56歳独身、資産360万円「残り13年の住宅ローン、定年後も払える自信がない」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、56歳、独身の会社員の方。老後資金があまり貯められていない状況のなか、役職定年で給料が2割減。あと13年残っている住宅ローンを支払い続けるのに不安があるといいます。今から何ができるでしょうか? 家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。


56歳、独身です。老後の生活に向け、3年前に中古マンションを購入しました。価格は1,160万円、頭金に200万円を入れ、960万円のローンを16年間で組みました。69歳で完済です。

55歳の役職定年で、給料は2割強下がりました。それでも今のところ、毎月の返済はできています。ですが、固定資産税が重く感じますし、老後、支払いを継続できるのか心配です。

また、もともとお金はあるだけ使ってしまうほうで、貯金ができません。老後資金はもちろん、繰り上げ返済用の貯金もできず、困っています。

老後は住宅だけなんとかできれば、年金で暮らしていけるのではないかと考えています。そのため、なんとか住宅ローンを完済し、安心した老後を迎えられるようにしたいです。貯金の仕方、ローンの返済の仕方を教えてください。

【相談者プロフィール】

・56歳、会社員、男性、離婚歴あり、子ども独立済み

・手取り収入月収20万2,000円、年間ボーナス約40万円

・貯蓄額:貯金約80万円、企業型DC約280万円(定期預金)退職金となる予定

・毎月の支出の目安:19万4,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(住宅ローン+管理費):5万8,000 円

・食費(外食含む): 3万2,000 円

・水道光熱費(電気・水道): 1万4,000 円

・通信費(スマホ1台・ネット回線):2万5,000 円(ゲーム課金、キャリア決済が多い)

・生命保険料:4,000 円

・日用品代:5,000 円

・医療費:2,000 円

・交通費:5,000 円

・被服費:2,000 円

・交際費:3,000 円

・娯楽費:4,000 円

・し好品(たばこ):1万5,000 円

・その他:2万5,000 円

FP:終の棲家を手に入れるための住宅ローン返済も大切ですが、老後資金も多くはないことから、老後の暮らし方なども合わせて検討を始めたほうがよさそうです。また、働けるうちに老後資金を増やすことも考えていきましょう。

DCの運用方法を再検討し、資産を増やせる可能性を広げる

まず、気になるのが老後資金の少なさです。その改善の意味でも、会社でしているDC(企業型確定拠出年金)は、定期預金ではなく、運用で少しでも増やすことを考えていきましょう。投資を始めるのは少し怖いと感じるかもしれませんが、S&P500のような指標に連動するように作られたインデックスファンドという投資信託を中心に長期的に運用していけば、大きく損失を出すという事態は避けられるでしょう。むしろ長期間継続できれば、資産を増やす可能性も大きくなります。

2022年5月から、厚生年金に加入できる働き方をしていれば、70歳までDCに加入することができるようになります。受け取り開始年齢は最大75歳まで延長できます。つまり、ご相談者も長期運用による恩恵を受けられる可能性があるのです。

もしマッチング拠出(会社が拠出する掛金に加え、加入者が掛金を上乗せして拠出すること)が可能であれば、家計の支出を絞って掛け金をねん出し、投資する金額を増やすこともよいでしょうし、もしなければ、可否は規約によりますが、65歳までiDeCoに拠出をすることも選べます。極端に欲張ることはできませんが、60歳を過ぎてからも働き続けることを計画できれば、DCのメリットを生かし、老後資金を増やせる可能性があるのです。

では、マッチング拠出またはiDeCoの掛け金をねん出するために、支出はどう見直すとよいでしょうか。

「その他」と「使途不明金」が支出見直しの鍵

現状は、役職定年で収入が減っても、月の収支は黒字。極端に悪くはないと思います。ですが、これから先、再雇用、年金生活と、生活の仕方が変化していくと、徐々に収入は減っていくと思われます。ですから、今のうちに支出をコントロールできるよう、見直しをしておきましょう。

住宅ローン、食費、水道光熱費など基本的な生活費は極端に多くはないと思うのですが、ゲーム課金、キャリア決済などを利用する通信費、タバコに使う嗜好品代、使途不明金を含むその他の支出が多めかと思います。

これらのうち、減らせる支出はないか、検討してみてください。例えば、ゲーム課金には上限を設ける、キャリア決済はどのようなものにお金を支払っているのか振り返るなどしてみると、支出にブレーキをかけられたり、ムダに気が付いたりし、支出削減につなげられることがよくあります。

また、少し面倒かもしれませんが、使途不明金をなくすということも、支出削減につながる可能性があります。自分は何にお金を使っているのかを知ることにより、その支出が必要なものであったかどうかを考えるきっかけとなりますし、考えられれば、支出にメリハリを付けていくこともできるようになります。これができれば、余剰金をいまより増やし、貯金を増やしていけることにもなるでしょう。

住宅ローンの返済は、60歳以降も収入を得ることが大切

ご相談者の65歳からの年金受給額はいくら程度と「ねんきん定期便」に書いてあるでしょうか。もし仕事をやめてしまったら、69歳の住宅ローン完済まで、年金でやりくりしなくてはいけません。平均的な厚生年金の受給額は、男性で約16万円ほど。この金額はこれまでの収入により変わるので、あくまで目安にしかなりませんが、この受給額で住宅ローンを返済して、生活もしていくことができるかということを考えなくてはいけません。

収入不足だからと家を手放すとしても、その後に住む賃貸住宅を探すことが、年齢的にも金額的にも難しい可能性があります。となると、住宅ローンをなんとか返済することを考えたほうがよさそうです。

実現するには、やはり「60歳以降も収入を得る」ということが大切になります。今年から70歳まで雇用することが、企業の努力義務になりました。今後、どういう形であれ、70歳まで働ける場所が増えてくると思います。そして年金受給は1カ月繰り下げるごとに0.7%増えていきます。

収入増の工夫と節約の組み合わせで完済を目指せる

できるだけ働き、厚生年金に加入してDCまたはiDeCoを続け、収入の範囲で暮らし、年金受給は繰り下げる。これらを続けていけば、70歳以降、住宅ローンがあっても多少は暮らしやすい状態を維持していけるのではないかと考えます。

例えば、年金額月16万円の人が、70歳まで受給を繰下げした場合、42%増えることになります。月の受給額は22万7,200円にもなります。68歳まででも、25.2%増しの約20万円です。

このように、収入増の工夫と節約の組み合わせをさまざまな方向から考え、自分が良いと思える組み合わせを見つけて実行していただければ、住宅ローンを完済した後の明るい老後生活が見えてきます。やり方次第では、必ず完済できます。ぜひ、頑張っていただきたいと思います。

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