分裂した小惑星が刻んだ双子のようなクレーター、欧露の火星探査機が撮影

【▲火星のアルカディア平原にある並んで形成されたクレーター(左上)(Credit: ESA/Roscosmos/CaSSIS)】

こちらは火星の北半球に広がるアルカディア平原の一部(北緯39.1度・東経174.8度付近)を撮影した画像(疑似カラー)です。左下のスケールバーは長さ3kmに相当します。やや見切れていますが、画像の左上には落花生のような不思議な形をしたクレーターが捉えられています。

欧州宇宙機関(ESA)によると、このクレーターは2つの小惑星が接近したまま同時に火星の表面へ衝突したことで形成されたと考えられています。2つの小惑星は最初から別々に存在していたのではなく、もともと1つだった小惑星が火星の大気圏へ突入した際に分裂して2つになったようです。並んで形成された2つのクレーターは直径が同じくらいですが、個々のクレーターのサイズは衝突した天体のサイズに左右されることから、2つに分裂した小惑星のサイズもそれぞれ同じくらいだったと予想されています。

分裂した小惑星が同時に衝突したことで衝撃波の相互作用が生じ、飛び散った噴出物は羽を広げた蝶のような形でクレーターの周囲に堆積しています。2つのクレーターを中心として放射状に広がる線状の模様が残っていることから、噴出物が形成した地形の保存状態は良好とみられています。ちなみにクレーターの北(画像の右側)には孤立した大きな丘が幾つか写っていますが、これらの丘はクレーターが形成される前から存在していたと考えられています。

画像は欧州およびロシア共同の火星探査ミッション「エクソマーズ」の周回探査機「トレース・ガス・オービター(TGO)」に搭載されている光学観測装置「CaSSIS」を使って2021年6月7日に撮影されたもので、ESAから「Double strike」のタイトルで2021年11月5日付で公開されています。

なお、ESAとロスコスモスではエクソマーズミッション2度目の探査機打ち上げを2022年に計画しており、定点観測を担う地表プラットフォームの「カザチョク」と探査車(ローバー)の「ロザリンド・フランクリン」が2023年に火星へ着陸する予定です。

【▲火星を周回する「トレース・ガス・オービター(TGO)」を描いた想像図(Credit: ESA/ATG medialab)】

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Image Credit: ESA/Roscosmos/CaSSIS
Source: ESA
文/松村武宏

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