2021年の上場企業の早期・希望退職者募集人数が10月31日までに72社、1万4505人に達した。
前年同期(73社、1万5642人)から1社、1137人少ないが、実施企業は10月末時点で、2年連続70社を超えた。また、対象人員も3年連続で1万人を超え、高水準が続いている。
業種では、2年連続でアパレル・繊維製品(10社)が最多。実施企業は72社のうち、赤字企業が44社(構成比61.1%)と6割を占めた。だが、黒字企業による大規模な実施も散見され、募集人数1000人以上は5社と前年同期(2社)から3社上回った。業績悪化を理由にした中堅企業の小規模募集と、大企業の大型募集の“二極化”は、アフター・コロナに向けた新たな潮流となる可能性が高い。
- ※本調査は、早期・希望退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計した。ただし、実施が翌年以降の企業は除く。原則、『会社情報に関する適時開示資料』2021年10月31日公表分まで)に基づく。
業種別 アパレル・繊維製品が10社で最多超
10月末までに早期・希望退職者の募集が判明した上場企業72社のうち、業種別ではコロナ禍で通勤着や外出着を中心に、衣料品の販売不振が長引くアパレル・繊維製品が10社で最多。
10社の内訳は、百貨店を主力に店舗展開するメーカー4社、靴メーカー2社など。次いで、生産拠点や事業集約が進む電気機器が9社と続く。
サービス業5社のうち、「観光」(4社)は10年ぶりに募集企業が現れた。運送は6社のうち、5社が鉄道・航空の「交通インフラ」で、コロナ禍の影響が大きい業種が目立つ。
通期利益別 赤字企業が6割
募集企業の直近本決算の当期利益をみると、6割(構成比61.1%)に該当する44社が赤字だった。アパレル関連は、各社の募集発表直近で10社すべてが赤字。サービス業のうち、観光4社はいずれも赤字。外食も実施した企業4社はすべて赤字だった。
一方、募集人数1000人以上の5社では、観光のKNT-CTHDを除き、4社は黒字だった。
人数別 募集人数1000人以上の大型募集5社判明 2001年以来の水準
募集人数(募集時点の人数が非開示の場合は応募人数を適用)は、日本たばこ産業がパートタイマー、子会社の従業員を合わせて計2950人で最多だった。次いで、本田技研工業(2000人)KNT-CTHD(1376人)などが続き、1000人以上の募集企業は計5社にのぼった。
これは金融危機時の2001年の6社に次ぐ、20年ぶりの高水準。
一方、募集人数が100人以下(若干名含む)は、36社(構成比50.0%)と半数を占めた。アパレルや外食、専門商社などの中堅企業のほか、製造業、情報通信(テレビ局)、サービス業など、広範囲に及ぶが、部門別の募集や子会社だけの実施も相次ぎ、募集規模の“二極化”が進む。
大規模募集を行っているにも関わらず”公表しない”企業も
2021年の早期・希望退職は前年同期と比べ、件数・募集人数とも微減で推移している。一方、長引くコロナ禍が直撃した業種を中心に、募集人数が100人未満の小規模募集は引き続き高い水準で発生。さらに、募集人数1000人以上の大型募集も10月末までに5社判明した。
このクラスは一部を除き、業績に問題なく、経営資源に余裕のある大企業が業務の効率化や中長期的な経営見直しで全社的な募集が目立つ。
また、大規模募集を実施しながら、応募人数を開示しない企業もある。本田技研工業、パナソニック、近鉄グループHD(1000人未満)は募集・応募人数を開示資料で公表していない。
大規模な社員の退職は、株主以外にも社員、取引先などのステークホルダーにとっても関心は高い。実施に当たりこうした人事面での“透明性”が、今後は求められる。
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