釈が拡がっていることは許している。矛盾していると思いますよ。

憲法上、個別的自衛権しか認められていないと主張するのであれば、個別的自衛権を憲法に書けばいい。なぜ、その改正を主張しないのか。

「習近平国賓来日」は絶対ダメ

──中国の王毅外相が「日本の偽装した漁船が絶えず釣魚島周辺の敏感な海域に入っている。このような船を入れないようにすることが大事だ」などと無礼な発言をしましたが、尖閣についてはどのように。

玉木 ぎりぎり実効支配はしていますが、これだけ連日、中国当局の船が侵入しているわけですから、なぜ茂木外相は反論しなかったのか。私はあの場で反論すべきだったと思います。

尖閣がこのような危機的状況にあるなかで、習近平国家主席を国賓として招くようなことは絶対にすべきではない。国賓として招くことは、いまのこの状況を容認するというメッセージになりますからね。

バイデンさんが尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用対象であると明言したことはよかったとは思いますが、米国にどう守ってもらうかよりも、わが国の手で尖閣をどう守るかのほうが重要です。海保も沖縄県警も海自も頑張ってくれていますが、いまのままで実効支配が保てるのか。不十分だと思います。

──憲法改正の機運が高まってこないのは、具体的な事例を挙げないからではないですか。たとえば、尖閣の場合だと現憲法があるからここまでしかできない、憲法改正すればここまでできるようになるといった事例を挙げれば共感する国民も増えると思いますが。

玉木 尖閣が守れないのは憲法上の制約ではないと思います。2019年に、我々国民民主党はグレーゾーン事態に切れ目なく対処できるよう「領域警備法案」を提出しました。

これから先、尖閣で何が起きうるかというと、「漁民」に武器を持たせた民兵が1,000隻から3,000隻の漁船で尖閣に押し寄せてくる、もうひとつは、ドローンを何千機も飛ばしてくる、ということが想定されます。

新たな事態に対して、日本は対応することができない。自衛隊を出動させると、中国側から「おまえらが先に軍隊を出してきた」と言われてしまう。警察権では対応できないけど、軍隊を出すと向こうに付け入る隙を与える、白でもない黒でもないこのグレーゾーンを彼らは狙ってくる。

いま非常に憂慮しているのが、中国海警局の所属が変わり、軍の指揮下に置かれたということ。中国海警局の任務や権限を定めた法律の草案には、武器使用を認めると明記されている。警察比例の原則があるので、向こうが上げたらこっちも上げないと対応できません。

いずれにしても、日本の法制度上このグレーゾーン対応が非常に弱い。法整備ももちろんですが、艦船、人員の数を増やす必要がある。実効支配が非常に難しい方向になりつつあるということを、国民にも理解していただく必要がありますね。

憲法改正は53条からやるべき

──先の予算委員会で「1発目の国民投票を憲法9条でやると荒れる」とご発言なさいましたが、ではどの項目からやるべきなのでしょう。

玉木 私は憲法53条からやるべきだと思います。

__●憲法53条
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。__

この条文には期限がないので、政府はいつまでも逃げることができるし、野党もこれに対して「逃げるな」「違憲だ」などと責めたてる。

であるならば、2012年の自民党憲法改正草案にあるように、「要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない」と期限を入れ、憲法改正すればいい。野党もこれなら反対できないでしょう。与党も自分たちの案ですから、反対するわけにはいかない。

お試し改憲という言葉は好きではないですが、与党も野党も反対しようがないところから変えていかないと、100年経っても不磨の大典のままでしょう。

竹下登元総理がかつて「いまの憲法のまま国民投票にかけてみてもいい」という発言をしたと聞いていますが、こういう手法もありかなと思いますね。

──「安倍政権の間は改憲論議はできない」と立憲民主党などは主張していましたが、菅政権になっても議論には消極的です。

玉木 相手がどうこうではなく、自分たちが作り出したい価値とか、国家観とかを示さなければいけない。「国のかたち」をもっとも示せるのが憲法だ、と私は思っています。

憲法とは「constitutional law」ですから訳しにくいのですが、構成する法体系、つまり「国のかたち」です。

──「国のかたち」を示せない党はいらない、と。

玉木 それぞれの党が自らの目指す「国のかたち」を示すべきであって、それを憲法で示すのがいちばんわかりやすいのではないでしょうか。憲法審査会の場でそれを戦わせればいい。

憲法議論を封じる立憲民主党

──憲法改正をめぐって玉木代表が自民党や日本維新の会の幹部らと会談を重ねていることに、立憲民主党からは「野党連携の足並みを乱す」「選挙協力などに影響する」との批判もあります。

玉木 立憲民主党は「一言一句変えてはいけないという立場ではない」と憲法への考え方をまとめておられますが、であるならば、憲法審査会での審議に消極的なのはなぜなのか。

立憲民主党の綱領には「立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います」と明記されています。にもかかわらず、議論そのものを封じるような言動は熟議の民主主義に反する。

──国民から見てわかりにくいのが、国民民主党は立憲民主党などとの衆院共同会派を離脱しながら、立憲民主党、共産党との選挙協力は行うという点だと思います。前原誠司さんはかつて「共産党はシロアリ」と批判し、共産党との選挙協力に否定的な見解を語っていました。

玉木 我々は共産党とは組んでいません。私のところの選挙区(香川県第2区)では候補者を立てられていますし、前原さんも同じです。

1対1の選挙ですから、調整するところは調整してきたというところは否定しません。ですが、選挙協力ではない。強いて言うならば、戦術的調整でしょうか。「比例は公明党に」とは違うと思いますよ(笑)。

──「是々非々」「中道路線」では選挙で埋没してしまうのではないか、との危機感みたいなものはないんですか。

玉木 それはあります。「なんでも反対」を掲げたほうが目立ちますからね、いい悪いは抜きにして。しかしそこは踏ん張って、「なんでも反対」という安易な流れに乗らないようにしなければいけない。そのために、我々16人は集まったわけですから。

協力すべきところは協力する

──自民党と連立を組む可能性は。

玉木 連立を組む、組まないよりも、いまの苦境を乗り越えるためにも、与党対野党という立場を超えて協力すべきところは協力しなければならない。我々の提案する政策でいいものがあれば、パクってもらっても構いません。

私がいまいちばん懸念しているのは、2020年、G20のなかで中国だけがプラス成長だということ。来年は8%成長に戻るとOECD(経済協力開発機構)は予測していますが、日本は戻りが遅い。戻って1.5%ですから。

日中間の経済格差がどんどん開いている状況のなかで、「政争は水際まで」という言葉が示すとおり、コロナ不況を乗り越え、力強い日本を取り戻すための協力は惜しまずにやりたい。

──最後に、菅内閣についてどのような評価をしていますか。

玉木 堅実、着実によくやっておられると思います。7年8カ月にわたって、官房長官として安倍内閣を支えてこられただけのことはありますよ。さすがです。

ただ、携帯電話の料金値下げ、不妊治療の保険適用、脱ハンコなどどれも個別の政策としてはいいのですが、たとえばトランプ大統領やプーチン大統領が政権を発足する際に「ハンコをなくします」などとは言わないでしょう(笑)。

国際的な熾烈な競争、国益をかけた競争のなかにおいて発するメッセージとしては弱い、と言わざるを得ない。

菅総理には10年後、20年後、日本はどういう方向を目指すのか、確固たる国家観を明らかにし、世界に向けて強烈なメッセージを発信してほしい。我々も菅総理を凌駕するほどの国家観、国家の生存戦略というものを示していきます。

(初出:月刊『Hanada』2021年2月号)

著者略歴

玉木雄一郎

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